僕はけっこうせっかちで、タイピングの勉強もしてないくせに、アルファベット入力でパタパタとせわしくキーボードを打つ。あたりまえだが急げば急ぐほどタイプ・ミスを起こし、変換したとたん、目の前にとんでもない世界が出現することも稀ではない。

よく奇妙な漢字変換が話題になる。たとえば「ginji」と入力して変換すると「吟じ」となったり、入力にまちがいはなくても、コンピューター側で気のきかない変換をしてくれて笑ってしまうのだが、人間側の打ち損じに対する変換は、さらにもっと奇妙な結果を生むことになる。

なぜか僕の左手は a と e を打ち間違えることが多い。
たとえば、「よろしくお願いします」と打ったつもりが「よろしくお長居します」となってしまうのだ。
まるで、メールの相手のお家に長居をさせてくださいとお願いしているようでおかしい。
用心して「お」だけ先に打っておいても、「negai」をあわてて打つと、今度は「お寝芸します」になっている。
まるで芸人がステージに出てくるやいなや、いきなり寝っころがって「今からお寝芸します。」っていったような感じ。どんな芸なんだ、いったい。自分でも笑ってしまってしばし作業が止ってしまう。

最もよくあるパターンは、t と y や、u と i などの、隣り合っているキーを打ち間違えてしまう場合だ。
どれどれ、今日は黒沢君のTwitter、何をつぶやいているのかなと、「kurosawahideki」と入れて変換すると、hideの i を u に打ち損じていて、なんと「黒沢不出来」になっているではないか。意図してやったことではないのに、黒沢君にとても失礼なことをしたような、なんか申し訳ないようなことをしたような気分になってくる。

さらに悲劇は平等に(?)自分の名前でも起こる。
今度は「itouginji」と入れて変換したら、itouの t が y に打たれてて、「異様銀次」になってしまった。いきなり僕が特殊メイクでもして、「エルム街の悪夢」のフレディーにでもなったような気分だ。

「笑い」のポイントとは実はこういうところにあって、日常のちゃんとしたもののバランスが予期せず崩れる瞬間に生じるものかもしれない。最近見た「ハウエルズ家のちょっとおかしなお葬式」も、ある男の予測できない出現が引き金となり、登場人物たちの誤作動や劣化をひき起こしていく。かなりブラックだけど、これが人間くささというもの。すごく笑えて、最後はあったかい気持ちになれるおすすめの映画だ。


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9月16日、横浜サムズアップで、僕のギター弾き語りライブ、I Stand Alone 2010がめでたく終了した。その日は珍しく小雨。2009年の35カ所、そしてこのあいだの名・神・京まで降られたことがない僕のライブではじめての雨天だ。これは何かの兆候か? 自分勝手にいい兆しととって気持ちよくライブをやらせてもらった。ファイナルということもあったので、パーカッションに高橋結子こと結ちゃん(うん?逆か?)、そしてモーメント・ストリングス・カルテットにゲスト参加してもらってのゴージャズ・セッション。まずそのセットリストを載せておこう。

01) Dream Time   with 高橋結子
02) Twilight Symphony  with 高橋結子
03) I'm Telling You Now  with 高橋結子
04) Flowers In The Rain  with 高橋結子
05) Monday Monday   with 高橋結子
06) 恋のリーズン      銀次のみ
07) 風のプール         銀次のみ
08) ちがうんだよ 銀次のみ
09) This Love 銀次のみ
10) いちご色の窓     with カルテット
11) As Tears Go By     with カルテット
12) 雨のステラ     with カルテット
13) 誰かが誰かを愛してる   銀次のみ
14) 彼女のミステイク   銀次のみ
15) ワンサマーナイト   銀次のみ
16) 愛をあきらめないで   銀次のみ
17) 泣きやまないでLove again     with 高橋結子
18) BEAT CITY     with 高橋結子
19) BABY BLUE     with 高橋結子+カルテット
20) Stardust Train     with 高橋結子+カルテット
21) 幸せにさよなら     with 高橋結子+カルテット

アンコール 1
22) 風になれるなら~日射病~Down Town メドレー 銀次のみ
23) Hang On To Your Dream      with 高橋結子+カルテット

アンコール 2
24) I Will  uncle-jam
25) Shade Of Summer  銀次のみ

ふーっ、歌っているときはそう思わなかったが、文字にしてみると25曲ってすごいね。もうちょっと短くてもという意見もあったけど、これでも泣く泣く落としている曲が多い。
突然黒沢君登場、24曲目のuncle-jamはサプライズ。1曲だけど、8月9日に見れなかった人たちへの初公開となった。黒沢君、長い待ち時間、そしてたった1曲のためにギターを持ってきてくれて、どうもありがとうね。
結ちゃんとは「銀座で銀次」ではじめてサシで演奏した。今回は2度目。曲も増えてぐっとグルーブも合ってきた。なかでもBEAT CITYは、間奏がジャムっぽくてスリル満点、ゾクゾクしたね。
モーメント・ストリングス・カルテット今回のメンツは、「銀座で銀次」に引き続いてのヴァイオリン木野裕子さんとチェロの吉良都さんに、ひさしぶりにヴィオラの小弥祐介君、そして本当にひさしぶりの山本沙由さん。カルテットだけをバックの「雨のステラ」はすごく気持ちよく歌えたが、ポップス・ファンの銀次としては、まさかストーンズの「As Tears Go by」を弦楽四重奏で歌えるなんて夢のようだった。
最後とあってか、知らず知らずにやりきった感あり。終わったら頭も体ももぬけの殻のようになってしまった。
やるたびに課題は出てくるが、次の機会に。この弾き語りライブの完成までまだ道は遠いが、やっとおもしろくなってきた。

この日は、小松久さん、石田ショーキチ君、元ONアソシエイツの関口直人さん、OSTこと坂口修君、弟子志願(?)の成瀬英樹君など、耳の肥えた音楽関係者がたくさん集まってくださった。緊張したけれど、雨にもかかわらず来ていただいたことがとてもうれしい。どうもありがとう。
そして忙しいなか足を運んでくれたお客さん、サムズアップのスタッフのみなさん、どうもありがとう。またつぎの機会もよろしくお長居...あれ? もとい、お願いいたします。

17日(金)、黒沢君と下北沢・風知空知へ10月3日の打ち合わせへ。そのあと渋谷BOXXで成瀬君とソウルジャンクションズを初めて見る。
みんなすごくいいキャラで演奏も悪くない。だけど惜しい。何かがふりきれてない。終わってから彼らにアドヴァイスをと言われたので、ついつい本気でまっすぐコメントしてしまった。初めて会ったのだから、お世辞のひとつでも言ってあげればよかったんだろうが、次の音楽シーンを担ってほしいと思うと、ついついマジになってしまうこの性格。だけど僕は、魅力のない人たちに対してムキになったりはしないからね。かってない音楽業界ピンチの今、夢を売る仕事につく人は夢の中にばかりいちゃだめなんだということを伝えたかっただけなんだ。がんばれソウルジャンクションズ!そして花咲けソウルジャンクションズ!