予後調査の電話 | 「あとは緩和」といわれたら

「あとは緩和」といわれたら

少量抗がん剤治療(がん休眠療法)で
元気に長生きを目指す ー

都内のブランド病院で,肺癌の手術をしたのが10年前.

その2年後に肺転移・脳転移出現.

当時は,まず白金ベースの標準抗がん剤治療を導入し,
効果の見られない症例に分子標的治療薬の
イレッサを導入しようかという時代.

患者さんは,先行する白金ベースの標準治療を希望しなかった

ため,“治療の順番”という標準治療の“決まり”を恭順できない

患者となり,ブランド病院とはその後疎遠になる.

行くあてもなく彷徨っているうちに,縁あり,当院へ.

当院では
・イレッサ導入(ファーストチョイス&投与量を調節)
・脳転移はガンマナイフで対応
・イレッサでコントロールできない肺病変は
 放射線照射で対応

の治療方針をとり,なんやかんやで丸8年が経過した.

さて,そのブランド病院から,先日電話が来た.
予後調査目的の電話である.

治療成績を把握するための個々医療機関の重要な作業だ.

手術から10年,再発から8年.

医師 :『その後如何でしょうか?』
ご家族:『おかげさまで,元気です』
医師 :『・・・えっ?(ホントに?)』

 

電話の向こうで驚いている.

まぁ,そうだろう.
“おかげさまで”と言われても,自分たちは何もしてない.

死亡日を聞き出す目的の電話が
予想外の展開だったということだ.

『一回,外来に来てください,といわれたので予約しました』
とご家族.

『貴重症例と思っているのなら,患者さんを呼び出すのでは

なく,自分から出向けよ』と内心,思わなくもないが,

『まぁ,元気な顔をしっかりと見せてきてあげなさい』
と送り出す.

外来診察室でどのような会話が広げられるのであろう.
なんとなく楽しくなり,一人にんまり.


★文責:銀座並木通りクリニック 三好 立
    
http://www.ginzanamiki-clinic.com