ギター弾き語りのCD、I Stand Aloneのvol.1、vol.2と続けてきて、自分の曲のことを語るのがおもしろくなってきた。その流れで今日も「I Stand Alone vol.3」のセルフ・レヴュー。
みなさんにも楽んでいただけてれば幸いである。


$伊藤銀次 オフィシャルブログ 「SUNDAY GINJI」 Powered by Ameba


白地な感じから、ジャケが黒地になりシックになった。今回は森林公園近くのオアシス・サウンドというスタジオでの録音。ジャケのシックぶりとは逆に、多くのライブをこなしてきたせいか、声は明るく抜けがよくなっている。録音場所は変われど歌とギターの同録の精神は変っていない。



01) トワイライト・シンフォニー

1歳年上のビリー・ジョエルが83年にフォー・シーズンズへのオマージュたっぷりな「Uptown Girl」を発表したことは、同世代としてはとてもうれしい出来事だった。





それに刺激され僕もフォー・シーズンズみたいな曲が作りたくなった。それでこの曲ができた。

フォー・シーズンズというと「Sherry」とか「Rag Doll」を思い浮かべる人が多いが、僕にとっては、65年からの「Let's Hang On」「Opus 17」「Working My Way Back To You」あたりがど真ん中。
この頃ビートルズの「Yesterday」などクラシック風味のポップス、ロックが大流行り。トイズの「ラバーズ・コンチェルト」、シュプリームスの「I Hear A Symphony」とかの空気感を、タイトルに匂わせたかった。





イントロのモータウンなベースラインをなるべく曲中でも残しながら歌いたかったが、キーがEなので普通にやるとロックンロールっぽ過ぎる。しかもバロック的なコード進行なのでコードがE-BonD#-D6-AonC#というふうになりとても弾きづらい。
試しにカポタストを2フレットにつけてDのフォームで弾いたら、すべての構成が問題なく弾けることがわかった。間奏のストリングスの部分までが、オリジナルに近い感じになるとは思ってもみなかった。
よくわからなくても若いときになんでもかじっておくといい。後々役立つことがあるものだ。
メロディー・ラインを和音の上にのせる弾き方は、昔ジョー・パスのDjangoなどのジャズ・バラードを弾きかじって覚えたものだ。





「トワイライト・シンフォニー」は今ではコンサートに欠かせない。最初のほうで演ると僕もお客さんも景気がつく。曲の終わりで、オリジナルのように半音転調すると弾けなくなってしまうので、最後までEのキーのままで歌っていることに、皆さんはお気づきだったろうか?。



02) 恋のリーズン

ビートルズ・オマージュの1曲。82年頃僕はマージービート通みたいな定評をいただいていたが、へそ曲がりなので、それだけじゃないんだよ僕はと、わざと露骨なマージーやビートルズっぽい曲をさけるきらいがあった。とはいえこの曲や「泣きやまないでLOVE AGAIN」などそれとわかる作品も何曲かはある。
ビートルズやマージー・ビートにはディミニッシュ・コードがよく出てくるので、それならイントロはいっそのことディミニッシュの連続攻撃というアイデアがいかにも極端で僕らしい。
どこかアメリカ西海岸のビートルズ好きミュージシャンの香りがするのは、売野雅勇さんの詩のせいもあるかもしれない。







03) 彼女のミステイク

この曲のキモはAからDmへのコードの動きにある。84年にこの曲を作った時はDX7を買ったばかりで、そのブラスの音で。ヴァン・ヘイレンのJumpのような曲をと作り始めたら、ちょっと切ない感じになった。それはたぶんA-Dmの進行のせいだろう。それがどこから来たものかわからず四半世紀が過ぎた。
2010年に武蔵小山アゲインで「話し出したら止まらナイト」というトークイベントを始めた。「銀流フォークロック伝」と題してフォークロック特集をやることに決め下調べをしていたら、この曲の源流が見つかった。それはジョーン・バエズの「There But For Fotune」だった。



この曲は半音高いので、Bb - Ebmのコード進行。


中学の時のガールフレンドがジュリー・アンドリュースとジョーン・バエズの大ファンだったので、バエズのレコードを借りてよく聞いた。当時日本では「ドナドナ」が人気だったが、僕はこっちのほうが好きだった。今思うとこのコード進行がいつのまにか僕の中にしみ込んでいたのだろう。
ポール・マッカートニーはバエズのAll My Trialsを聞いて、そのD - Amのコード進行をI'll Get Youに取り入れたという。



04) ビート・シティー

まさかこのこの曲を弾き語りでやることになるとは思っても見なかった。
コンサートの終盤はやっぱりみんなとハイになりたいが、いかんせんアコギ1本、フル装備の迫力は出せない。そんな煮詰まりの中で思い出したのはウッドストックの時のリッチー・ヘイブンスだった。





そうか、リズム隊がいなくても、お客さんの手拍子が僕のドラムやパーカッション。僕とお客さんとのセッションと考えてやればいいのかと気づいて少し目の前が明るくなった。
後日わかったことだが、このヘイヴンスのFreedomは当日の即興演奏。諸事情でリッチーもう少しやってくれと主催者にいわれてのことだったらしい。なんの準備もなくてもこの演奏。すごいね、最後はやっぱり人間力だ。
断っておくがこのビート・シティーは同時録音である。半年ほどのライヴ現場での修行がなかったら、こんな16ビートのバッキングを弾きながら歌うなんて芸当はできなかった。迷ったり悩んだりしてばかりいるくらいなら、黙って練習をするのがいい。王道はないのだ。
ライヴ会場では手振りを交えての、♪You Got the beat, we got the beat のお客さんとのやりとりが楽しかった。


05) 愛をあきらめないで

なんのCMか忘れたが、大沢誉志幸君の「そして僕は途方に暮れる」みたいな曲をという依頼があったので作った曲。結局採用されずボツになり、「夜を駆け抜けて」のカップリングになった。プロコルハルムの「青い影」みたいにベースが下降してくるバロック風。
くれぐれも「そして僕は途方に暮れる」の模倣に暮れないようにと、元曲のキモになる道筋を通らないようにと迂回しながら作っていったら、知らないうちに「ネヴァーエンディング・ストーリー」みたいな曲になっていた。たぶんアレンジのせいだと思う。イントロがクラシック・ギターみたいなフレーズで好きな雰囲気だ。



現在、vol.1とvol.2はアマゾンでも購入できるが、vol.3は、silvertoneのホームページと、武蔵小山のペットサウンズ・レコードでしか買えない。春にはアマゾンやバウンディでも購入できるようになるそうだが、もしお持ちじゃなくて今すぐ聞きたいかたは,下記までアクセスしてみてください。

シルバトーン・ストア  : http://www.silvertone.jp/store.php


  PET SOUNDS RECORD : http://www.petsounds.co.jp/


横浜サムズアップでのライヴ終了後のサイン会。一人の青年が
「銀次さん、オレ湘南でレコード屋始めるんだ。ぜひ遊びにきてください。」

この音楽不況の時代に、アナログ盤のお店をやろうという。大丈夫なのか?でも何事も恐れずやりたいことをやってみることが原点だ。がんばるんだよ。落ち着いたら、「サンデー銀次」にお店の場所をメールしてきてね。