幻想雪恋歌 6 | The Lilies And Roses

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自由にのんびりと書きたいお話を載せていきたいと思います。
Laylaの完全自己満足&文章力UPの為の修行場です(´∀`)




歌う事がこんなに気持ち良いだなんて…

そんな経験初めてだったわ――…。


カイン兄さんと瞳だけで愛を語り合って

最高のエクスタシーを感じる…特別な感覚……。

歌を唄っている間は完全に雪花が私に憑依したの――…。


幻想雪恋歌 6 ~TRAGIC LOVE~


暫くの間 バンドの練習に夢中になっていた私達は、遅い晩御飯を食べた後…ソファーでまったりとした時間を過ごしていた。

カインが雪花を向き合うように膝に乗せて抱き締めた状態で落ち着いている。

しかし…実は先程まで “腹は減っていない”と食事を拒否しようとするカインに、雪花である私は手を焼いていた。


…もう…兄さんったら……。

あんなに食事で甘えなくても…普通に食べてくれればいいのに――…。

ソファーの上でセツを抱っこしながら…その彼女が食べさせてあげないと何もご飯食べないなんて…!

カイン丸のようになられたら弱いのよ…!雪花さんは――…。

「…ふふふ……っ」

とてもその手を焼くカイン丸が可愛かったので…敦賀さんの逞しい胸の中に頬を埋めたまま、私は思い出し笑いをしてしまった。

しかし…雪花が突然笑い出してもカインの反応は何も無く、私を抱き締めた状態のまま無言でいる貴方の態度に私の心は落ち着かない。



どうしよう…敦賀さんの胸の中って…いつもこんな感じだったっかしら…?

それとも…歌の時と違って私が今 集中出来なくて雪花になり切れていないから…こんなにも動悸が激しくて落ち着かないの…?

「………………………。」

それにしても…ギターを弾く敦賀さん…格好良かったわね……。

もし…あれで歌まで唄い出したら…どんな感じになっちゃうのかしら…?

もう…私…唯でさえ敦賀さんの麗しい美声に弱いのに――…。



「………………………/////」

その姿を想像してみるだけで自分の動悸が益々激しくなりそうになった私は、考えるのをやめる事にした。

そして…ずっと静かになったまま動かない兄さんの事が気になり出し、私は彼の胸に蹲っていた自分の顔をそっと少し離して、その様子を見てみると…敦賀さんは顔を少し下に傾け瞳を閉じていた。

あれ…敦賀さん…さっきから無言だなぁと思っていたけれど…もしかして眠っちゃってたの――…?

「………………………。」

いつも分単位でスケジュールをこなしている忙しい人だから…疲れていたのかもしれないわね…。

それに…昨日も夜遅くまで撮影してたって言ってたし。

普段 間近で見る事の出来ない敦賀さんの顔を…ドキドキしながら私はじっと見始めた――…。

伏せられた睫毛はとても長く…鼻筋は良く見てみると、まるで西洋人のように高い。

唇も綺麗な形をしていて、暫くその魅力的な唇をじっと見つめていると何だか急に恥ずかしくなり、私は顔を真っ赤に染めてしまった。

もう…今日の昼間…モー子さんってば…ラブシーンの相談をした時、私に変な事を言うから――…!



“敦賀さんに相談して演技練習させてもらっちゃいなさいよ――…。”



演技練習って…!

そんな事…相談出来る訳ないじゃない――…!!



「………………………………………//////」

…この唇と…私の唇が…合わさるの――…?

そう考え始めると…どうにかなってしまいそうなくらいに自分の身体の熱が上がっていくのを私は感じていた。

同時に自分の心臓の鼓動も煩く鳴り響いていくのが聞こえてくる。



今なら眠っているから…ちょっと試しに触ってみても大丈夫よね――…?

