大学のキャンパスは春を迎えて、新入生の緊張と期待に満ちたざわめきが初々しい彩りを添えていた。俺は久しぶりのキャンパスを懐かしく歩き、噴水の囲いに腰を降ろした。

景色はあの頃をほとんど変わっていないけど、今じゃあもう、このざわめきの中からあの時の仲間の声は聞こえてこない。そう思うと妙に寂しく思えてきた。

春の風に吹かれて思い出す。そういえば、あの時みんなに始めて会った時もこんな気持ちを抱えている時だった。春の暖かさと周囲のざわめきとは裏腹に、ぽっかり空いた胸には寂しさと孤独の風が吹いていた・・・―――――





「なんとなく入った大学だけど、これといって楽しいこともないし、何だか退屈だな・・・」

そんなふうに独り言をしながら、噴水の囲いに腰を降ろしていた。新しく始まった俺の大学生活は友達らしい友達もできず、なんとなくぱっとしない毎日が目の前を通り過ぎていくのだった。

 ぼーっとしていると、通りの向かいのベンチに仲良さそうなカップルが楽しそうに会話をしている姿が見えた。

「彼女かぁ・・・。俺にも彼女がいればなぁ、だいぶこの浮かない毎日も変わるんだろうな・・・」

 すると、どこから飛んできたのか、足元にバレーボールが転がってきた。どこか近くでバレー部が練習でもしているのだろうか?でも普通は室内で練習するものじゃないのか?なんでこんなところに転がっているのだろう・・・。何気なくボールを拾い、手の中で転がす。

「すみません。それ、私達のボールなんです」

 声のしたほうを見ると、そこには金色の髪をした女性が立っていた。

「ああ、そうなの。バレー部が外で練習なんてめずらしいね」

そう言って、座ったままボールを投げて渡した。

「私たち、ドッヂボール部なんです。でも今は人数も少なくて、試合も出れなくて・・・」

俺はそこまで聞くと、その場を立ち去るように歩き出した。「人数が少なくて・・・」ってことは絶対にこのあと、俺を勧誘してくるのは間違いなかったからだ。この春の時期はサークルや部活の勧誘がしつこくてうんざりする。それに「ドッヂボール部」だって!?・・・入ったら最後、大学生活はダサくてみじめになるに決まっている。

 しかし、金髪の女性は行く手に立って俺の歩みをさえぎった。そして大きくて力強い青い瞳をまっすぐに俺に向けていた。

「ねえ、お願い!あなたもぜひドッヂボール部で一緒に汗を流しましょうよ!!部員も優しくて良い人ばかりだし、絶対に楽しいから、ドッヂボールで青春しましょうよ!!」

 俺は後にキャサリンという名前だと知るその女性の瞳を見つめたまま、しばらく立ちすくしていた。その美しい瞳に俺のハートは一瞬で打ち抜かれていたのだった。血液が熱湯のように体中をめぐるような感覚だった。これが恋というものなのか?今まで自分が恋と呼んでいた感情はすべて偽りだったんだ・・・。これこそが正真正銘の恋というものだったんだ!!ああ、なんというすばらしい感覚・・・。さっきまでの荒野の心に今では喜びの川が流れている!!歓喜のベルが世界中で鳴り響いているようだ!!鳥よ、花よ、我を祝福してたもれ!!


「もしもーし。もしもーし。どうしちゃったの?急にぼーっとしちゃって。大丈夫?」

「はっ!・・・俺、入ります!!ドッヂボール好き!!」

「本当!?やったー!ありがとう!!」

こうして俺はドッヂボール部に入ることになった。青春の1ページはこうして始まった。

(続く)


ワイルドサイド石井の自由帳-噴水