今日は、リハビリ生活の振り返り(その1)
大阪の病院に転院して、社会復帰に向け本格リハビリの開始。
といっても、
最初の1か月は、1日20分座りましょうね。
身体をおこすことが大事なんです。
と言われて、ベッドサイドで車イスに座らされるだけ。
ひとりで座れないから、看護師さんやリハビリの先生に抱きかかえられて、車イスに座らせてもらう。
そして、リハビリの先生に手や足をマッサージしてもらうだけなのだ。
1か月ぐらいすると、少しずつ身体が動くようになってきた。
何とか自分で車イスに移れるようになってきた。(5分ぐらいかかってたけどな…)
感覚が戻ってくると、なんとなく状況が飲み込めてきた。
身体の左側が全く動かない。
手も足も動かない・・・
先生の話だと、小脳を切除した影響だそうだ。
小脳は主に運動機能を司るらしいんだけど、小脳半分取っちゃったんで左半身がマヒして運動機能を失ったとのことだった。
小脳を取った影響は、ほかには飲み込みができない、声が出ない、両目のピントが合わない、なぜか右半身の温度が全く分からないなどの感覚障害…、などまあいろんな問題があるのがわかった。
もう以前のように戻るのは無理、いかに自由に車イスに乗れるようになって自分で動けるようになるかだと先生に言われて目の前が真っ暗になった。
目の前が真っ暗ってこういうことを言うんだな、でもとことんあきらめの悪い俺は、杖ついてでも歩けるようになりたいと思ってた。
リハビリはマジで地獄・・・
いい大人が涙流しながら取り組むんだぞ、しかもマジ泣き・・・
頭の位置が少し動くと、激しいめまいがして視界がぐにゃぐにゃに曲がるんだよ。(これは今でも治らない・・・)
以前よりスムーズに車イスに乗れるようになったけど、相変わらず左手と左足は動かないので、右足で地面を漕いで車イスを動かして移動した。
でも、時間だけはあったので、車イスで病棟をぐるぐる回ってトレーニングしていた。
毎日、同じところを(それも何回も)回っているので、曲がり角までの距離とか、床が汚れている場所まで覚えたんだよ。
そのうち、練習したらなんだか立てるような気がして、手すりのあるところで立つ練習をした。
そしたら、看護師さんが飛んできて、
くっきーまんさん、なにしてるんですか!
転んだら大変だから、ひとり立ったりしないで!
と怒られた。
だって、立てるような気がするんだもん。
だから、どうしたら看護師さんに見つからないようにできるかを考えて、車イスで監視カメラの位置を調べて回った。
そして、カメラの死角をみつけて、ここなら大丈夫だろう、というところでこっそり立つ練習をした。
でもなぜか、看護師さんが飛んできて怒られる。
なんで???
トム・クルーズは監視カメラをかいくぐっているのに、どうして俺はすぐに見つかるんだ?
入院している間は、ずっとそんな感じだった。
俺が入院していたところは、脳疾患の患者ばかりで、比較的年配の方が多かった。
だから、みんなあんまり積極的にはリハビリには取り組んでいなかったのだよ。
気持ちはワカル、リハビリってめちゃくちゃきついからな。
病棟のヘルパーさんは、どん底の状態から少しずつ動けるようになった俺をいつもほめてくれた。
そのうち、看護師さん(俺にはマジ天使)が同じく入院してるおばあちゃんに、
あの人、死にかけて、とても起き上がれる状態じゃなかったのに、たまに立ってるよ。
あの人、奇跡の人だよ。
と俺のことを指さして話すようになった。
リハビリに後ろ向きなお年寄りを勇気づけようとしたんだと思う。
そしたらある日、ベッドで寝ているときふと目が覚めると、知らないおばあちゃんがベッドの横に立っていて、俺の足を触ってる。
な、なんじゃ~~~???
もちろん声が出ないから、心の叫びじゃ。
おばあちゃんが言うには、奇跡の人の足を触るとパワーが移るってヘルパーさんに聞いたと言ってる。
そんなわけあるかい!
怖いわっ! マジでビビったぞ!!
先生には、くっきーまんさんはやり過ぎだからもっと抜くところは抜きなさいと言われた。
カルテをのぞき込んだら、「過剰努力傾向あり」と書かれていた。
うははは、さすがよく見てはるな。
たしかに俺は、10回やれと言われれば、20回やるタイプ、絶対にギブアップはしない。
簡単にギブアップしたら、ヘタレやん。
毎日スムーズに動ける想像ばかりしてた。自分勝手な想像とか妄想は得意だ。
スムーズに動ける想像ばかりしては、こっそり試してた。
イメージ通り、スムーズに歩けるようにならなかったけど、いまは杖で何とか歩ける。(風が吹いたらアウトだけど・・・)
本当に辛かった。
思い出したくもない。
左半身もだいぶ動くようになったけど、かなり不自由な状態になった。
めまいはちっともマシにならない。
でも、今年は春から職場に復帰した。
(会社にはかなり配慮していただき、通勤や勤務時間も制限付き。)
以前のようなパフォーマンスが発揮できず、とても心苦しく思っている。
でも、もうこれ以上改善しないと思う。
STAP細胞にはマジで期待した。
ひょっとしたら俺も治るかもしれんと思ったよ。
STAP細胞があんなことになって俺のがっかりっぷりは尋常じゃなかった、たぶん日本で一番がっかりしたと思う。
後は、今の状態の制限の中でどれだけできることを増やせるかということに取り組んでいかねばならんのだ。
まあ、障害はたくさん残っちゃったけど、贅沢をいえばキリがないからな。
とりあえず、毎日の動作すべてが訓練、リハビリの毎日は続くのだ。