先週の記事で、殆どすべてのメディアで、「日本人の給与が全く上がらない中、役員報酬だけが高くなっている」という論調で記事になっているが、私は違和感を覚えていると書きました。
今日はその話の続きです。
みなさんも「日本人の給与が全く上がっていない」ということは聞いたことがあると思いますし、各種メディアが喧伝している典型的な下記のような表を見たことがある方が多いのではないでしょうか?

諸外国の給与が伸びている中、日本だけ20年間給与が全く上がっていないというとても分かりやすいグラフです。
これはこれで正しいのでしょうが、もう一つ表を提示しますので、そちらをご覧下さい。
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2012年 |
|
2022年 |
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順位 |
企業名 |
平均 |
企業名 |
平均 |
年収 |
年収 |
1 |
三菱商事 |
1,419万円 |
(株)キーエンス |
2183万円 |
2 |
伊藤忠商事 |
1,389万円 |
伊藤忠商事(株) |
1580万円 |
3 |
三井物産 |
1,363万円 |
三菱商事(株) |
1559万円 |
4 |
野村ホールディングス |
1,335万円 |
三井物産(株) |
1549万円 |
5 |
住友商事 |
1,310万円 |
丸紅(株) |
1469万円 |
6 |
東京海上ホールディングス |
1,253万円 |
野村ホールディングス(株) |
1441万円 |
7 |
丸紅 |
1,223万円 |
東京海上ホールディングス(株) |
1413万円 |
8 |
スカパーJSATホールディングス |
1,222万円 |
住友商事(株) |
1406万円 |
9 |
JXホールディングス |
1,178万円 |
ソフトバンクグループ(株) |
1322万円 |
10 |
NKSJホールディングス |
1,175万円 |
(株)電通グループ |
1295万円 |
11 |
三井住友トラスト・ホールディングス |
1,161万円 |
東京エレクトロン(株) |
1285万円 |
12 |
三井住友フィナンシャルグループ |
1,158万円 |
三井不動産(株) |
1274万円 |
13 |
MS&ADインシュアランスグループホールディングス |
1,152万円 |
三井住友トラスト・ホールディングス(株) |
1268万円 |
14 |
電通 |
1,143万円 |
三菱地所(株) |
1265万円 |
15 |
三井不動産 |
1,103万円 |
ファナック(株) |
1249万円 |
16 |
富士フイルムホールディングス |
1,099万円 |
(株)大和証券グループ本社 |
1220万円 |
17 |
ソフトバンク |
1,097万円 |
(株)バンダイナムコホールディングス |
1205万円 |
18 |
三菱地所 |
1,088万円 |
中外製薬(株) |
1156万円 |
19 |
エーザイ |
1,063万円 |
鹿島建設(株) |
1128万円 |
20 |
双日 |
1,062万円 |
SOMPOホールディングス(株) |
1128万円 |
21 |
ファナック |
1,057万円 |
アサヒグループホールディングス(株) |
1115万円 |
22 |
三菱UFJフィナンシャル・グループ |
1,049万円 |
(株)コンコルディア・フィナンシャルグループ |
1115万円 |
23 |
三菱ケミカルホールディングス |
1,022万円 |
豊田通商(株) |
1114万円 |
24 |
キリンホールディングス |
1,015万円 |
武田薬品工業(株) |
1105万円 |
24 |
アステラス製薬 |
1,015万円 |
MS&ADインシュアランスグループホールディングス(株) |
1098万円 |
26 |
第一三共 |
998万円 |
第一三共(株) |
1095万円 |
27 |
アサヒグループホールディングス |
997万円 |
(株)三井住友フィナンシャルグループ |
1095万円 |
28 |
T&Dホールディングス |
987万円 |
ソニーグループ(株) |
1085万円 |
29 |
豊田通商 |
982万円 |
日本郵船(株) |
1082万円 |
30 |
東急不動産 |
981万円 |
Zホールディングス(株) |
1075万円 |
31 |
日揮 |
973万円 |
(株) 商船三井 |
1073万円 |
32 |
ジェイ エフ イー ホールディングス |
969万円 |
アステラス製薬(株) |
1064万円 |
33 |
商船三井 |
966万円 |
(株)T&Dホールディングス |
1058万円 |
34 |
明治ホールディングス |
957万円 |
東急不動産ホールディングス(株) |
1058万円 |
35 |
武田薬品工業 |
956万円 |
味の素(株) |
1047万円 |
36 |
昭和シェル石油 |
955万円 |
大塚ホールディングス(株) |
1045万円 |
37 |
コムシスホールディングス |
936万円 |
(株)みずほフィナンシャルグループ |
1044万円 |
38 |
国際石油開発帝石 |
929万円 |
双日(株) |
1038万円 |
39 |
日本郵船 |
926万円 |
(株)日本取引所グループ |
1035万円 |
40 |
サッポロホールディングス |
925万円 |
(株) 三菱UFJフィナンシャル・グループ |
1029万円 |
41 |
千代田化工建設 |
924万円 |
(株)大林組 |
1025万円 |
42 |
みずほフィナンシャルグループ |
923万円 |
(株)アドバンテスト |
1019万円 |
43 |
りそなホールディングス |
917万円 |
ヤマトホールディングス(株) |
1019万円 |
44 |
味の素 |
907万円 |
富士フイルムホールディングス(株) |
1017万円 |
44 |
KDDI |
907万円 |
明治ホールディングス(株) |
1015万円 |
46 |
イオン |
899万円 |
東京建物(株) |
1009万円 |
47 |
中外製薬 |
894万円 |
ENEOSホールディングス(株) |
1007万円 |
48 |
旭化成 |
893万円 |
(株)リクルートホールディングス |
998万円 |
49 |
日清製粉グループ本社 |
892万円 |
川崎汽船(株) |
990万円 |
50 |
ソニー |
891万円 |
任天堂(株) |
989万円 |
この表は2012年と2022年の日経225企業の従業員平均年収を高い順に50社並べたものになりますが、1位でみても50位でみても年収はかなり増えていますし、同じ会社でみても軒並み上がっているように見えますよね。
更にもっと前に遡って2000年前後の年収を調べると、キーエンスは762万円、三菱商事1082万円、伊藤忠商事897万円などとなっていて、やはりだいぶ上がっていることが分かります。
では、全然上がっていないように見える最初の表との違いって何なんでしょうか?
ピンときた方、当たりです。
最初の表は、日本全体の給与水準の表で、非正規や中小零細企業をたくさん含んだ平均ということで、後者の表はトップ上場企業の表ということなんです。
20年前はどんな仕事をしていてもそれなりにもらえていた給与が、今では、非正規・正規といった属性、仕事の内容、会社によって大きな差がつくようになったということだと思います。
以前に、平均はみなさんが求める普通とは違うというテーマで記事にしましたが、まさしくその話と同じと思います。
このブログを読まれている方は、難関大学を目指している方が多いと思いますので、卒業後に非正規雇用や中小零細企業を目指すのではなく、上場企業への就職を目指す方がマジョリティーと思います。
日本の給与は20年以上ずっと上がっていないという情報は心配する話ではないかもしれません。
翻って、本日のテーマ
「日本人の給与が全く上がらない中、役員報酬だけが高くなっている」
というのは、正確ではなく、
「役員報酬が高くなっている(1億を超えるような)企業は、従業員の給与も上がっている」ということだと思いますが、如何でしょうか。
給料の話をテーマに書くとどうしても嫌な感じの記事になってしまいますね。不快に感じられた方がいたとしたら、申し訳ありませんm(_ _)m