当院の非常勤医師の丸山隆志先生(東京女子医大・脳外科)
の産経新聞月イチ連載・最新コラムです.(2023.11.30)
アメリカでは夜の11時ごろに時事問題をジョークや皮肉で
伝える娯楽番組があります。私が留学した1990年代後半に
デビットレターマン・ショーという人気番組がありました。
研究室の仲間から、あの番組で笑えるようになったら英語力が
ついた証拠だよと言われ、3年間見続けました。笑うどころか、半分聞き取ることすらできずに終わってしまいました。
言葉を聞くために必要な聴覚中枢は耳のそばの側頭葉にあります。耳から入ってきた音は電気信号に変換され、聴覚の中枢で
処理をされてから頭頂葉に送られます。ここで過去に学んだ音
の信号の並びや、その音に一致する意味とを照らし合わせる
作業が行われます。私たちは、耳から聴こえてくる音や目から入ってくる字の並びに見合った意味を、頭頂葉にある記憶の
倉庫に蓄えています。
語学を学ぶとは、視覚を使い文字の並び方のパターンを覚え、
聴覚として連続する音のパターンを覚えることから始まります。昭和時代の英語は、参考書から勉強する、いわゆる受験英語が
中心でした。現在の英語教育は直接外国人の発音を聞きながら、見て、聞いて、話して、書いての四点セットに改善されました。人と直接話すことでの脳へのインパクトの大きさを重視して
います。正式な文法と一般単語しか学んでいない日本人にとって、レターマンの話す微妙な言葉の言い回しや独特な単語の
使い方は知る術もありません。
外国語を学ぶにはコツがあるとか。耳から学ぶ聴覚を活用する
ことがよいらしく、外国の友人を作ることや、外国の映画を
繰り返して観ることが効果的といわれます。ただし、落とし穴
があります。耳から学んだ言葉はカジュアルな日常言葉なので、そのまま会議で使ってはいけません。正式な場所では、正確な
言葉を使用しないと、思わぬ失敗をすることがあります。