先日,当院のがん薬物治療担当顧問の片岡達治博士より,
『書籍改訂版を出すことがあれば,この内容を“文責・片岡達治”
で巻末にでも載せて下さい』原稿が送られてきた.
書籍の改訂版は先々,検討はしているものの,今のところ何時
になるやら全く不明.かと言って,せっかくの原稿を私一人で
温めておくのももったいない・・・
ということで,片岡博士の了解を得て,数回に分けてブログで
掲載することにしました.
内容は,一般読者と一般診療の先生方(Oncologist以外)に
抗がん剤全般への理解(毒物的)をあらためてもらいたいと
いう観点でまとめたものであり,細部では,片岡博士の今の
時点での主張が入っているとのこです.
【片岡達治博士・経歴】
1965年 東京大学薬学部卒業
1970年 米国ワシントン大学医学部薬理学科
1972年 米国ウィスター研究所
1973年 癌研究会癌化学療法センター
1978年 癌研究会癌化学療法センター主任研究員
2004年 陳瑞東クリニック顧問
2008年 銀座並木通りクリニック顧問,現在に至る
・日本癌学会 功労会員
・Member of American Association for Cancer Research
薬学の基礎学問から基礎研究・開発,臨床まで・・・・
今後のがんの臨床の現場に真に必要とされるのは,
生理学,薬理学に精通し,かつ独創的な発想力を持つ
薬学専門家ではないかと思っている.
当院の場合,片岡博士の代わりは利かないが,
私のようなフツーの医者の代わりはなんとでもなるだろう.
では,
『抗がん剤の効果が高まる時:文責・片岡達治』
序文より始まり〜デス.
序文:
がん以外の病気では,薬は大部分の患者さんで効く.それは
病気を正しく理解し,それに基づいた薬の設計と適切なスクリーニングモデル(活性を測定するための実験モデル)が用意されたからである.
これに対してがんでは,薬が効く患者さんは少数派である.
これを克服すべく,近年分子標的剤が開発されてきた.当初,
その試みは成功するかのようにみえたが,患者さんの数が増加
するにつれて,その規制枠にあてはまっているのに無効となる
場合,逆に規制枠に入っていないのに有効となる場合が生じて
きた.結局のところ,がんという病気の正しい理解が欠けた
まま,60年間にわたって薬の研究開発を勧めてきたのかもしれ
ない.
これらの新薬開発のために,またいま手にしている抗がん剤
の力を100%発揮させるために,薬の視点から見るとがんはどんな病気に見えるか,再考してみたい.がん,あるいはがん患者
さんへの対応を適切に行うために,参考までにご一読下さい.
(文責:片岡達治)