遂行機能障害(実行機能障害)のこと | ニュー研のブログ『ニュー研へようこそ、ゆっくりしていってね!』

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呼吸器疾患と認知症を専門分野とする看護師のブログです!

認知症の中核症状について、これまで記憶障害と見当識障害のことを書いてきました。今回は遂行機能障害のことを話していきましょう。認知症のいろんな本を読むと遂行機能障害とか実行機能障害とか書いてありますが、意味は同じです。私は、研修で遂行機能障害と習ったのでその馴染みで使用しています。

遂行機能とはある目的に対して効率的に計画・実施ができることをいいます。普段私たちが何気なく行っている買物や交通機関の利用、料理や洗濯などの日常生活動作も遂行機能障害のある人はできなくなったり要領が悪くなったりします。例えば、今晩の料理はカレーにするとして、お肉の下処理をして炒めている間に野菜を切ったり、煮込んでいる間に洗濯物を取り込んで・・・などと頭の中で段取りを計算していると思いますが、遂行機能障害があるとお肉の下処理をした後は何をすればよいかわからなくなってしまったり、一つずつしか行動ができなかったりします。

入院している患者でいえば、排泄行動や入浴介助で特に遂行機能障害が見られやすいのではないでしょうか。排泄行動は普段何気に行っていますが、“尿意で起き上がる”→“靴を履く”→“トイレに行く”(見当識障害があればここでわからなくなる)→“便器の蓋を開ける”→“体を反転させる”→“ズボンを下げる”→“便座に座る”→“排泄する”→“お尻を拭く”→・・・といったように細かく分けると沢山計画的に行わないといけないのです。ここに記憶障害や見当識障害が出現すると混乱や不安といったBPSDが出現してくるのです。

このような遂行機能障害が出現している患者は一つの動作が終われば止まっていたり思いもしない次の動作を始めたりします。その場合は一つずつ声掛けをして、それができたらまた次の声掛けをするといった方法をとってみましょう。排泄行動については排泄がなくてもすぐに立ち上がってしまうこともあります。その場合は「もう少しゆっくり座ってていいですよ。」や「お腹が張っているみたいなのでもう少し座ってみてもらってもいいですか?」などと失敗を感じさせないような声掛けをしてみましょう。そうすると上手くいくこともあります。上手くいった体験は周囲と共有して看護ケアの方法として取り入れていってください。

遂行機能を司っている脳の領域は前頭前野と言われる前頭葉のなかでも前の方の部分です。ここに障害を来たすと遂行機能障害が出現します。認知症に限らず、脳血管障害などでもこの部位に障害を来たすと出現するので、「おや?なにか行動がもたついているな?」と感じた際にはぜひ参考にして実践してみてください。