1月9日の「しゃべり出したら止まらナイト」が近づいてきた。前回の10月17日のあと、まとめ直したものをもう一度、年末あたりから少しずつチェックを始めたら、また新たな事実がみつかり、まとまりがつかなくなっている。真実というものは円周率のようなもので、どこで切るかが問題だ。これ以上広げたり深くするのやめてまとめなくちゃ。一番大事なのは楽しい集いにすることだから ... 。

そんななか、小松久さんからうれしいプレゼントが届いていた。1954年ジョン・ウェイン主演の映画「紅の翼」のDVDだ。そういえば以前武蔵小山Againでの小松さんのライヴのときに、この映画のことを話してくださっていた。僕はすっかり忘れていたのだがちゃんとおぼえていて送ってくださったのだ。ありがとうございます。





親父がジョン・ウェインの大ファンで、連れられてってよく見たが、この映画を見るのは初めて。だが主題歌はよく知っている。高校時代にシャドウズ・コピー・バンドをやっていて、彼らのヴァージョンの「紅の翼」をよく演奏していたからだ。

ギターを弾きながら歌うのが好きだったから、ヴェンチャーズとかのインストにはあまり興味がなかったが、シャドウズは特別だった。映画音楽やスタンダードを、おしゃれなアレンジで聞かせるアンサンブルがかっこ良くてとても好きだった。
リード・ギターよりもリズム・ギターに惹かれていたので、ハンク・マーヴィンのソロよりも、ブルース・ウェルクのコード・プレイをよくコピーした。そのシャドウズのレパートリーの中で一番好きだったのが「紅の翼」だったのだ。

初めて聞いたとき、この世にこんなきれいな曲があるのかと思った。ライナー・ノーツを見ると同名の映画のメインテーマで、作曲者はディミトリー・ティオムキンとあった。
相模大野で杉君と「アコギでいこう」というイベントをやったときに演奏したので、そのときに聞いた人もいるとか思う。YouTubeで探したけれど、残念ながらシャドウズ本人達の映像が見つからなかった。






代わりにさんざん演奏したポップなこの曲を。シャドウズは捨て曲なしなのでぜひベスト盤を一家に一枚。
CDはほとんどイギリス盤で持ってたけど、「サンダーバードのテーマ」と「ボンベイ・ダック」が入っていなかったので、かなり曲がダブってしまうが、この2曲がほしくてこのベストを買ってしまった。そのくらい(?)おすすめです。
ちなみに「ボンベイ・ダック」の作者はジャズ評論家の本多俊夫さん。「マルサの女」の音楽でおなじみのジャズ・ミュージシャン、本多俊之さんのお父さんです。


ゴールデン・グレイツ/シャドウズ

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昨年のBOXのライヴの打ち上げで、ひさびさにギターの田上君と盛り上がったときに、ちょうどシャドウズの話をしたばかりだった。最後は僕がブルース・ウエルク(リズム・ギター)やるから、田上君がハンク・マーヴィン(リード・ギター)で、シャドウズ演ろうぜといいながら別れた。

とにかく田上君、プレイがバリバリに健在である。ますます演奏が冴えていて、しかも楽しそうに弾いているのがいい。田上君を初めて見たのは、1981年葉山マリーナでの須藤薫さんのステージだった。山吹色のレスポールが実にいい音していて、プレイに釘付けになっちゃったなぁ。
そのときのぼくは、佐野元春 with ザ・ハートランドのメンバーとして同じ海辺のイベントに参加していた。まだデビューまもない頃のその日の佐野君、思い出深いエピソードがある。

「泳ぎたい人は泳いでもいいんだぜ。」とにこやかにオーディエンスに語りかけてから、おもむろにシャウト気味に1、2、3、4、とカウントを始めたのだ。
おかしいな、次の曲はBad Girl のはずなのになぜカウントが . . . 。他のメンバーも変だぞと思ったその刹那、佐野君はエレピを一人で弾き始めた。よかった、Bad Girlのイントロだ。
Bad Girlは佐野君のピアノだけのイントロで始まる曲なのに、なんとカウントして弾き始めたのだ。もちろん葉山海岸いっぱいのお客さん達の頭上に、多くのクエスチョンマークが点滅していたのはいうまでもない。あのMC、そしてあのカウントはいったい .... ?
フィーリングやスピリットがそのまま服を着て歩いているような人だと思った。こんなスピリチャルな人にあったのは初めてだった。何人かのミュージシャンは、まだ売れる前の待遇の悪さと、彼の言っていることや考え方が理解できなくて、メンバーを辞めていった。ぼくは逆にそういうところが好きだった。彼といっしょに音楽を続けているときっととんでもなく面白いドラマに出会えるようなそんな予感がしていた。まだメンバーになってまのない頃の話だ。





原宿ルイードの頃の話だ。ある日「グッド・バイブレーション」の彼のカウントがとんでもなく速く出た。瞬時にやばいと思ったが、曲は始まってしまった。ところが始まってみるとドラムスのシータカも、ベースの小野田も、キーボードの阿部ちゃんも、サックスのダディも佐野君のカウントに惑わされることなく、正しくその曲のテンポで演奏しているではないか。シータカのほうを見ると「なにかありました?」ってな涼しい顔で笑っていた。
ハートランドはほんとに素晴らしいバンドなのだとわかった瞬間だった。

そんな佐野君もデビュー30周年。いまや日本を代表するアーティスト。だけどいくつになってもフィーリングやスピリットが服を着ている人であり続けてほしいなと思う。3月に大阪城ホールでひさしぶりにいっしょのステージに立てる。どんなライヴになるのか今から楽しみでわくわくしている。

BOXの打ち上げ、宴もたけなわの頃、田上君が予想もつかない話題をもちだした。
ハトヤのCMソング、♪伊東にいくならハトヤ~の次に入っている、ピューンというフレーズ。あれはすごい、ひょっとしたら当時のトップクラスのスタジオミュージシャンが弾いているのではというのだ。

訳がわからないが嫌いな話題ではない。名前を忘れたが、音楽映画「永遠のモータウン」の中で、テンプテーションズのMY Girlのイントロを弾いた人の顔を思い出した。蕎麦屋とかのテレビでハトヤのCMが流れると、そのピューンというギターを弾いた人が、隣で天丼とか食べてるお客さんに、あれは俺が弾いてんだよと言いたくなっちゃうのかな。

田上君、実はあやまらなくてはならない。あのときハトヤのCMソングの作詞は五木寛之さんだと言ったとが、僕の記憶ちがいで野坂昭如さんだった。おもちゃのチャチャチャもそうらしいよ。お詫びして訂正させてください。

「銀流フォークロック伝」の構成作りに煮詰まって、ちょっとだけ「紅の翼」を見てみた。戦争映画かと思っていたがどうもそうではないらしい。おっと字幕がない。そういえば小松さん、日本語版が出てないとおっしゃっていた。僕の英語力で大丈夫かどうか ...。どちらにせよ、とにかく9日のイベントが終わらないことにははじまらない。