「キングコング対ゴジラ」のゴジラでの最も特徴的な動きはこれだろう。
当時のプロレスラー豊登が手のひらで脇を叩いて「パコンパコン」と音を出す威嚇動作の真似だと言われるが、よく見れば
それとは随分異なる動きである。
見ての通り、動作としてはむしろ「拍手」だろう。爪と爪をぶつけてボコボコと打撃音が鳴る。
自然界においては、鳥が翼同士をぶつけるwing clappingが知られている。
この「拍手」は「キングコング対ゴジラ」で再三見受けられるが、後の「地球最大の決戦」と「南海の大決斗」でも類似した演技が見られる。
しかし、この二つの動作は、「拍手」ではないだろう。爪同志をぶつけるという内旋の動きはない。
「キングコング対ゴジラ」の場合、水平に近い肩の内転であるが、「地球最大の決戦」と「南海の大決斗」の場合は、垂直に近い肩の内転になっている。
この同じ演技への解釈の違いは、演技者が異なることを示していると考えられる。
「地球最大の決戦」と「南海の大決斗」は中島春雄なので「キングコング対ゴジラ」のこの演技は手塚勝巳と推測する。
「南海の大決斗」ではもう一つ、ラストで海に飛び込む前にゴジラが両こぶしを2度ぶつけるカットがあるが、これはもう中島が独自に発展させたものだろう。
参考 中島春雄のジラース