部屋のベッドの上でぼーっと窓の向こうを眺めながら我思う。
生きるとは何か?幸福とは何か?永遠の真理とは何か?どこかの星には宇宙人が住んでいるのか・・・。
しかしいくら考えてもわからず、出てくるのはあくびばかりだ。するとベランダにはいつの間にいたのか、黒猫さんに良く似た猫がこちらを見ていた。黒猫さんは全国を行脚中だから別の猫だと思うが、それにしても良く似ている・・・。
しばらくじっとお互い目を合わせていると、突然その猫が言った。
「おまえらしくないな。そんな瞑想じみたことをするのは」
なんだ、やっぱり黒猫さんだ。
「どうも。よく来ましたね」
「素人がむやみにそんな考えに首を突っ込むと余計に生きづらくなるだけだぞ」
「はあ、そういうもんなんですかね。しかし、人間は唯一理性を持った考えることのできる生き物ですからね。猫にそんなことを言われるのは何だか変な感じがしますな」
と言って笑った。すると、黒猫さんは黙ってどこか別のほうを見ている。視線を追ってみると、テーブルの上のサバの缶詰をどうやら見ているようだ。
「昨日の酒のつまみですがよかったら食べます?」
「うむ。修行の身、ぜいたくは言うまい」
そう言う割には、とてもおいしそうに食べている黒猫さんがちょっとかわいらしいと思えた。
缶詰を食べ終わると前足をぺろぺろとなめながら言った。
「おぬしは人間と動物はどちらが幸福だと思うか?」
なかなか難しい質問だ。
「うーん。ちょっとよくわからないですね。人間は色々な便利な道具に囲まれているし、天敵もいませんからね。だけど、お腹を抱えながら必死にトイレを探しているときに道端に犬や猫のフンを見ると、どこでも好きなときに用をたせられてうらやましいなって思いますけどね」
と言って汚い話でもうしわけないが笑った。
「人間は知恵のリンゴを食べて考えることのできる動物になった。そのおかげで動物にはない、素晴らしい文明を持つことができた。しかし、その実を食べてしまった代償もある・・・。それは何かわかるか?」
「それはなんですか?」
「それは、死への恐怖を知ってしまったことだ。死とは何か?死後の世界とはどんなものか?考えてもわからない、しかしどうしても考えざるをえない。動物は死のことなど考えないし不安もない。本能に従い生きるのみだ。人間と動物のその違いが知恵のリンゴを食べてしまった代償なのだ・・・」
「ははあ!黒猫さん!なんという深いお言葉です!!」
