「和を以て尊しとなす」は人間社会だけの話ではなく,
どうもがん細胞たちの“社会”でも同じのように見受けられる.
そもそもがん細胞は,周りの迷惑そっちのけで細胞分裂を繰り
返し増殖する・・・という「自己中心的(以降:自己中)な
存在なわけだが,がんの塊そのものは,様々な「自己中」
連中(がん細胞の多様性の意)の「共同生活の場」と
捉えることができる.
そうすると,ここで疑問がひとつ湧いてくる.
この自己中な連中は,ナゼ互いにいがみ合わずに,
1つの「塊(がん)」として存在できているのだろう?
この問いに対して,
「自己中連中といえども,どこまでもやりたい放題ではなく,
自己中な連中は連中で,お互いのしがらみの中で生きている」
と考えるとなんとなく腑に落ちる.
つまり,自己中のがん細胞にも人間社会同様に,他の
がん細胞同士との「相性」や「好き・嫌い」があるのだろう.
「森羅万象は相似をなす」とすれば,この発想はアリだ.
ここで,がん細胞の多様性は,そのがんが発生するときの
微小循環環境に依存し,肉眼的に確認できない「ゆりかご時代」に決定付けられていると当院は捉えているため,故に
がん細胞同士の「和」が保たれた状態は既にこの時点で
発生しており,そのまま臨床がんに引き継がれることになる.
個々の患者さんでどのように薬剤を組み合わせるのが
ベストなのか?という命題に繋がっていくわけだが・・
ということで,
がん細胞個々の特徴の追求だけでなく,がん細胞同士の
相性や組み合わせのルールの追求も必要だよなぁ・・・
って思う.