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□2010年03月28日号□

やっぱりあの暖かさは、大自然のフェイントだったのだ。
週が変わるなり、いきなり、冷たい雨が降る毎日。気温も4度。
せっかくの春を迎える気分と体の用意が、すっかり裏切られ、またチヂこまってしまった。
週の後半、日中は少し暖かくなったものの、陽が沈むなり、吐く息も白く、ヒトケタ台の気温。
かんべんしてくれ。もう冬はいい!

一週間立つのは本当に早い。特に「週間銀次」の連載をはじめてから、また一段と早くなった気がする。
昨日土曜日はその締め切り日。にもかかわらず、黒沢君との曲作りのあと、飲み会に誘われた。

メンツはいえば、泣く子も黙る、日本を代表するレジェンダリー・バンド、四人囃子のドラマ‐岡井大二さん
(実はL↔Rのプロデューサーでもあったのだ)、そしてこれからのJ-Rock・シーンを担っていくだろう、フジファブリックのギタリスト、山内総一郎君と、ちょっとすごく、なんか面白そうじゃないか。
まッいいか、早めに切り上げて、帰ってから書けば間に合うだろう...。
ムム、何度この悪魔のささやきで、地獄を見たことだろう...。

黒沢君の粋なはからいで実現した、三世代トーク・セッションは、朝の5時まで大盛り上がりに盛りあがった。
もちろん僕は朝までずっと、ひたすらプーアール茶だけのノンアルコール人だったのだが、みんなのハイテンションに、負けず劣らず、僕のドーパミンは全快。
岡井さんと黒沢君の漫才もどきのやりとりに、抱腹絶倒。
すっかり酔っぱらったような気分になれた...のはいいのだけど、アップ日の今日昼過ぎに起きだし、今まだこの原稿を書いているありさまである。
ついに締め切りを、というか早くも締め切りを守れなかった...。
期待してアップを待っててくれたみなさん、もうしわけありませんでした。

今週は終止黒沢君との曲作りウイーク。何となく曲もそろって来たので、ぼちぼち作詞モードに入ってきたところである。
詳しい進行状況や内容、そしてユニット名など、喉元まで出かってるほど、みんなに言いたくて言いたくてしょうがないのだが、残念ながら現段階ではトップ・シークレット。
ごめんね。そのうちってことにしといてください! 
時間はかかってるけど、とにかくみっちりやってるからね。 

親子ほども年の離れた二人が、そんなことを忘れて、ギターを抱えて、メロディーをぶつけ合い、夢中になって曲作りに没頭している。
まるで高校生だ。
平凡でベタな表現になっちゃうが、だからやっぱり、音楽ってすばらしいのである。
作業が進むにつれ、少しずつお互いに化学反応が起こってきているようだ。
どうか仕上がりを楽しみにね!ライブもちゃんとやってくつもりだかんね。

二人の化学反応の成果かどうか定かではないが、そんな黒沢君が最近、「かもめ児童合唱団」に書いた曲、これがなかなか名曲で驚いている。
何か彼の新しいチャンネルが開いたのかもしれない。

一月の中旬、やっと二人のユニット初のオリジナル曲ができた。
そして、その曲のデモを、三浦市三崎町在住の音楽プロデューサー、藤沢宏光氏のお宅の地下スタジオで作ることになった。
その滞在中に、藤沢さんが現地で今プロデュースしているという、かもめ児童合唱団の練習を、城ヶ島漁村センターで見学させていただいたけるという、チャンスを得たのだった。

かもめ児童合唱団は、三浦市を中心に歌い続けてきた、5歳から12歳までの十数名の合唱団なのだが、僕の目の前で矢沢永吉のI Love You O.K.を歌うあの子たちは、いわゆるお行儀のいい、大人受けする既存の児童合唱団とまったくちがう何かを、せいいっぱい放射していた。

僕のように「かもめ体験」をしていない人には説明しにくいのだが、どこかロックな、大人の演出ではできない、子供本来が持っている、自由な表情にあふれるその歌は、プロの垢にまみれた、僕の心をきれいに洗い流してくれたのだ。

興味のある人は、かもめ児童合唱団で検索してホームページを見てください。
「トラベシア/三崎の歌」「城ヶ島の雨/あなたが美しいのは」の2枚のシングルが発表されていて、1stアルバムが5月12日に発売されるとのこと。
このアルバムに前述の黒沢君が書いた曲も納められるそうだ。
方程式から抜け出せなくなった、日本の音楽に食傷気味のかたにはおすすめだ。
「かもめ体験」、洗われるよ。

