いよいよあと6日でバースデイ・ライヴ。昨年までなら今頃、熱心な銀次ファンによる、「お誕生日食事会&弾き語りライヴ」が開かれていた。そのファンクラブ"の集いも、10月に繰り上げて最後の回とし、1994年から続けてきたボランティアな会も今年で幕をおろした。詳しくは10月17日号「秋はどこへ行ったの?」でご覧になっていただきたい。

16年間ずっと、ファンの人たちは12月になると、めいめい僕へのバースデー・プレゼントを持って集まってくださり、僕はそれのお返しのつもりで、アコギ1本で歌を披露するようになった。それが I Stand Alone というライヴ・スタイルへと進化・発展していくとは思ってもみなかった。
毎年趣向を凝らしたプレゼントをいただいていたが、なにせ毎年のこと、そのうちプレゼントのほとんどが紅茶とお酒という、僕の二大フェイヴァリット定番におちついてきた。

ありがたいことに、ファンのかたたちは、僕が無類の紅茶好きなこととか、そして大の呑ん兵衛だということをよくご存知で、どちらもいろんな銘柄のものを持って来てくださった。ありがたいことである。
昨年、僕はお酒を飲むのを止めてしまったのだが、そのことをご存知なかったかた達が、今年もワインや日本酒を持ってきてくださった。
「知らなくて持ってきてしまいました...。」と恐縮なさっていたが、とんでもない。いただいたのに文句などいえるわけがない。大丈夫。あのお酒達は僕の代わりに、相棒の黒沢秀樹君がおいしく味わってくれたようで... 。そして、いただいた紅茶は、濃いめに出した温かいミルクティーでおいしくいただきました。
今年もたくさんのプレゼントを頂きました。お礼が遅くなったけれどどうもありがとう。

いただいたプレゼントの中に、いつか見よう見ようと思いつつ、なんとなく諸事に追われ、そのままオキッパになっていた本があった。「和田誠の仕事」という本である。
つい2、3日前のこと、本やCDの整理をしていたらその表紙が目に入り、そういえばファンクラブの集いでいただいたのだと、ぺらぺらとめくってはながめていたら見入ってしまい、すっかりなごんでしまった。
どこの出版社から出てるんだろうと最後のページを見てみると、「編集・発行 たばこと塩の博物館」とある。おや?これは市販されてないってこと?トロいことに、これがどこでも買えるものではないことにやっと気づいたのである。そうか、個展まで出かけてってわざわざ買って来てくださったのか。たぶん銀次さんなら気にいってくれるだろうと... 。なんてありがたいこと。ばっちり気に入っちゃいましたよ。


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見えますか?あいかわらずのピンボケでスミマセン。


今年2010年は、煙草のハイライトが発売されて50年になるという。そのハイライトのパッケージ・デザインを手がけられたのが、なんと和田誠さんなのだ。この本というか図録1冊で、和田さんが手がけられた、週刊文春の表紙、ポスター、マークロゴ、LPジャケット、装丁など、文字通り和田誠さんのお仕事が一望でのぞめる。
こうやって間近で一枚一枚じっくり見てみると、しっかりとしたプロの技術とアイデアに裏打ちされていながら、僕にも描けそうな気がしてくるカジュアル感がすばらしい。逆立ちしても描けるわけはないが...。
その暖かみのある色使いとさりげない佇まい。何度見ても飽きない。小さい頃、ながめているだけで幸せな気持ちになるので、何度も何度もながめてしまうお気に入りの絵本のようだ。
どこかで目に入っていたものが実は和田さんの作品だったことを、あらためて確認することしきり。
さらに本の装丁特集のページで、懐かしいカート・ヴォネガットJr. の「デッドアイ・ディック」の表紙と再会した。


デッドアイ・ディック (1984年) (Hayakawa novels)/カート・ヴォネガット

¥1
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こんな名作が1円?アンビリーバブルである。


そうだった。ヴォネガットの表紙、早川書房から出てたものは、ほとんど和田さんだったっけ。
80年代、ヴォネガットにハマったなあ。和訳されたものはすべて読んだ。
かなり前のことなので、それぞれのお話がどんなだったかはもうよく覚えてないが、極端に楽観的でもなくまた悲観的でもない、ヴォネガットの考え方みたいなものが浸透してきて、すっかり僕のどこかに住んでいる気がする。僕の「ビート・シティー」は「スラップスティック」の読後にできたもの。キルゴア・トラウトという登場人物が実にユニークだったなー。こうやってヴォネガットの本を全部引っぱり出して和田さんの装丁をみていると、また1冊目の「プレイヤー・ピアノ」から全部読み直してみたくなってきた。


スラップスティック―または、もう孤独じゃない (ハヤカワ文庫 SF 528)/カート・ヴォネガット

¥672
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スローターハウス5 (ハヤカワ文庫 SF 302)/カート・ヴォネガット・ジュニア

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佐野元春ウィズ・ザハートランドには歴代3人のギタリストが存在した。
初代が僕で、2代目は元TENSAWの横内"タケ"健了、そして、24日に参加をしてくれる長田進君が3代目のギタリストだ。
3月に行われた、恵比寿リキッド・ルームでの佐野元春30周年アニバーサリー前夜祭「アンジェリーナの日」のライブで、ひさしぶりに長田君のプレイを見た。その日はザ・ホーボー・キング・バンドを従えての演奏と聞いていたのだが、始まってみると目が悪い僕には、どうもギタリストが佐橋くんっぽく見えない。まさか長田君だとは思ってなかったから新しいギタリストが入ったのかと一瞬思ったが、ソロを弾き出したとたんにすぐわかった。暴れん坊ここにありである。聞けばすぐわかる。ゴツゴツとした荒くれなフレーズがしなやかなグルーブで僕たちに絡み付いてくる。長田君にまちがいない。
ギターを弾いている姿を見ているだけだと、ちょっぴり強面だが、話してみると心やさしきナイスガイだ。
1993年、当時のキューン・ソニー・レコードから僕がリリースしたアルバム「LOVE PARADE」の中の「Hello Again」「Flowers In The Rain」を佐野君にプロデュースしてもらった。そのとき長田君がギターを弾いてくれた。同時リリースのシングル、「涙の理由を」のカップリング「Baby Blue (Moto's '93 Version)」での、長田君のワウワウを使ったねばっこいギター・プレイがいまも強く印象に残っている。

黒沢君の呼びかけで、なんと12月24日の「Sixty Candles」に参加してくれるそうだ。ありがとう。
1994年に佐野君が、横浜スタジアムライブ「Land Ho!」に僕をゲストで呼んでくれた時以来の、ライヴでの共演になる。
長田君が今年リリースした、プロデビュー30年目にして初のソロ『MALPASO』の中から、どれを歌ってくれるのだろうか? 楽しみだ。



うーん、かっこいい。だからもうちょっと聞かせてほしかった ... 。


残念ながら「特別展・和田誠の仕事」はとっくに終わっていた。図録をいただいたときに気づいていれば見に行けたのに。あとの祭りである。それでもこのたやすく手には入らない図録を持っているだけでも幸せと思わねば。
あらためて、なごみの本をありがとう。そしてファンクラブのみなさん、16年間ありがとうございました。よかったら12月24日、渋谷gee-geに遊びにきてくださいね。