「サンデー銀次」始まって以来の連続レポ、怒濤の3日間の2日目は国立・地球屋でのライブ。成瀬英樹主宰の「国立ライドオン」について書こうと思う。

このイベントを企画した成瀬英樹君は、昔フォートリップスというグループをやっていた。90年代中頃、彼らのデモ・カセット・テープを、当時の彼らのマネージャーだった人からプレゼンされ、まず「リトル・ヒットラー」という曲のタイトルに、なに?ニック・ロウ好きかい?と関心が沸いて聞いてみたところ、たちまちその曲のセンスに惹きつけられ、彼らのホームグラウンドの神戸チキンジョージまでライブを見にでかけた。それからしばらく、レコード会社の契約獲得に向けて彼らと作業をしたが、僕の力不足で、デビューまでこぎつけることが残念ながらできなかった。
その後1997年にWonderというシングルで、タイアップもついてのデビューを別ルートで、フォートリップスが飾ったことを知ったときはちょっとくやしかったけれど、がんばれよと、心の中でエールを送ったものである。
遅れて発売されたアルバムにおさめられた曲の何曲かは、ぼくにとってもなじみのあるタイトルだったので、少し心残りを感じたことも、昨日のことのように覚えている。

それから時が過ぎ、なんと今年になって僕のライブに、彼のほうからわざわざ訪ねてきてくれたのだ。彼はいまや売れっ子のソングライターとして活躍中で、僕の目に狂いがなかったことがわかってうれしかった。何度か僕のライブに来てくれたことがきっかけで、今回のライブが実現することになった。
ライブ・タイトルを成瀬君に相談されたとき「たとえば、国立ライドオンとかさあ ... 。」って何気なく口にしたのが、なんとそのまま決まってしまったのには驚いた。

19日15:00に成瀬君と谷保駅で待ち合わせてリハスタへ。せっかくだから今日のアンコールに、出演者のソウルジャンクションズ、成瀬君、僕で、ココナツ・バンクの「東京マルディグラ」を演ろうということになり、そのリハーサルだ。
ソウルジャンクションズと出会ったのも成瀬君のおかげ。出会いについては「サンデー銀次」2010年9月18日号「サムズの銀次・ヨコハマ・ファイナル」を読んでほしい。
ジャンクションズ、いい感じでサウンドを固めててくれたので、リハはスムーズに進んだ。まじかで聞く彼らの演奏、思ったよりしっかりしていてうれしい驚きだった。
なんとベースのタカナユウヤ君のストラップが、僕とまったく同じ紺地に星柄。数あるストラップの中で、この星柄を使っているミュージシャンには会ったことがなかった。きっとユウヤ君と僕はどこか感じ方が似ているんじゃないだろうか?


LIVE LINE LS2000RS ギターストラップ ライブライン 星柄 ギターストラップ【...

¥2,000
楽天



僕が国立に来るのはこれで3回目だ。昔JFN系列の深夜番組「FMナイトストリート」をレギュラーでやらせていただいていた時、当時の僕のバンドのメンバー全員のコーナーを作った。フェビアンのドラマーでもあった熊倉隆君のコーナー名が「クマと行くならこんな店」。当時テレビで放映していた「たまに行くならこんな店」というグルメ番組の題名をパロって、熊ちゃんが住んでた国立の行きつけのお店を紹介するという企画で、「こみゅに亭」という鉄板焼きのお店を紹介した。深夜にいきなりじゅうじゅう音をいわせて焼けるお好み焼きとかをうまそうに食べては、二人で感想を言い合うという、聞いている人には、ただ腹が減ってくるだけの迷惑なコーナーだったかもしれない。その録音で来たのが1回目。

2度目は、高倉健さんで映画にもなった「居酒屋兆治」のモデルの焼きとん屋「文蔵」まで、ランニング仲間の成岡さんと、世田谷から走りでやって来て飲んだとき。
谷保駅すぐの文蔵の近所の銭湯で汗を流そうと思っていたのに、銭湯がつぶれていて、国立大学通りを国立駅のほうに走って別の銭湯を探したのを思い出す。
寡黙なご主人が焼く焼とんがうまくて、そこに集まっていた人たちの温かさが忘れられないが、その「文蔵」も残念ながらもうなくなってしまった。山口瞳さんの原作は読んだが映画は見ていない。YouTubeに予告編が上がっていたのでなにげなく見ていたら、1分10秒あたりに、実に意外な人が出ていたので驚いた。