最後に、恵比寿タイムアウト・カフェでの佐野元春との対談に参加してくれた人たち、そしてネットで聞いてくれた人たち、ほんとにどうもありがとう。
あっというまだったけどひさしぶりの佐野君との会話は、僕にとっても楽しく、パワーをもらえた素敵な時間だった。

そして最後に、そして最後に、そして最後に.....
アップ遅れてごめんね。

足踏みする春に「カモン、こっちへ来いよ」と声をかけたくなる銀次でした。


伊藤銀次
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□2010年03月21日号□

昨日は土曜日、「週刊銀次」の締め切り日である。
というか、やばい!もう日曜日に突入してしまっている。
あいかわらずギリギリになってしまうこの性格。
というか、単なる言い訳に過ぎないが、あの線かな、この線で行こうかな、などと迷っているうちに、いつのまにか土曜日がやって来るのである。
いつのまにか来るわけはないのであって、やっぱりこの性格をなんとかしないと...。

言い訳になるが、今週のイベントは週末に集中していた。
そのあたりをのっけたかったので、ギリギリになってしまった。ごめん。

昨日はひさびさに、成岡さんと駒沢公園ジョギング・コースを走った。
政治からスポーツ、音楽、映画、本の話など、多ジャンルの話題で盛り上がりながら約15km走った。
成岡さんは、数少ない、音楽畑ではない世界の友人の一人。
楽しんでゆっくりと走る、有酸素ラニングのやり方を教えてくれた、僕のジョギングの師匠である。
そして全国の名店酒場素人研究家でもある。

ぼくがまだお酒を飲んでいた頃は、京成立石や谷保や、横須賀など(横須賀には「銀次」という名店がある。)
いろんな店を目指して、二人で走っていき、銭湯で汗を流してから、おいしいお酒と料理と会話を楽しんだものだった。
今年始めての駒沢ランの後の酒席、飲まなくなった僕だが、今年はまたいろんな名店にいっしょに走って行くことを再確認して別れた。
成岡さん、お互い体に気をつけて、この感じ続けましょう。

2003年頃だったか、あまりに景気が悪くて、いい話がないところから、彼が口にした「こんな時代は、ラテンな気分で行くしかないですよ。」という一言にひらめき、それを「東京マルディグラ」に使った。
ココナツ・バンクのスペシャル・サンクスに彼の名前が出てくるのはそれ故である。

杉真理くんと村田和人くんのユニット、アロハ・ブラザースのレコーディングに参加した。
といっても、コーラスだとかギターとかの、普通の参加ではない。
なんとコントにである。(といっても、杉くんのファンなら、なんの驚きもないことだが...。)

かなり前、杉くんが、FM広島で番組を持っていたとき、やはりコント・コーナーがあり、ゲストは必ずコントをやらなければならなかった。
僕はしかたなく(嘘つけ)「銭形銀次捕物控」と「子供電話相談室」のパロディをやらせてもらった。

「銭形銀次捕物控」では、もちろん僕が銭形銀次役、杉くんは子分の杉っぱち。
舟木一夫さんの歌う、本物の銭形平次の主題歌を使い、ガラガラっという引き戸の音とともに、杉くんの「親分、てぇーへんだ、てぇーへんだ!」で始まるオープニングはなかなか、本気な凝りかたで、おもしろかった。

「子供電話相談室」での、杉くん演じる「ヤモリのおばちゃま」はすごかったなー!
「ときどき、お部屋の壁とかペタペタしたりするのよ...。」には笑った。
コント王、杉くんとの出会いが、まさに僕のコント魂に火をつけた大きな要因だったのである。

そしてひさしく僕の中で眠りをむさぼっていたコント魂は、今回、杉君のプロデュースのもと、再び姿を現すこととなった。なんとなんと銀次が吟じてしまったのである。
つまり「伊藤吟じ」になってしまったのだ。それも、ありえないものを吟じてしまったのである。
どんな事が起きているのかは4月発売予定のアロハ・ブラザースの新譜で確認していただきたい。
ありえないものを吟じているのだから...。

前から「東京バンドワゴン」という本の題名が気になってしょうがなかった。
バンドワゴンといえば、やはり鈴木茂、1975年の名盤のタイトルを連想してしまうからだ。
とは言いながら、いろんなことにかまけて、チェックせずにいたのだが、新聞の書籍の広告で、同じ著者の、今度はなんと「ダウンタウン(Down Town)」という本が上梓されたのを目にした。

ダウンタウン(Down Town)/小路幸也(河出書房新社)

