抗がん剤の効果が高まる時:1&2 | 「あとは緩和」といわれたら

「あとは緩和」といわれたら

少量抗がん剤治療(がん休眠療法)で
元気に長生きを目指す ー

1.がん細胞の生育環境:

       抗がん剤の作用の仕方から見ると,次の図に示すように

      2つに大別される.

 

 

 サイトカインは,本来は細胞間の情報交換のためのタンパク質だが,がんではその増殖シグナルとなり,また血管の拡張・新生を介して,増殖のための十分な酸素と栄養の補給を行うことに

なる(上図①)

他方,がん細胞に隣接する宿主細胞は,正常細胞の保護・活動のためのものであるが,がん細胞は,その強い働きかけによって,通常よりも手厚い保護を受けて活動しやすい,代謝的に活発な

状態にある(上図②)

 

この2つの仕組みは,本来は体の新陳代謝,つまり古い細胞に替えて新しい細胞を補充するためのものなのだが,がん細胞はこれを悪用してその数を増やしてくる.

 

 

2.抗がん剤の必要条件:

 がん細胞の生育環境が上のように2つに大別される時,その

いずれかに打撃を与えるものが薬となり得る.この仮説に

従って,今手にしている抗がん剤を区分けすると,

 

①    サイトカイン性増殖環境を阻害するのは分子標的剤

 (特定の生体分子に結合する薬)

②    宿主細胞性生活環境を阻害するのは化療剤
 (化学物質が薬の場合)

 

・良性疾患では,リウマチ性疾患でメソトレキセートと

 エンドキサンがこの例となる.

・悪性疾患,がんにおいては,化療剤は同時に隣接するがん細胞
    を傷害してがん治療効果に繋がる.

 

ここから外れる抗がん剤としては,インターフェロン,IL-2,

ピシバニール,レンチナン,ベスタチンが挙げられる.

この中で,インターフェロンとIL-2はがん細胞を傷害すると同時にサイトカインとして宿主細胞に働きかけるので,機能的には

化療剤と類似である.

 

他方,ピシバニールとレンチナンは,がん細胞を傷害することはない.この2剤が開発された当時は,免疫を含めて,体の持つがんを制御する力を高めるための薬剤(BRM:Biological Response Modifier)の研究が盛んであって,これら以外にも

多数の候補物質が検討されたが,成功しなかった.ここに残った2剤とも,臨床においては化療剤との併用使用となっていることは,結果としてがん治療においては,がん細胞を直接に傷害する要素がないと効果に結びつかないことを示している.

(レンチナン,2022年発売中止)

 

(文責:片岡達治)