先日,治療相談にお見えの乳がん患者さん.
がんが見つかってから3つほどのがん専門病院を受診した.
病院を転々と受診したのには理由がある.
抗がん剤治療に抵抗があるので,まずは手術をしてほしいと
外来担当医に伝えるも,いずれも治療は「化学療法→手術」
の一点張り.この治療以外を望むなら治療はしないと,
3つすべてのがん専門病院で“お断り”された.
術前諸検査・画像を見る限り病期IIA〜IIBといったところか.
まぁ「化療療法→手術」がスタンダードなのであろうが,
一昔前はそのまま手術という時代もあった.
患者さんが,化学療法を希望しないというのであれば,
まずは昔ながらの切除術を行い,その後はその後で考えて
いく,というやり様も,患者さんによってはアリだろうに・・
知人外科医も同じように考えるだろう.
国立がんセンターの関連HPには,
『患者と医療者が,診療ガイドラインを1つの判断材料として
活用しながら,「一人ひとりにとっての最適な治療」を一緒
に考え,コミュニケーションを取っていくことが大切です.』
と謳ってるが,本件に関しては,コミュニケーションの形跡が
つゆとも感じられない.
とはいうものの,それに対して憤(いきどお)りは全くと
言っていいくらい沸かない.まぁ,がん専門病院ってこんな
とこあるよな,と思うくらいか.ww
標準治療って,医者が納得するにはいいのだけれど,
必ずしも患者さんを納得させられるものではない.
患者さんのニーズ・希望に合わせて,落とし所を探るのも
がん医療のあり方であろうと思うのだが.
その後,患者さんは,とある民間病院の乳腺科に
たどり着いた.
患者さんの希望を汲んで,抗がん剤治療なしでの切除を
快く引き受けてくれたらしい.HPで確認したが,きちんと
したキャリアを積んだ外科医なので心配ないだろう.
がん専門病院の利点はもちろん多くあるわけだが,
こういった話を聞くと,民間病院は民間病院で
柔軟性があっていいよなぁ,と思う.
がん専門病院に柔軟性を求めるのも酷な話なので,
逆に患者サイドが柔軟になって,
がん専門病院=立派な「看板」=絶対的安心,という
考え方を改めて医療機関の選択をしてみるのもお勧めだ.
実は,近所の民間病院にあなたにビッタリの隠れた名医が
いたりするのだよ.
ちょっと前の記事です.
ご興味のある方はどうぞ.