Hidden Enemy36 | The Lilies And Roses

The Lilies And Roses

当ブログはスキップビートの二次小説ブログです。
作者様・出版社様には一切関係はございません。
また文章の無断転載等はご遠慮下さい。

自由にのんびりと書きたいお話を載せていきたいと思います。
Laylaの完全自己満足&文章力UPの為の修行場です(´∀`)

~Hidden Enemy36~【第2部】アメリカ・リックとティナ編


アメリカ合衆国 西海岸 カリフォルニア州 ロサンゼルス市――…。

混乱を避ける為に深夜に近い時間に成田から飛行機に乗り…およそ10時間掛けて夕方頃に到着した。日本との時差はマイナス17時間。

ロサンゼルス空港に着いてからは長時間のフライトで疲れてぐずった娘の為に休憩と軽い観光をして、ハリウッド内の自宅に着いたのは夜遅くだった。

両親には…何回か日本で会ったけれど…俺自身は13年振りの帰宅になってしまった――…。




「キョーコーーー!!ゆりあちゃん!! 」

「お義父さん…!」

寝ているユリアを抱っこしているキョーコを クーはそのままぎゅっと抱き締めた。

「…お久し振りです…これからお世話になります…////」

そして…その後ろから荷物を持って歩いてきた久遠と、クーは目が合った…。

「………………………」

「…久遠……!!」


「…ただいま帰りました…父さん…母さん……。」

『Oh.......!!  You finally.....got home.....!』
(あぁ…!久遠…やっと帰ってきたのね…)


『Yes....Mom....Good to be home....』
(はい…母さん…。ただ今帰りました…)

『........Good to have you home...........』(…おかえりなさい…久遠…!)


久遠は少し照れた表情をし…ジュリエナは泣きながらやっと帰って来た息子の存在を確かめるかのように、強く抱き締めた。

『....I..I've been waiting for this moment...for years....!』
(…ずっと…この瞬間を待ち望んでいたわ――…。)

