黒沢秀樹君と僕が定期的に開いてきた「uncle-jamのuki-uki☆music club」も回を重ねて第5回。
その1回目が2010年10月3日だから、そうかあれから1年が経ったのか ... 。

あっというまだったようにも思えるし、もう3年ぐらい前だったようにも感じる不思議な1年だった。
その複雑な気持ちは、たぶん、一歩一歩着実に歩んで来たuncle-jamへの確実な手応えというプラスのベクトルと、まったく予想もしていなかった震災と原発の事故から起こったさまざまな混乱や困惑というマイナスの空気感がないまぜになった1年だったからにちがいない。
初めての 2 daysということは、第1期の終わりか、それとも第2期の始まりなのか?
どちらにせよひとくぎり。僕たちにとって節目になる大切なライヴだったことはまちがいない。


初日の9日のリハーサル、uncle-jamと黒沢君の部分はスイスイと運んだが、僕の歌うコーナーにやたら時間がかかってしまった。東芝EMIイヤーズの5タイトルが発売される10月14日がせまってきているので、今回はその中から歌うつもりだったが、50曲以上の曲からなかなかしぼりきれずギリギリまで決められなかった。

前日に選曲した段階でやっとこさ10曲ほどに絞り込んだが、おやつはひとり500円までと決まっているように、黒沢君も僕も自分の歌は3曲までと決まっていた。ただ2日間なので6曲歌える。


そこで「This Love」や「Heart Of Garden」やらいろいろ歌ってみては、うーんいまいちこなれてないなとか、ちょっとこのパーティーには合わないかなど、四の五のやっているうちに、「もうお客さんが並ばれてまーす」の声。うーん、リハが丸聞こえか。しかたなしの半ば公開リハーサルとなってしまった。

やっとのこと「チェリーナイト」と「いちご色の窓」は決まったものの、3枠目が決まらず。もう1曲は、ステージのその時の気分、そのときのお客さんの雰囲気で決めることにした。



早々とソルドアウトしていただけに、会場するやいなやこの日の客足は早かった。またたくまに席が埋まっていく。うれしいじゃないか。ありがたいじゃないか。黒沢君も至極満足げな笑顔だ。

2~3名の予約されたお客さんがまだ到着なさっていないので10分ちょいおしのスタート。時間が来てuncle-jamがステージに向かうと拍手が起った。ありがとう。さあいよいよだ。


二人がギターを抱えチューニングを始めると、会場のどなたからかセーノの声が。
その声に続いて来た来た。キター。会場からわき上がる「出前まだですか?」の大合唱が ... 。

おーっ、なんてけなげなのだ。うーっ、なんてみなさんはよい子のパブロッカーなのだ ... 。
自分でまいた種だというのに、ちょっちジーンと来てしまった。
これは早くチューニングを済ませて「Chotto Matte Kudasai」を歌わなければと、チューニング・メーターとにらめっこ、1弦から順にポーンなんてやってたら、なんと会場中から「エーーーーーーーっ」のどよめきが .... 。

そ、そうか、ジーンと来た一瞬の戸惑いと、チューニングへの専念にかけていた、つかのまの時間を、みなさんは「無言」という冷たい僕からの回答ととってしまわれたのだ。イカンの涙である。

チューニングはちょっと後回し。あわてて約束どおりひとふし歌わせていただくことにした。



今日はゴールデンハーフのヴァージョンで。uncle-jamのライヴと何の関係もありませんが、僕は左から2番目のエバちゃんが好きでした。あしからず。


やんややんやの拍手が巻き起こった。いいねえ。いいけど、こんな変ったオープニングのライヴはまちがいなく他にないだろうと思う。これぞクラブ活動というか秘密クラブじみていてイイネ。。
なんのことやらちんぷんかんぷんの方はぜひ「サンデー銀次」2011年9月26日号 「Chotto Matte Kudasai」と、10月8日号「出前まだですか?」を参照してみてください。


01) Baby It's You (ビートルズのカバー)
02) Now And Always(ロックパイルのカバー)
03) I Don't Want To Spoil The Party(ビートルズのカバー)


最初のコーナーは、僕たちが大好きなそして影響を受けているアーティスト達のカバー曲から。
もりだくさんなuncle-jamのライヴの名刺がわりであり、大切な全体の雰囲気作りのコーナーでもある。MCでも語っていたように、いきなりガツンとピーク点から始まるスタンディングのライヴではない。僕たちとお客さんがゆったりと、そして確実に波長を合わせ足並みを揃え、手に手をとってポップ・ワールドに入っていくためには大切な儀式なのである。


04) 僕たちのキャンドル
05) にゃーお


このuncle-jamのライヴの一番の売り、最大の呼び物は、お客さんからお題をいただいて、その場で曲を作ってしまうコーナー。いただいたお題からひらめいたタイトルやメロディーや曲のストーリーをその場で披露して、お客さんにOKをいただいたらそれを持ち帰り。次回にはフル・サイズに完成させてくるというもの。いわば、曲が生まれるほんとに最初の瞬間を、僕たちuncle-jamとお客さんとで共有できるというミラクルな企画なのだ。けっしてお題をくださる方だけが参加しているわけではない。会場中の他のお客さんも、その曲の誕生の目撃者。だから当事者なのだ。

「僕たちのキャンドル」は第3回にいただいた「キャンドル」というお題から作った曲。最初にお題をいただいたときひらめいたのは、ウイングスの「JET」みたいな、コード・リフがテーマになったロックンロールということだった。