その宣伝文句をみると
 「東京バンドワゴンの著者が描く温かくて懐かしい「喫茶店X青春」小説!」
この小路幸也という人はどんな人なんだろう?
はっぴえんどやシュガーベイブが青春だった世代なのだろうか?これはちょっとチェックしなくちゃ...。
 
今日は佐野君のトークライブにゲストで行く。
3月18日の「アンジェリーナの日」を見に行ったが、いくつになっても変わらない、彼の音楽へ真摯なアティテュードには密かに心打たれた。
そして昔からまったく変わらない、誰からも愛される、とびきりの性格のよさ...。
今年はデビュー30周年、大きな節目。
僕も何か手伝えるのなら、微力ながら、全力で盛り上げたいという思いを深くした。


伊藤銀次
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□2010年03月14日号□

3月に入ってもう2週目だというのに、今週は雪が降った。
かと思うと週末には15度近くになり、ようやく春めいてきたが、はたして信じていいものやら...。
この冬はほんとに寒暖のアップダウンが激しかった。
寒さの原因は、何度も北から大きな舌のように、ベロっと南に降りてきた寒波で、
なんとこれも暖冬のせいだというから、なにがなんだかわからない。
そういえば去年もそうだったが、今年も春一番が吹いてから寒くなった。
なのに「春一番」とは、看板に偽りありだ。
異常気象の加速度化に予報はますます追いつかなくなっているということか...。

お酒を飲むのをやめて今日で291日目。おかげで心も体の軽やかで、調子がよい。
あびるように飲んでいたころは、よく顔に吹き出物ができて困っていたが、最近なんか、お肌がつるつるしてきた。
友達に顔色がよくなったねと言われたりすると、ちょっとうれしい。
 
飲まなくなっても、音楽仲間との飲み会には相変わらず、積極的に参加している。
みんなで、わいわいやるのは楽しいからね。
それにしても、誰も僕にお酒をすすめない。僕の音楽仲間はみんな、なんて大人なんだろう!

もっぱらウーロン茶をすすりながら会話に参加しているが、今まで酔っぱらってたときと、なんか変わりなく話題に入って楽しんでいる自分がいるのが、自分でも不思議だ。
どうやら僕はナチュラルでも、ハイ(というか根っからのお調子者)な部分を元々持っている人のようだ。
まあもう、人生何回か分のアルコールを摂取してきたわけだから、ここは生まれ変わった気分で、せめて残る人生(?)ナチュラルなマインド&ボディで酔える音楽を目指そう!(なんちゃって...)

昨日、「偶然のチカラ」(植島啓司著、集英社新書)という本を読み終えた。
「偶然」という現象を様々な角度から考察してあって、独特のおもしろさだった。
もっとあのとき、こうしておけばよかったとか、あれはあれでナイスな選択だったんだなとか、いろんなことが頭をよぎり、因果や縁起について考えを新たにした。
ある意味、今の空気にフィットした「再生」の書かも。
スマナサーラさんの「怒らないこと」に続く、銀次のおすすめです。

偶然つながりというわけでもないが、先週から今週にかけて、ひさびさの出会いがあった。
先週お知らせした、ネットラジオ「伊藤銀次のTalkへ行きたい」にゲスト出演してくれた、ママレイド・ラグの田中拡邦、堂島孝平、EPO、そしてiPodFunのDear Musicの取材で、ひさびさにザ・コレクターズの加藤君とコータローにあった。(コータローとは、昨年の池袋鈴ん小屋での僕のライヴにわざわざ来てくれたので厳密にはひさしぶりではないが...)

最新CDの「青春ミラー」はうれしくなるような、良い出来だ。
信じられないほどメロディーも言葉も瑞々しく、しかもなおかつ毒が効いていて、彼らの初期、テイチク/BAIDIS時代のような、エネルギーが充満している。
詳しくは紙面で読んでいただくとして、それにしても彼らといい、EPOといい、今回はベテラン・アーティスト達の元気ぶりには驚きだった。
ミュージシャン・ライフのらせん階段を、何周りもした結果の、高い経験値からくるパワフルさだろう。
当然、田中君や堂島君からも、しっかり、若さのエキスを吸い取らせていただいたが(こわっ!)、今週はベテラン2組の豪快なたたずまいに、元気をいただいた。
感謝である。

PANのヴォーカルのアキラから、最新CDが送られてきた。
PANは、大阪は吹田をホームグラウンドとする、インディ‐系のパンク・ポップ・バンド。
縁があって、「いっせーのせー」というマキシ・シングルを昨年プロデュースした。
キャラもいいし、いい曲を書けるメンバーが3人もいるのだが、スピード感のあるサウンドとメロディーに、言葉がおいて行かれるのが惜しくて、ソング・ライティングに何ヶ月もかけ四苦八苦したが、結果なかなかの上がりになった。
そして一年、セルフ・プロデュースによる「トリハダゲーム」という最新CD、曲作りがうまくなっている!
成長の知らせ、教え子たちからのうれしい便りだ。

