1967年に初めてビートルズの「When I'm Sixty Four」を聞いたとき、自分が64歳になるなんて、はるか遠い先のことだと思っていた。夢のような月日はあっというまに過ぎ去り、2010年12月24日、僕は「When I'm Sixty Four」まであと4つという年齢になった。





そして黒沢秀樹君の呼びかけに答え、素晴らしい音楽仲間達がその日を祝ってくれることになった。
まさかこんな日を迎えることができるとは、初めてギターを手にした15歳の僕には想像すらもできなかった。なんて幸せな60歳。みなさんありがとう。今まで経験したことのない、人生でたった一度のSpecial Day、最高の日でした。

12月24日渋谷gee-ge、僕の60歳の誕生パーティーは、黒沢秀樹君の歌、「Happy Birthday& Merry X'mas」から華やかに始まった。初めて聞く歌。あとで彼にたずねたら、2年か3年前に僕の誕生日のために作ってくれた曲らしい。えーっ、そんな話、初耳だ。しかも少しリファインしての披露だという。いつのまに..。こっそりとそんなものを用意してくれてたんだね。ありがとう。この日の幹事役らしいMCでにこやかに開会宣言。続いてオールディーズのSixteen CandlesのSixteenをSixtyに替えた、このライヴのタイトルにもなっている、「Sixty Candles」。なめらかにパーティーは滑り出した。

楽屋から黒沢君に拍手。チケットはソルド・アウトらしく、会場を見てみると立ち見のお客さんまで出ている。僕は自分の出番までは客席の真後ろにある楽屋にいたが、はたしてここにいていいのか、客席でみんなの演奏を正面から受け止めるべきではないか、いややっぱり登場まで楽屋で辛抱しているべきかと心が千々に揺れていた。だけどやっぱり我慢できず、ときどき楽屋を抜け出しお客さんたちの後部で拍手をしたり、「XX君、ありがとう」と感謝の声をステージに返したりしていた。

二番手は久保田洋司君。まずは戸田吉則君のベースとともに「バラード」という曲から。uncle-jamを始めてから、急速に近い関係になった三崎系ミュージシャンの一人だ。巧みなMCで笑いをとりながら観客をひとつにしていくのはさすがだ。しまった、こんなことなら、久保田君と何かビートルズの曲でもいっしょにやればよかったと後悔する。でもそうすると他のミュージシャンたちとも平等に1曲ずつセッションしなきゃならないから、朝までかかっても終わらないだろう。やっぱり来年は三崎音楽祭を開くしかない。その日までお楽しみとしてとっておこう。

この日集まってくれた中では一番古くからの音楽仲間、村松邦男君が登場。最近は安部Oji君とR.O.M.Aというユニットでライヴを精力的に展開している。今回はふらいんぐしゅがあという女性キーボード奏者を連れてのソロ参加。リズムボックスを効果的に使った「Boo Do Child」はどこか「ホール&オーツ」のI Can Go For Thatみたい。R.O.M.A.のレパートリーから2曲歌ってくれたが、ソロの村松君はグッとソウルっぽい。歌もギターもこんなに渋かったっけ?カーティス・メイフィールドをホワイト・ソウルにしたような感じ。そのまま大瀧さんのカバーの「指切り」までいい流れだった。ソロのライヴ活動ももっとやってほしいなと強く思ってしまった。

ホーボー・キング・バンドのベーシストでもある井上富雄君は、今回ヴォーカリストとして参加してくれ、ギターの弾き語りで、オリジナル2曲と、イアン・ゴムとボビー・チャールスのカバーを披露してくれた。僕は個人的にボビー・チャールスの「Small Town Talk」が好きな曲だったから、さすがココナツ・バンクのメンバー、この選曲はうれしいプレゼントだった。



今日はエイモス・ギャレットのヴァージョンで。


終了後感謝の握手を求めると「すごい緊張しましたよ。」の一言。そんな様子はみじんも感じさせない温かいステージだったよ。

富雄君が「柔」だとすると、続いて登場した長田進君は「剛」だ。ドスの効いた低音がぶっといギターと共にgee-geを揺さぶった。今まで佐野君のステージやレコーディングでいっしょになったけれど、あまり会話を交わすことがなかったが、この日は本番前や本番中の出番待ちの彼と、いっぱい話ができてよかった。
最近の日本はハイトーン・ヴォーカルがもっぱら人気。あまりにも彼の低音ヴォイスが素晴らしかったので、昔みたいに低い声のシンガーがもっともてはやされてもいいのにね、長田君がんばってよと励ましたら、「そうだよね。いたよね。バーブ佐竹とか...」。あんな渋いルーツ・ミュージックを聞かせる人の口からバーブ佐竹の名前がでるとは。妙に親近感をおぼえてしまった。

佐藤奈々子さんは、お客さんとしてお誘いしたのに「私もおめでとうの歌を歌っていいですか?」と、自ら歌志願。おまけにこの日のために詩を書いて来てくださり、長田君のコーナーの3曲目で、ドラムスの古田たかし君も参加して、この詞を即興で歌ってくれた。感無量である。
geege-geはいきなりNanako world。奈々子さんのまわりにはいつも和らいだ空気が漂う。それも彼女の大きな魅力なのだ。
観客のみなさんには残念ながらお見せできなかったが、この日杉君や松尾君に会うのがひさしぶりだったようで、「懐かしーわねー」といいながら、まるで愛玩動物を愛でるように、松尾君の髪の毛をなでなでする奈々子さんに人柄を感じた。それをおとなしくコッカー・スパニエルのように気持ち良さげになでられるままになっている松尾君にも人柄を感じた。二人にかぎらず、この夜はまさに「人柄ナイト」であった。

人柄が高い音楽性をしょってきたと言っても過言ではない、杉真理君と松尾清憲君の
BOXの二人が登場すると、さらに場は華やいだ。翌日にプレジャープレジャーでのライヴを控えているというのに、快く参加を決めてくれた。BOXのオリジナルに加えて、ビートルズの「I'll Be Back」の選曲。こころなしかこの曲のときの松尾君はいつもよりぐっとジョン度が高いような気がして、その気概が、ビートル魂がしっかり伝わってきた。

このあたりになるともう、僕はこんなにしてもらっちゃって明日からどうやって生きていけばいいんだろうとうれしいとまどいに狩られ、ソワソワしてし始めていた。泣いているひまなんてない。かたじけない、ありがたい、もうしわけない。すまん、すまんと、鏡をみたらいつのまにか椎名誠さんに変身していた。なぜか幸せ過ぎると、いても立ってもいられなくなるのだ。

そんなところに今度は予期せぬ出来事が...。なんと杉君と黒沢君が僕に内緒でこの日のために曲を作って来てくれたというではないか。知らなかったぞ。そんな素敵なプレゼントが隠してあったとは。
ここから先は、次回のココロなのだ。