2月13日風知空知のuncle-jamのライヴ。1部と2部のあいだの休憩に入った。
お互いをねぎらいながら後半戦に備える。今回は前回よりもはるかに多くの音楽仲間が見に来てくれている。プロの目で見られているのだという緊張も感じたが、それよりも、忙しい中を駆けつけてきてくださったその気持ちが、なによりうれしくありがたく感じた。

ちょっと押していたので、休憩時間にマキを入れて後半戦をスタート。
これが後半戦のセットリストだ。


08) 大事なこと(黒沢秀樹ソロ)
09) 焼いた魚の晩ごはん(黒沢秀樹ソロ)
10) トワイライト・シンフォニー(伊藤銀次ソロ)
11) 誰のものでもないBABY(伊藤銀次ソロ)

12) Heroes(uncle-jamオリジナル)
13) I Will(uncle-jamオリジナル)
14) 夢の続き(uncle-jamオリジナル)
15) ウキウキmusic(uncle-jamオリジナル)

アンコール
16) I Don't Want To Spoil The Party (ビートルズのカバー)
17) Take a Message to Mary (エヴァリー・ブラザースのカバー)



いよいよソロ・コーナーだ。もちろんこの日はuncle-jam名義のライヴ。だけどやっぱり黒沢君のファンは黒沢君の曲も聞きたいだろうし、同じく僕のファンも僕の曲を楽しみに来られるだろう。特に黒沢君は最近ワンマン・ライヴをやっていないので、きっとファンのかたたちは彼の歌を心待ちにしているにちがいない。そんな思いからこのコーナーが生まれ、今回は2曲ずつ歌うことになった。

黒沢君の「大事なこと」が始まった。ラヴィン・スプーンフルやフィフス・アヴェニュー・バンドを思わせるソフトタッチのシャッフル。ハイトーンだがシルキーな黒沢君の声が心地よい。
風知空知には楽屋がなくて、4階のエレベーターの扉が開いてすぐの受付の、真後ろにあるテーブルとソファが楽屋代わり。お客さんと同じ空間で彼の歌を感じることができる。ソファに座って目を閉じて聞いていたらあまりの気持ちよさに、自分も関係のあるライヴだということを忘れそうになった。

続けて歌ったのは、彼が三崎のかもめ児童合唱団のために書いた「焼いた魚の晩ごはん」。
作者自身によるセルフカバーなわけだ。いつかこの曲のuncle-jamバージョンも試してみたい。
エンディングのコードがはらりとつま弾かれたので、僕もお客さんといっしょに拍手をしながら、客席のあいだを歩いて再びステージへ。黒沢君とタッチ交代だ。

彼が比較的しっとりとあったかい構成で来たということは、僕にウキウキ方面はまかせたよという、言わずもがなのサインなのだ。ようしわかった。ウキウキならまかせてくれ。

アコギは僕の小さなオーケストラ、そして僕にとってのドラムやパーカッションはお客さんの手拍子。
2年前にアコギだけで全国35カ所をまわった I Stand Aloneツアーのときのように、お客さんに「僕のドラムになってくれますか?」とお願いすると、「いいとも!」の拍手。
そして会場中のお客さんが、いっしょにパンパンパンパンというクラッピングを。
いいね、四つ打ちのモータウン・ビートだ。
僕は「トワイライト・シンフォニー」のイントロを弾き出した。





この日のソロ・コーナーで「トワイライト・シンフォニー」を歌おうと思った理由のひとつに、イラストレーター&漫画家の本秀康さんが見に来てくださるからということもあった。
本さんと松尾清憲君とのコラボ「チョコレート・ラブ」について対談したときに、「松尾さんに愛しのロージーみたいな曲をまた歌ってほしくて主人公を中学生にしました。」という本さんのコメントは実に僕の心を揺さぶる一言だった。その言葉が、長年の迷いの森から僕を出口へ導いてくれたのだ。

年をとったからといって、必ず私小説のように、年をとった自分のことしか歌ってはいけないわけではないはずだ。役者がいろんな人間に扮するように、ストーリー・テラーとしていろんな歌を自由に作り、その語り部として歌うことこそ、尊敬するロイ・オービソンへの道ではないのか?
「オレの言いたいことを聞いてくれ」というのもあるだろうが、誰かが聞きたいと思う歌を、その人の代わりに作ってあげること。それも僕たちの仕事なのではないのか。まだ迷いの森を完全に抜け出したわけではないが、どの方角に向いて歩いていけばいいのかが見えたような気がしたのだ。

