これは贖罪ではなく警告

 

 

※画像はお借りしているものです。

 

観に行ったのもう一週間前だな。

そろそろ書かなくちゃ内容忘れちゃうな。

 

本年度のアカデミー賞で作品賞、監督賞など7部門を受賞した『オッペンハイマー』、凄い映画であるとともに、非常にモヤモヤが残った(自分の中の)評価が難しい映画だった。

 

いまや原爆の父と呼ばれる天才物理学者ロバート・オッペンハイマー(キリアン・マーフィー)。

 第二次世界大戦下、ドイツが核分裂に成功したというニュースに焦ったアメリカは極秘プロジェクト「マンハッタン計画」を立て、オッペンハイマーは優秀な物理学者たちを率いて計画に参加する。

そして世界初となる原子爆弾の開発に成功するのだ。

しかし、その爆弾が投下された惨状を聞いたオッペンハイマーは激しく苦悩する。

その後、ソ連が予想より早く原爆開発を成功させたことを受け、原子爆弾の1000倍の威力といわれる水素爆弾の開発を進める。

アメリカの原子力委員会の顧問であるオッペンハイマーはソ連をはじめとする世界中の核開発競争を危惧し、水爆開発反対する。

オッペンハイマーは核兵器による甚大な被害を憂慮し、トールマン大統領に直談判し、国際的な核兵器管理機関の設立を提案するが却下される。

さらにアメリカ原子力委員会の委員長のルイス・ストローズ(ロバート・ダウニー・Jr.)と水爆実験を巡って対立し、科学者、政治家とのつながりを巻き込んで彼の人生は大きく暗転していく。

 

これは困った映画だな。

さすがアカデミー賞を受賞しただけのことはある、役者の演技のすばらしさには圧倒される。

作品の内容は素晴らしいと思うんだけど、正直な感想はかなり戸惑いがあった。

オッペンハイマーは原子爆弾の開発の早い段階で恐るべき殺傷能力がある可能性がわかってた。

実際、その成果の報告を受けると激しく苦悩し、水爆開発の反対の立場をとる。

もちろんオッペンハイマーは激しく後悔の念に囚われたであろう。

その後の人生も大きく変わってしまったと思う。

その苦悩が贖罪になるんだろうか、赦しにつながるんだろうか、もちろん世界に核が広がってしまったのはオッペンハイマー個人の責任ではない、それは分かっている。

劇中、「アメリカがやらなきゃソ連がやる」のような言葉があったが、世界はまさにそんな感じだ。原子爆弾は相手を傷つけるためのものではなく、驚異的な威力を保持することによる抑止力ということ、本当にそうなのか?

今の世界、核をちらつかせて牽制するようなことがあちこちで起こっているが、これが抑止力なんだろうか?

どこの国も核を保有し、誤ってどこかが使ってしまったらいまや世界中にある核保有国はどうなるんだろうか?

いま、世界が、地球があるのはまったくの偶然じゃないんだろうか・・・

本来、人類の生活をよりよくするためのテクノロジーはすべて軍事からスタートしているという事実をもっと真剣に考えるべきだと思う。

僕の感想は映画が伝えたかった事とは全く違う解釈をしていると思う。

だけど、僕が受け取ったメッセージはこれに尽きるのだ。

直接描写はないにせよ、広島、長崎という言葉が出てくるのは本当に心が痛い。

ノーラン監督作にしては比較的わかりやすい部類だと思う。

テーマがテーマだけに娯楽として観るのもちょっと違う。

だけどこれは日本人こそ観ておかなければならない映画だと思う。

 

 

  鑑賞メモ:劇場