前回の記事で、最難関理系「東京大学」「京都大学」「東京工業大学」では東大理系が突出して難しく、受験には覚悟が必要と書きました。
では、東工大と京大は難易度にどれくらい差があるのか、志望校選びのポイントなどについて、私が思うところを綴っていきたいと思います。
まずは合格者平均偏差値をみてみます。
ボーダー偏差値でなはく、合格者平均偏差値でみるのは、受験は一発勝負なので、ボーダーを目指すものではなく、合格者平均の実力をつけることが大事だと思っているからです。
◎河合塾記述模試(2023年入試)
(合格者平均偏差値:英数理2科目の総合偏差値/共通テスト得点)
京都大学/工/電電 67.9/768点
東工大/工学院 67.0/725点
◎駿台模試の合格者平均偏差値(2021年入試、2次試験科目の総合偏差値)
京都大学/工学部 58.1
東工大/工学院 57.8
記述式模試の偏差値だけみれば、微差にみえますが、結論から申し上げますと
見た目以上に差は大きいというのが私の考えです。
理由は2つあります。
一つ目は、共通テストの存在。
京都大学は、足切りもありますし、2次試験の得点にも加算されます。
配点は学部によりますが、工学部を例にとると共通テスト200点:個別試験800点の1000点満点で合否判定されます。
しかも共通テスト200点の配点は、国語50、社会100、英語50と文系科目だけが対象で、かつ、社会に「現代社会」のような軽量科目選択は認められていません。
一方、東工大は共通テストの得点は足切りのみに使われ、合否判定に影響しません。
しかも、足切り自体がトンデモなく緩く、二次試験の科目だけしっかりやっていれば、国語社会ノー勉でも足切りされることはまずありません。
共通テストに相当程度の対策が必要で、かつ、失敗できない京大に対し、共通テストの負担が殆んどなく、かつ、失敗しても大丈夫(ただし、後期国立は厳しくなる)な東工大では、犠牲にする勉強時間やプレッシャーがだいぶ違います。
二つ目は、個別試験。
上記に掲げた河合塾模試でみると、合格者平均偏差値は京大67.9に対し、東工大67.0と微差に見えます。
この平均偏差値は英数理科2科目で、同じ土俵で比べていますので、確かに僅差ではあります。
しかし、河合塾模試は両大学の二次試験(個別試験)とは難易度がまるで違いますので、実力通りの差が出にくいと言える可能性があります。
難易度の高い駿台全国模試のほうが、難関大学受験層の実力差が出やすく精度が高いと思いますので、そちらで見てみます。
こちらの総合偏差値はそれぞれの大学の二次試験科目で算出されますので、同じ土俵ではなく、京都大学は国語込み、東工大は国語抜きで算出されています。
理系受験生の国語偏差値は、理系科目よりかなり低くなりますので、京大は国語のせいで偏差値が低めに、東工大は国語抜きなので、高めに算出されていることになり、実際の偏差値差はもっと大きいと思われますし、二次試験の国語対策にも時間がかかります。
以上から、実際の難易度、あるいは、合格に必要な勉強時間は、東工大に比べ京大のほうが明確に大変ということが私の結論になります。
もう一つ、興味深いデータを紹介します。
それは、両大学合格者の高1~高3までの駿台模試総合偏差値の変遷です。
高3は国語が含まれる・含まれないの差がありましたが、高1と高2は英数国3科目総合なので同じ土俵になります。
京大工学部
(高1)63.0→(高2)64.5→(高3)58.1
東工大工学院
(高1)57.6→(高2)60.6→(高3)57.8
気づかれましたでしょうか。
そうなんです、京大合格者と東工大合格者は受験勉強のスタート時点が明らかに違う、京大合格者は高1の時点でかなり勉強をしているということです。
下記の記事で東大や難関国立医学部合格者と東工大合格者の受験勉強スタート時期が違うことを書きましたが、京大工学部合格者は東大や難関国立医学部合格者に近い受験戦略をとっているものと思われます。
京大合格者は初めから京大を目指して勉強していたというより、東大や国立医学部など難関を目指して高校入学から受験勉強を始めている層が結果として京大志望になったパターンが多く、東工大志望者はそこまで勉強しておらず、高2あたりから受験勉強を始めて追い上げるタイプが多いのかなって気がしています。
以上が、難易度関連の話です。
それでは、京大・東工大、どちらも目指せそうな場合、志望校選びをどう考えれば良いか、について、私の考えを書きたいと思います。(つづく)