ひさしぶりの国立だ。あのとき走った、谷保駅から国立駅にまっすぐ伸びる国立通りの雰囲気がとても好きになり、再び訪れた今も、学園都市独特のゆるやかに時間が流れる感じが変わっていなくて、思わず住んでみたくなった。ちょうど地球屋はその国立通り沿いのビルの地下にあるお店だった。

ライブの幕開けはソウルジャンクションズから。楽器編成はいつものエレクトリック・セットだが、曲調はフォーキーな選曲。そのぶんいつもよりぐっとヴォーカルの存在がフィーチャーされる。とても素直な表現で悪くないが、欲深いプロデューサーの目線で見ると、もっとヴォーカルのチャバの声質を生かした曲がほしいなと思ってしまう。チャバの声がいい響きで響いて、聞く人のハ-トを自然に震えさせることができたら、もっと素敵になると思った。ときどきOh Yeahとか、合間に入れるフェイクっぽい歌い回しがとてもいい感じだったからね。期待してるよ。

お客さんの中に、普通のライブの時には見られない年配のご夫人たちを見受けた。成瀬君に聞くと、彼のウクレレ教室の生徒さん関係らしい。言葉のはしばしから国立に根づいた音楽活動をふだんからしていることが聞き取れた。よーしわかった、今日は成瀬君をもり立てようじゃないか。そんな気持ちに何だかなってきて、やっと曲目が決まった。実は昨日までどんな選曲にしていいのか決まらず困っていたが、ここでイベントの方向性が見えたのだ。下記がセットリスト。なにせ直前に決めたので曲順表というものを書いてないので、ひょっとしたら1曲ぐらい抜けているかも知れない。

01) Dream Time
02) トワイライト・シンフォニー
03) ウキウキWatching
04) 風のプール
05) 雨のステラ
06) Baby Blue
07) 幸せにさよなら

当初成瀬君が気を使ってくれて、予定では僕がトリをとることになっていたが、彼が主宰のイベント。僕はあくまでゲストなのだからトリをとるのはおかしいよ、トリはやっぱり成瀬君だよと提案。彼がトリをとることになったのが大正解。トリもトリ、ひさしぶりのライブとは思えない、サービス精神にあふれた、堂々たる大トリで決めてくれた。
過ぎ去った歳月が嘘のように、初めて神戸で見た時と変らない音楽大好き少年がそこにいた。
いや、変ってないと言えば失礼になる。Good Times & Bad Times、さまざまな出来事を経験し、より成長したライブになっていたことはまちがいない。それでいて彼の心はまだまっすぐ素直なままなのだ。

アンコールは成瀬君の提案でココナツ・バンクの「東京マルディグラ」を全員で。思いのほか受けて、また熱いアンコールがきた。うれしかったけれど他に曲を用意してなかったので、もう一度「東京マルディグラ」を演らせてもらうことで、お客さんに納得してもらった。ただし即興で「国立マルディグラ」にして。
成瀬君もチャバも僕も、それぞれAメロの割りふられた部分を、その場で思いついた言葉を即興でのせて歌った。打ち合わせもなしにだ。
うーん、いいね。世代は3世代にまたがるが、みんな言わずもがなのエンタメ心を持っている。



2003/6/25リリース「ココナツ・バンク」に収録
ココナツ・バンク : 伊藤銀次(Vo.Gt)、上原裕(Drs&Perc)、井上富雄(Bass)、久保田光太郎(Gt&Chorus)
ゲスト・プレイヤー:Dr. Kyon (Pf)  


忙しい中、来てくださったお客さん、そして国立・地球屋のスタッフのみなさん、どうもありがとう。
また来てみなさんとお会いして、いっしょに楽しい時間を過ごせたらと思っています。
成瀬君、今度「国立ライドオン Vol.2」をやるときはなんかいっしょにハモろうぜ。洋楽カバーでもいいし、思いきってWonderとかいっしょに演るのはどうだろう?

日を追うごとにディープになる「怒濤の3日間」。part.3の代官山は今夜更新の予定。お楽しみに。