緊張しながら…そっと敦賀さんの唇の方へ静かに手を伸ばしていった。

先程から煩く鳴り響いている自分の心臓の鼓動は、益々激しく…速く刻み始めていく。

そして…彼の顎に静かに手を置き、親指でその唇にそっと触れてみると…
弾力はあるけれど自分の想像よりもそれは柔らかかった。

その敦賀さんの唇を、私は見つめながら親指でなぞっていく――…。

すると…次の瞬間 敦賀さんは瞳を開き、そのまま私の手を優雅に掴むと…手の甲に甘いキスを落とした。

「きゃああぁぁぁっ…!////」

完全に寝ていると思い込んでいた兄さんの突然の行動にとても驚いてしまいセツの仮面が剥がれ…思わず私は彼の手を払いのけてしまった。

あ…っ!!しまったわ…!////

そう思い…恐る恐る兄さんさんの顔を紅く染めたまま上目使いでちらっと見てみると…彼は無表情で目を逸らし、大きなため息をついた。

…ど…どうしよう…敦賀さんにダメ息つかれちゃった……。

「…に…兄さん…起きてた…の…??」

「…あぁ…目を瞑っていただけだ……。」

「そそ…そう……////」

私は何とか雪花としてその場を乗り切ろう…と兄さんに声を掛けてみたものの…動揺してその後の言葉が続かず…

そして…10秒ほど沈黙が続いた後に…敦賀さんが静かに口を開いた。




「…………………………。最上さん…」

「…………………。はい…」

私…敦賀さんに呆れられちゃった…?まとも雪花を演じられなくて――…。

“最上さん”と呼ばれた事はヒール兄妹の演技終了を意味し、演技について厳しい意見を言われる…と私は覚悟を決めた。



「…気になって…集中出来ないんだろう…?」

「…はい…?」

「……今回の映画に…ラブシーンがあるから――…。」

「………………………!」

…敦賀さんやっぱり気付いていたのね――…。

私がお子様で…何も経験がなくて…不安に思っている事に――…。

何て応えたらいいのか分からなくなり…思わずその場で私は涙ぐんでしまった――…。

「……………っ あの…私…どうしたら…いいのか…」

「………………………。」

するとそんな様子の私を…貴方は少し戸惑いながらも落ち着かせるように頭をそっと…そっと優しく撫でてくれた。


「………………………。」

「…君が不安に思う気持ちはよく分かるよ……。俺も…不安だから……。」

「………………え…? そうなんですか…?」

敦賀さんも不安なの…? 私だけではなくて――…。

「…………うん。実はそう感じてる…。」

そう言うと貴方は眉間に少し皺を寄せ…複雑そうな表情をしながら私を自分の膝の上から降ろし、一回ちゃんと横に座らせた後、両腕をしっかりと胸の前で組んだ。

「正直…キツいんだ…その…最上さんとの…ラブシーンは……。」

その言葉に私はショックを受けた…。ショータローに捨てられた時に“地味で色気のねぇ女”と言われた過去のトラウマが蘇ってくる。

「………………………。」

今にも震え出しそうなくらいに弱々しく切ない声で…貴方に理由を尋ねる。

「…私に…色気が無くて…地味で冴えないから…ですか…?」

「俺が…君に惚れてるから――…。」

「………………え…?」

貴方は愛おしくて…どうにかなってしまいそうな程に切ない眼差しで私の頬にそっと触れた。

「…色気が無いなんて…どうしてそんな風に今も思ってるの…?毎回共演者をあれだけ虜にしておきながら…全く君は…。」

少し呆れた顔で敦賀さんはそう呟くと、深いため息をついた。私達の間に微妙な空気が流れる。

「…最上さん……。もっと君は自分に自信を持っていいんだよ…?」

敦賀さんは真剣な顔付きで私の両肩に自分の手を置くと、瞳をしっかりと合わせた。

「…俺は…今すぐにでも…君をどうにかしたいと思ってる…。でも…君を傷付けるような行為は絶対にしたくないから…必死に我慢してる…。」

「………………………っ」

その言葉を聞いた瞬間、私の瞳から涙が溢れ出し…静かに頬を伝っていった。

愛する人を見つめる切ない表情で…貴方は零れ出した私の涙をそっと優しく拭った後、その跡に甘いキスを落としていく。

「……好きだ…。好きだよ…最上さん…君の事が――…。」

そう言うと貴方大切に…ふんわりと包み込むように優しく私を抱き締めてくれた。お互いの体温が熱く上昇していく――…。

「…どうにかなってしまうんじゃないかと思うくらいに…いつも…君の事ばかり考えている……。」

少し震えたような切ない声でそう囁くと…貴方は私を抱き締める腕に力を込めながら瞳を静かに閉じた。

「…どうしたら…君は俺を受け入れてくれるようになる…?」

「…愛してる…キョーコ……。」



耳元で甘く囁かれていく貴方の情熱的な告白に…私の心の動揺も広がっていく――…。



…敦賀さん……。

そんなに…私の事を想ってくれているんですか……?

嬉しい…。私の方こそ愛しています…貴方の事を……。

切なくて…胸がどうにかなってしまいそうなくらいに――…。


だけど――…!!

その情熱的な貴方の“愛情”は

一年前までは“幼馴染みの女性”に向けられていたじゃない――…。

きっと…また一年後には他の女性に熱い恋をするのよ……。



胸が締め付けられるような切ない思いで…敦賀さんの胸のジャケットを私は握り締めた。


…でも…言えない――…。

私が“坊”だって事…知られたくない。

貴方の信頼を裏切る事になる……。

…絶対に軽蔑される――…!!

この先“後輩”としてですら…貴方の傍にいられなくなってしまう――…!!


