オリンピック、金メダルラッシュで盛り上がってきました!
オリンピック大好きの私は、毎日時間が足りないほど、フル観戦。
日中は仕事で観ることが出来ないので、結果を知らずにビデオに辿りつけるか、が大きな課題になっています。
そんな私がこのブログにピッタリの劇的な金メダルを紹介します。
金メダルを取ったのはケンブリッジ卒の微分方程式が専門のポスドク、アナ・キーゼンホファー(オーストリア)、正真正銘の現役リケジョさんです。
種目は女子ロードレース。東京武蔵野の森をスタートし、静岡県富士スピードウェイまで147キロの女子自転車個人戦です。
自転車競技はとても番狂わせが起きにくいのですが、全く無名の数学者が金メダルをとってしまったんですね。
その展開が面白すぎ。
ツール・ド・フランスを見たことがある方はご存知と思いますが、自転車ロードレースは個人戦と言いながら、実は団体戦に近いのです。
風の抵抗が強い自転車競技は、前の自転車を風よけに走ることにより体力を温存できるため、複数人でチームを組んで一番前を交代しながら走ることによりエースを後方に温存し、勝負どころでエースが抜け出す、という展開になります。
この競技の優勝候補はもちろん、プロの自転車選手達。
中でもオランダチームは出場4人全員が世界ランキング5位以内(1位、2位、4位、5位)の金メダル候補でメダル独占も有力視されていたドリームチームでした。
対するアナ・キーゼンホファー(オーストリア)さんは、アマチュア選手で、オーストリアからの参加は彼女1人だけ。チームを組む相手がいません。
競技は147キロですが、最初の10キロをパレード走行し、残り137キロから勝負が始まります。
彼女は、リアルスタート地点である残り137キロ地点から猛然とスパート、1人で大逃げを打つのです。
彼女を追ったのは南アとナミビアなどの選手4人だけで、大集団は静観します。飛び出したのはいずれも無名の選手で、相手にする必要なしと判断したわけです。
飛び出した彼女達5人は残り100キロの地点で有力選手がいるメイン集団に10分以上の大差をつけ逃げ続けます。
ここまでは、ツール・ド・フランスなどでも見られるよくある展開ではあります。
ところが、メイン集団は圧倒的に強いオランダチーム4人VS他全員といった構図で牽制しあい、前を追う展開になかなかなりませんでした。
その後紆余曲折ありましたが、逃げ集団も少しずつ脱落し、オランダの選手が牙を剥き、ついに残り5キロの地点で、逃げていた2人を吸収し、レースは振り出しに戻ったかのように見えました。
その後、先頭集団は最後の駆け引きからオランダの選手が実力を発揮して抜け出し、歓喜のゴールとなりました。
ところが。
あれっ、何か様子が変です。
そうなんです、オランダの選手がゴールする1分15秒前に。。。
アナ・キーゼンホファー選手がゴールしていたのです。
???
オランダ選手は逃げていた2人を吸収したときに、その前を走っている彼女の存在に気づかず、まんまと逃げ切りを許してしまったのです。
ゴール後、その事実を知って呆然としていたそうです。
実は東京オリンピック、無線の使用が禁止されていたため、サポートチームからの情報が選手達には伝わっておらず、メイン集団の多くがアナ選手の存在に気づいていなかったのです。
アナさん、ウィーン工科大学で数学を学び、ケンブリッジ大学で修士号、カタルーニャ工科大学で博士号を取得。現在はローザンヌ工科大学で“数理物理学で生じる非線形偏微分方程式”を研究する博士研究員、バリバリの現役リケジョさんです。
本来は、解の無かったはずの偏微分方程式。
無線の禁止、アナ選手への過小評価、強すぎたオランダチーム、など様々な変数が絡み合い、無かったはずの解が出来てしまったわけです。
「スタートからの大逃げスパート」という解が。
いやー、何が起きるか分からないオリンピック、最高ですねー。