JET駅から出発したuncle-jam作曲列車は、紆余曲折ありながらも見事に終点のパブロック駅に到着した感がある。むしろ僕たちのロック・スピリットの心臓部といってもいい大切な曲に仕上がった。
そのときの「キャンドル」という何気ないお客さんのひとことがなければ存在しなかったし、今年というタイミングでなければ絶対に生まれなかった真摯なメッセージ・ソングでもある。僕たちに、こんな奇跡のようなロックチューンを授けてくれてありがとう。


そしていよいよ前回のお題「猫」に答えて、僕たちが作ってきたのが「にゃーお」。
前回ひらめいたのはこのタイトル。それにメロディーとハモをつけて、♪にゃ~~ああーおっ、♪にゃ~~ああーおっ、と、まるでジャズ・ブルースの二声のトランペットのように、二人でけだるく、グリス・アップとグリス・ダウンするというアイデアだった。



最初浮かんだのはこの曲に近いフィール。このけだるさだった。


曲の評判は上々。ほっ、今回もご注文に答えることができてよかったよかった。ほっとしたよ。
そしてさっそくこの日のお題をいただくことに。

10月9日にいただいたお題はまったく予想もしていなかった「帽子」。いや今思えばなるほどといえる。それは黒沢君がいつも帽子をかぶっていたからのことだからにちがいない。
とはいえ無数にある言葉から予想などは、およそサハラ砂漠で落としたコンタクトレンズを日を改めて探しに来るようなもの。いわれてみたからわかっただけのことである。

今回はなかなかひらめかなかった。ひらめいたことにはひらめいたのだが、「帽子ようもない」とか「帽子たらいいのか」とか「思わずハッとした」とか、思いもよらず、ダジャレモードが立ち上がってしまったのである。ピーーーンチ。

つばがあるのがハットで、つばのないのがキャップだとか、黒沢君と帽子にまつわる話をひとしきりして、時間を稼ぎながらそのモードを抜け出すのを待っていたら、突然「帽子屋さん」というアイデアが飛び出てきた。
なんでこれが出てきたのか、あとで考えるとわかったよ。なんと東芝EMIイヤーズのディレクションをしてくださった土橋一夫さんの新しいオフィスに行く時の目印として、彼が教えてくださったのが帽子屋さんだったのだ。その記憶が、僕の脳味噌のはしっこにひっかかっていたというわけなのだ。
いやー、もはやこれは茂木健一郎さんの世界だ。脳ってすごいのうって感心してみたりして ... 。


それが、瞬時にしてパリの帽子屋さんに発展し、ここいらでそろそろ1曲ぐらい割とベタなラブソングがほしいと思っていたので、君のためにパリで買ってきたおしゃれな帽子の歌はどうだろう、パリだからシャンソン。なんとなく浮かんだ詞に適当にメロをつけて歌ったら、これがお客さんにOKがいただけた。おおっ、なんとかすべりこみセーフ。しかもこのイメージ、見にきてくれた音楽仲間にも評判がよかったりして。

それにしてもこの時の銀次は、恐山のイタコ同然。「帽子」のイメージが憑依して無意識の状態をさまよいながら、うなされてうわごとを言っているような状態。さあ、あとはこいつを黒沢君に丸投げして ... 。



このとき脳裏に浮かんだ、帽子をかぶった女性はオードリー・ヘップバーンでした。ならば舞台はパリではなくてニューヨークだろうって?いやいやただのうわごとですから... 。


めでたくみなさんから「期待」と「あきれかえり」と「がんばってね」の入り交じった拍手をいただき、このコーナーの締めに、第2回にいただいた「パン」というお題で作った「かじりかけのトースト」を歌った。おかげさまでこの曲も評判がいいのだ。


06) かじりかけのトースト
07) 胸いっぱいの煙( Whole Lot A Haze) ( 胸いっぱいの愛を~紫の煙 メドレー)


前半戦の最後はインスト・コーナー。
アコギとは一見かけ離れたイメージの古典的ハードロックを、uncle-jam流にアレンジしてお聴かせするコーナである。「お題de曲作り」コーナーのおかげで曲も増えてきた。今回は2daysだからインストは1日1曲にして、日替わりにした。

9日は、レッド・ツェペリンの「胸いっぱいの愛を」( Whole Lot A Love )とジミヘンの「紫の煙」(Purle Haze)をメドレーにした、題して「胸いっぱいの煙」。
煙草をすわない人にはなんとも気持ちが悪くなりそうなタイトルではある。
「胸いっぱい ... 」を僕がリードを、「紫の ... 」のほうは黒沢君がリードを取り、最後は「胸いっぱい ... 」のテーマで終わるという構成だ。
お互いにテーマ以外はまったくのインプロヴィゼーション(即興演奏)だから、スリル満点。
さわやかなコーラスが売りのuncle-jamのライヴの中では唯一、ギタリストとしての硬派な部分を、二人とも思う存分発揮させるコーナーなのだ。

さすがに場外乱闘はなかったが、鬼気迫る演奏が刻々と展開され、はらはらわくわく、はらはらわくわくの連続で、この緊張感はなんともたまらない。そして最後は見事に着地成功。
ウルトラD 難度の技ありで、休憩に入ることとなった。


後半戦はお待ちかね、いよいよそれぞれのソロ・コーナーだ。