* * *


「…だから…俺にとっても…今回のラブシーンは未知の世界なんだ……。」

「………………………。」

何も言葉にする事が出来ずに…私はただひたすら敦賀さんの胸の中で彼のジャケットを握り締めたまま貴方の告白を聞いていた。

「…好きな子と…ラブシーンを演じるなんて事…初めてだから…その…ちゃんと演じられるかどうか…とか…。」

敦賀さんは少し気まずそうな顔をしながら鏡のように映るリビングの大窓を見つめた。カインと雪花で抱き合っている私達の姿は、まるで映画の甘いワンシーンのように見える。

「だから…君がラブシーンで不安に感じている事も…俺に曝け出して…? 全てを…受け止めていきたい…。」

「まだ…撮影は始まってないし…そのシーンは物語の中盤で…まだこれから考える時間はあるから…」

「…ゆっくりと…一緒に考えていこう――…?」

そう言うと貴方は私の身体に回していた腕の力を緩め…優しく…本当に優しく私の頭を撫で始めてくれた。

「…大丈夫だよ…。きっと…良いシーンが撮れるよ…。俺と最上さんなら…乗り越えられる。俺はそう信じたい。」

神々しい笑顔で…優しい言葉を掛けながら自分の頭をそっと撫で続けてくれる敦賀さんの姿に、いつの間にか私の中の演技に対する不安も和らいでいった。

「………………………。」

「…そうですね…ありがとうございます……。さっきまで凄い不安だったのに…何だか少し前向きに考えられるようになって来ました…。」

そして…その言葉を聞いた貴方は蕩けそうなくらいに甘い表情で、私に微笑み掛けてくれたの。

「私…敦賀さんが相手役で良かったです…。」

頬を紅く染め…潤んでしまった瞳で敦賀さんの事を見つめながらそう言うと、貴方も少し照れながら嬉しそうな顔をしてくれた。

「まぁ…本音を言うと…ラブシーンまでに君と恋人になっていたいんだけどね…?俺は…。」

「………えっ? あ…あの……/////」

敦賀さんの突然の本音に私はどう反応していいか困り、恥ずかしくて思わず俯いてしまった。

もう…せっかく私の心が落ち着いて来たのに…敦賀さん…貴方は何でまたそんな心が搔き乱れるような事を言うんですか…?

「………………………。」

「…ごめんね…。いつまでも君を待ち続けるって…この間言ったばかりなのに…。また君を困らせちゃったね…。」

「今日はもう送るよ…。このまま一緒に居たら…本当にどうにかしてしまいそうだ……。」

自嘲の笑みを浮かべた敦賀さんはソファーから私を立ち上がらせると、車のキーを引き出しから取り出した。

「………………………。さぁ…帰る準備しておいで…?」

このまま貴方の甘い告白を聞いていると…何だか流されてしまいそうな気がして来た私は、その言葉に少しホッとしたけれど疑問を感じた。

「…あれ…?ですが…カイン兄さんはビール飲んでいましたよね…? 私…タクシーで…」

私がそう言うと、敦賀さんは床にカインが投げたままになっていたビールの空き缶を拾い、私に渡した。

「良く見てみて?このビール、ノンアルコールって書いてあるでしょ」

「あ…本当ですね…。」

「フフ…さすが社さん…。本当に気が利くよね。じゃあ着替えておいで…?遠慮は無しだよ…最上さん。練習に付き合ってもらったのは俺の方なんだから――…。」

「あ…はい…分かりました。それではお言葉に甘えてさせて頂きます――…。」

きちんと丁寧にお辞儀をした後、私は雪花の衣装を着替える為にゲストルームへと向かって歩こうとした。

その時…敦賀さんは愛おしくて切ない表情でそっと私の耳元で囁いたの――…。

「…今は…まだ…“先輩”のままで我慢するよ…。」

その言葉は少し落ち着いていた私の心を再び動揺させ…ゲストルームに着いてドアを閉めた瞬間、その場から崩れるように座り込んでしまった私は真っ赤な顔を手で覆い隠した。

「………………………。」

「…もう……。敦賀さんの告白を聞いていて…途中でどうにかなってしまいそうだったわ――…。」

「………………………。」

「しっかり…しっかりするのよキョーコ…!その場の雰囲気に流されたら…後で絶対傷付くんだから――…!」



* * *



本当は貴方の告白を受け入れて

いつでも抱き締められていたい――…。

ドキドキが止まらないけれど…

温かくて…心地良くて…とても安心もするの――…。




だけど…いつか捨てられるなら

“彼女”になんて私はなりたくない。

“雪花”として貴方に抱き締めてもらえる

それだけで…とても幸せで満足出来るの――…。



だから しっかりと演技を頑張ろう……。

ラブシーンも前向きに考えて――…。

生涯最高の…貴方との思い出が作れるように――…。




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