だがそのためには、自分の中にあるロマンが、シビアな現実に押されて小さくならないように日々努力をしなければならない。いつも自分をロマンとユーモアで満パンにしておかなければ... 。
本さんの一言がそのことに気づかせてくれたのである。uncle-jamのライヴの話の時に何だが、やっとまた、銀次ソロの曲作りを本気でしたくなってきた。そのお礼の意味をこめて、「トワイライト・シンフォニー」を歌いたかったのだ。

もう1曲は「誰のものでもないBABY」。冬になると歌いたくなる。
ポール・サイモンの「母と子の絆」みたいな曲が作りたかったという話をして歌い始めた。
露骨にウキウキの曲ではないが、康珍化さんの詞にウキウキになるためには欠かせない癒しがある。

拍手の中、黒沢君が再びステージに戻りuncle-jamアゲイン。ここからはオリジナルのオンパレード。
ブルージーなイントロを黒沢君が弾きはじめ、僕はお客さんを手拍子であおる。
uncle-jamで一番ロックンロールな「Heroes」の始まりだ。この曲はエヴァリーやビートルズの7th系のナンバーみたいだ。
間奏は僕のブルースハープ。初めて吹いたのは18歳くらいのときで、ジョン・メイオールのAnother Man Done GoneやヤードバーズのI'm A Manとか大得意だった。
なんでもかじっておくと後でおもしろいことになる。昔とった杵柄(きねづか)なのだ。





そのまま「I Will」に突入。僕たちが最初に作った曲。そういう意味では、僕らのイズムが一番におう作品だ。本秀康さんやそのお友達の次郎丸さん、成瀬英樹君など、すでにこの曲のファンは多い。なんでも音楽集団のuncle-jamだから、もちろんいろんな曲からのインスパイアで満たされてる。

ノリのいい2曲が続いた後は、MCをはさんで静かなバラード「夢の続き」。
エヴァリーの「All I have To Do Is Dream」を和風テイストにしたような曲だ。
まったく偶然だけど、イントロは時計が時を刻んでいるようで、どこかuncle-jamの「大きなのっぽの古時計」的な曲である。歌っていてもどこか懐かしい気持ちがこみ上げてきて切なくなる。

「もう最後の曲になってしまいました。」

えーという声が会場から起こった。ほんとはもっと演っていたいけれど、このuki-uki☆music clubはトーク&ライヴのパーティーなので、曲数は多くないが、あっというまにけっこうな時間になってしまった。
本編最後はもちろん「ウキウキmusic」。「DOWN TOWN」「ウキウキWATCHING」と並んで、"ウキウキ3部作"にしましょうよという、黒沢君のナイスなアイデアで生まれた曲。
さあみんな、uncle-jamのウキウキ光線をたっぷりと浴びるがよいー。

熱い拍手でアンコールへ。その1曲目はビートルズの「I Don't Want To Spoil The Party」。邦題が「パーティーはそのままに」だから、アンコールにはぴったりだ。
この曲は、ファンのお一人が黒沢君のブログにリクエストしてくれたもの。
黒沢君も僕も、ビートルズのアルバムの「For Sale」が大好き。今までこのアルバムが好きだという人には初めて出会った。おまけに僕が初めて買ったアナログ・アルバムがこれ。中学のとき、すり切れるほど聞いて毎日家で歌っていたが、人前でこの曲を歌うのは生まれてはじめてのこと。「For Sale」に入っているこの曲は、僕にとってとにかく初めてづくしの曲なのだ。





リハのときから感じているこのハモリの快感は何なんだろう?どこかハモリにマジックありだ。
リクエストがなかったらこの快感に出会えなかったよ。リクエストどうもありがとう。
楽しい時間はあっというまに過ぎて、ほんとうに最後の曲。
次回の風知空知、uki-uki☆music club vol.3が、5月8日に決定したことを告知して、最後は「Take A Message To Mary」で静かにショーの幕がおりた。





お忙しい中、風知空知に足を運んでくださったみなさん、そして風知空知のすべてのスタッフのみなさん、突然の依頼にもかかわらず休憩のときにDJをやってくれたmoriheyちゅあん、どうもありがとう。
とても楽しいスペシャルな夜になりました。ひとえに皆さんのお蔭です。

また次回5月8日もどうかよろしくお願いします。