そのジュリエナの言葉に久遠の胸は熱くなり…そして その様子をクーは優しい笑顔で見つめていた――…。







長い…長い試練を乗り越えて…たった今…俺は漸く このアメリカの大地に戻って来た。

”敦賀蓮”で過ごす時間が長くなればなる程…”彼”と”日本”に愛着が湧いてきて…戻る決断をするのにも時間が掛かってしまった――…。

特に…大河ドラマでキョーコと演じた「源氏物語」はとても評判が良く その年の話題の作品になり、俺にとって忘れられない最高の思い出にもなった。


日本文化――…。 和の精神と思いやりの心――…。

また災害時に感じた団結力。 治安も良く…真面目な国民性――…。


そして…クオン・ヒズリに戻りたいとは思っていたものの…居心地が良くて迷っていた俺を後押ししてくれたのは…キョーコと社さんだった…。


『戻りたくなったら…何時でも戻ればいいじゃないですか”敦賀蓮”に…。』

『貴方は”クオン・ヒズリ”であり、”敦賀蓮”でもあるんですから――…。』


そのキョーコの言葉が切欠になり…俺は一度アメリカに戻る決意をした。また…社さんも迷っている間 親身になって俺の相談に乗ってくれた…。

彼は俺にとって…もうリックと同じ位に”兄”のような存在で…正直 社さんとの別れも辛かった――…。

15歳で日本に渡り…俳優を始めて気が付けば28歳…。17歳の時から11年間…俺と社さんはずっと2人で仕事をして来た。

彼のサポートが無ければ…”敦賀蓮”をそこまで続ける事は出来なかったと思う――…。

アメリカに戻る前日の晩…。俺と社さんは2人で朝まで飲み明かした。

俺のハリウッド進出を祝いながらも…”寂しくなるなぁ…蓮” と…酒に酔いながら今までの思い出を語り涙を流した社さんを見た時は…胸が熱くなった――…。









「…小さい娘と一緒に…長い移動で2人とも疲れただろう…?今日はもう休んで…募る話はまた明日しよう?」

「これから一緒に住むんだ。いつでもゆっくりと話せる…。なぁ?久遠――…。」

リビングで軽く話をした後にクーは優しい笑顔でそう言うと…ソファーに寝かしていたユリアにそっと手を伸ばし、抱っこした。

「…大きくなったなぁ…ゆりあちゃん。…もう3歳か…!ふふ…寝顔を見ていると久遠の小さい頃にそっくりだなぁ…!」

「…俺的にはキョーコに似て欲しかったんですけどね…。まぁ…それでも我が子は最高に可愛いけど」

ユリアの髪は久遠似の見事な金髪で、瞳は薄茶色をしており…寝顔は本当に久遠によく似ていた。

「今日はこの可愛い孫娘と一緒に寝てもいいかな?キョーコ…」

「それはいい考えね!!私もそうしたいわ…!こんなに可愛いんだもの…!!」

ジュリエナは優しくそっとユリアの頭を撫でた。久遠似のユリアはジュリエナともよく似ている。

「ええ…もちろん…! それでは是非今晩はユリアをお願いします…!」

そうして…キョーコと久遠は娘を2人に任せて、今晩はもう休む事にした。


「…キョーコ…明日は…リックのお墓に行こうと思う――…。」

2人の新しい寝室のベッドで…久遠は少し不安そうな表情で静かにキョーコにそう言った…。

「ええ…。いよいよですね…ちゃんと…アメリカに戻って来た事を伝えに…一緒に行きましょう――…。」

キョーコはそう言うと…不安そうにしている久遠が寝付くまで…彼の頭をそっと優しく撫でていた――…。




* * *



そして深夜3時過ぎ…。久遠は悪夢にうなされていた――…。

「...Unforgivable...」 (…許さない)

「...I won't forgive you until the day you die.」
(…アンタなんて一生 死んでも許さない)

「Why? Why does Rick have to be the one to suffer?」
(どうして…っ リックがこんな目に遭うのよッ!!)

「This is all your fault...!!」
(悪いのは全部アンタなのに…!!)

「If only you didn't exist, then, Rick wouldn't have to suffer...!!」
(アンタがいなければ リックはこんな目に遭わなかった…!!)


「You murderer....」
(人殺し…っ)


「―Murderer!!!! 」 (――人殺し!!ムゥドゥルゥァ~)



* *


「…はっ……!! 」

飛び起きた久遠は…ベッドから降りて近くのテーブルに置いてあった水を一気に飲み干した。

「…はぁ…っ はぁ…っ ……………………」

「…………っ ……………………。」


…久し振りに…リックが死んだ時の…夢を見た――…。

ティナ…。今…一体君は何を考えて…生きている――…?


「…大丈夫…?久遠さん――…?」

キョーコはうなされて目を覚ました久遠の顔を心配そうに見つめた。

「………………………。キョーコ…?起きてたの…?」

「えぇ…。何だか…疲れてはいるけれど…時差ボケのせいか…全然寝付けなくて…。久遠さん…うなされていましたけど…」

「………リックが死んで…ティナが…泣き叫んでいる時の…夢を見た…。」

「…………………。そうでしたか――…。」

微かに震えている久遠の身体を、キョーコは優しく包み込むようにして抱き締めた。




その後…暫くして久遠が落ち着いた頃、キョーコは自分のバッグからリックの時計を取り出し…彼の腕にそっと着けた。

「…あ……リックの時計――…!」

「えぇ…。これ…返しておきますね…。」

仕事中は着けておく事が出来ないその大切な時計を、引越し準備中に失くさないように…久遠はキョーコに預けていたのだった。

そして…久遠はその時計を大切そうにじっと見つめていると…ある事に気が付いた。

「………………………。時間が…動いてる――…?」

「そうです…。時間は…常に未来に向かって動いているんです…。いつまでも…止まったままの感情も…無いと私は思うんです…。」

「……………ティナさんにとっても――…。」

…いつまでも…止まったままの感情は…無い…?

「…ティナさんには…ティナさんなりの色々な”想い”があった筈なんです。”13年間”という時の流れの中で――…。」

「今…彼女が一体何をどう感じているかは…私には分かりませんが…。辛い思い出だけではなくて…前向きに生きてくれていれば…と思います…。」

「…ですから…”時”は常に未来に向かって…動いている…という事を貴方に感じ取って欲しくて…修理に出してしまいました――…。」




…ティナには…ティナなりの”13年間の想い”か――…。 

確かに…時間は…止める事も…巻き戻す事も出来ない…。

どれだけ苦しんでも…時は常に未来へ動き続けている…。

―――生きている限りは―――…。



…ティナ……。

君はこの13年間…何を想って生きて来た…?

一度…しっかり彼女と向き合わなければならない

その”時”が…訪れようとしている―――…。





web拍手 by FC2
スキビ☆ランキング

(※仲.村.佳.樹先生作 ス.キ.ッ.プ ビ.ー.ト28巻P61~63引用)