今週の最後は、銀次のおすすめCD。(レコミンツ・マガジン終了以来だから、ほんとにひさしぶりのことになるね。)

紹介したいのは、ネヴィル・ブラザーズ・バンドのギタリストでもある、シェーン・セリオ(Shane Theriot)のギター・インスト・アルバム、「Dirty Power」だ。

ロベン・フォードを泥臭くしたようなギターに、ミーターズのようなリズム隊をつけた感じのサウンド。
一曲目なんかはリトル・フィートっぽかったりもする。

そして、とにかく、音がぶっといのがいい!
さらに、大好きなドラマー達、ジム・ケルトナーと、元ミーターズのジョセフ・ジガブー・モデリステが参加、ごきげんなリズムで彼を助けている。

シェーンのアルバムの中では、今のところ、これがベスト!
スティーヴ・クロッパーから、ロベン・フォード、ジョン・スコフィールドあたりの流れにいる、ブルージーでファンキーなギタリストである。
テクとフィーリングの両方を兼ね備えた、今とても貴重な存在のギタリストだと思う。

僕はこれを、新宿タワー・レコードに、「面出し・レコメンド」してあったので買えたけれど、渋谷のタワーではどこにも見当たらなかった。
店頭では手に入れにくいと思うので、ネットで探してゲットするしかないかも。
(この中の曲が、春の銀次ライブの客入れに流れることは、ほぼまちがいないと思う。)


伊藤銀次
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□2010年03月07日号□


僕は定期的に持っているCDの点検をする。5年とか10年のタームで、もう絶対聞かないだろうCDをチェックして、人にあげたり売りに出す。
僕の持論としては、CDは聞くためにあり、聞かないCDは持っている意味がないのだ。

何年か前からやんなきゃと思いつつ、忙しさにかまけ引き延ばしていたら、CDが棚からあふれだし、いつのまにか段ボールに、そして床に山積みになってきだした。
これはいかんなと、今年に入ってすぐ点検をはじめた。

仕事の関係で一応押さえておかなくちゃと買ってたものや流行りものは、ほとんど1度2度聞いて棚に直行していたものが多かったのにはあきれたね。
CDが増えるのと反比例して聞く時間んが少なくなってるということか…。

いちいち聞いていかなきゃならないので、いつ終わるかわからない気の遠くなる作業だが、前はピンとこなかったアルバムが実はちゃんと聞いて見ると、ごきげんなアルバムだったりするとなんかうれしい。
若い頃のようにひさびさにわくわくしている。

ここ何年かは現在のポップ・シーンにあまり期待してなくて、ジャズばっかり聞いていた。
それがこの作業のおかげで、あらためてよさを再確認、今週よく聞いてたのが、ファウンテンズ・オブ・スウェイン(FOS)とティーンエイジ・ファン・クラブ(TFC)だ。

トム・ハンクスが監督・出演の映画「すべてをあなたに」の主題歌があまりにも見事なビートルズ・オマージュの名曲で、FOSはそれを書いたアダム・シュレジンシャーのパンドということで聞いてみたが、期待ほどビートルズっぽくなかったので二、三度聞きで棚に直行していた。
片やTFCは、今聞くと甘酸っぱいバーズみたいで好きなんだけど、買った当時は印象が薄くて、これまた二、三度聞き棚直行コースだったのだが、どちらもなんだか心地よい。
僕の中にいったい何の変化が起こったのだろう?
プロデュースばっかりやってた僕がまたアーティストとして活動を始めたことも関係あるのだろうか?
それとも、黒沢秀樹君とユニットを始めたことの影響か?とにかく今どちらも心地よい。
何か忘れていた感じが帰って来ている気がするのである。

インターネット・ラジオが始まった。
杉君がパーソナリティーを務めてた「OFF STAGE TALK 杉真理のTALKへ行きたい」が「OFF STAGE TALK 伊藤銀次・杉真理のTALKへ行きたい」と名を変えて、僕も参加することになった。
一回目のゲストは、昨年の僕のツアーの横浜でゲスト出演してくれた、ママレイド・ラグの田中拡邦君。
その後も堂島孝平君やEPOさんなど続々登場、地上波ラジオでは聞けないたたずまいのプログラムなので、ぜひ聞いてみてほしい。
生まれて初めてのインターネット・ラジオ、今年は銀次の新しいディケードの始まりかも。


伊藤銀次
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