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ニュー研のブログ『ニュー研へようこそ、ゆっくりしていってね!』

呼吸器疾患と認知症を専門分野とする看護師のブログです!

認知症という言葉を聞いて「物忘れの病気」と思う方も多いのではないでしょうか?

認知症の代表的な中核症状に記憶障害があるので、間違いではありません。

今回は記憶について解剖を少し織り交ぜながら説明していきます。

 

私たちは、見た物、聞いたこと、触れた物などの体験したことなどを記憶します。記憶のメカニズムは、例えば目で見た物は視覚情報として後頭葉や頭頂葉で処理され、側頭葉にある海馬という部分に送り込まれます。海馬から脳弓という部分があり視床に到達し、帯状回を経て再び海馬へとぐるぐると回り、長期記憶として保存されます。これをPapez回路といいます。気を付けて欲しいのは、これは体験した事実のみの記憶です。

 

記憶の種類には大きくわけて2種類あります。短期記憶と長期記憶です。この言葉は聞いたことがあるかもしれませんね。短期記憶は作業記憶(ワーキングメモリ)とも言われており、数秒~数分程度の記憶です。MMSEでいうと「桜・ネコ・電車を繰り返してください」と言って即時に繰り返すことができない障害を短期記憶障害といいます。日常で言えば口頭で電話番号を聞いて数秒~数分覚えておきメモをする。メモをしたあとは電話番号を忘れてしまいますが、「あの時メモ帳にメモをしたな」と思い返すことができる。電話番号は忘れていても、どこにメモを残したかは覚えており、メモを見れば思い出せるのが作業記憶です。「メモに書いたな」と覚えているのは長期記憶になります。

長期記憶は数分~数年にわたって覚えている記憶で、大きく2つに分かれます。陳述記憶と非陳述記憶です。陳述記憶とは言葉で言い表すことのできる記憶のことです。陳述記憶は言葉の意味や体験したことを言語化できる記憶です。非陳述記憶は手続き記憶といって車や自転車の運転、楽器の演奏など体で覚えている記憶のことをいいます。

 

認知症を発症するとまずは長期記憶のなかでも近時記憶と言われる数分~数時間前の記憶の障害が出現します。例を挙げますと、朝食を食べて1時間後に「朝ご飯を食べてない」と発言することです。朝ご飯を食べたことは覚えているが、何を食べたか覚えていないというのはいわゆる健忘になります。体験を覚えているので近時記憶の障害にはあたりません。

認知症が中等度や重度になってくると短期記憶の障害が出現したり、長期記憶の中でも数か月~数年単位のエピソード記憶の障害が出現してきます。数秒前に説明したことを忘れていたり、車の運転方法がわからなくなったりすることが例として挙げられます。

 

長くなりましたが、以上が記憶についてのお話です。

最後にもう一つだけ、お伝えしておきたいことがあります。認知症の人は忘れるのだから適当な対応をしておけばよいと思う人もいるかもしれません。それは大きな間違いです。先述したように、Papez回路は体験した事実のみを記憶する回路です。“楽しかった”や“辛かった”などの感情はYakovlev回路といって情動を記憶する回路になります。なので、記憶障害のある人が不快な感情を抱く対応をすると、「何をされたか覚えていないが不快な感情だけが残る」といった状況になります。それがBPSDやせん妄を引き起こす要因となりかねないのです。

 

これらを知り、認知症の人の記憶障害の程度を把握しながら看護ケアを実践していきたいですね。