Hidden Enemy37 | The Lilies And Roses

The Lilies And Roses

当ブログはスキップビートの二次小説ブログです。
作者様・出版社様には一切関係はございません。
また文章の無断転載等はご遠慮下さい。

自由にのんびりと書きたいお話を載せていきたいと思います。
Laylaの完全自己満足&文章力UPの為の修行場です(´∀`)

※これからハッピーエンドに向けて”久遠とティナが心の闇、傷を乗り越えていく”というのがテーマになります。

中には”リックの死”に対して重たくて辛い部分も出て来ます。注意してお読み下さい。




静寂な暗闇の中

動き出した未来への針の音を

そっと耳に当て 聴きながら

三日月をぼんやりと眺めていた―――…。



* * *



「…時差ボケで…寝付けないな…」

リックの腕時計をキョーコに着けてもらった後、2人は再びベッドに横になったが…なかなか眠れずにいた。

「うん…私も……。」

「………………………。この家に居ると…リックの事を思い出す…。両親よりも…リックと一緒に過ごした時間の方が長かったから…。」

キョーコは数年前に久遠がリックの事を告白してくれた時の事を思い出していた。

「…本物の兄弟のように…一緒に育ったって…言ってたよね…」

「うん。いつも…リックと一緒だった…。家が隣だったから…。親が留守がちで…寂しい思いをしていた俺の傍に居る約束をしてくれた――…。」



―俺が5歳くらいの頃――…。

「う…っ…うっ…ふぇ…っ…どうして父さんも母さんも…ずっと家にいないの…?…さみしいよ…!」

あの時は…2人とも海外ロケで二週間くらい家を空けていた…。

『あぁ…クオン…お前さみしいんだな…おいで。こっち来てクーのビデオ一緒に観よう』

『…なぁクオン。クーもジュリも…ほとんど家にいなくてお前はさみしいだろうけど…でもこんなカッコイイ仕事をしている親がいるお前を、オレはうらやましいと思うぞ…?』

『最高にクールで…尊敬できるじゃないか…!家にいない分は…オレが代わりに一緒にいてやるから…』

『だから…泣かずにクーとジュリを応援してあげようぜ…?それなら少しはさみしくないだろう…?』

「…本当…?…リック…!」

『もちろんだ…!…約束してやる…!!隣の家だし…すぐにいつでも来られる!!』


* *

「………………………。優しい…頼りがいのある”お兄ちゃん”だったんですね…貴方にとって――…。」

「…うん…とても…。」

それからは…2歳年上の彼の後ろ姿をいつも追い掛けていた…。


* *

俺が8歳の頃…。リックの家族と俺は一緒に旅行に出掛け…その旅先で俺達は喧嘩をした――…。

…原因は同じホテルに宿泊していた他の子とリックが仲良くなって…2人だけで楽しそうに遊んでいたからだった…。

「何だか…とても悲しかったんだ――…。」

その”友達”はリックと同い年で…2歳年下の俺には仲間に入りにくい雰囲気があった…。

嫉妬して…拗ねて…喧嘩した後…俺は彼のお祖母ちゃんとホテルの部屋に閉じこもっていた…。

そして…その後 暫くすると…リックは俺が閉じこもっていた部屋にやって来た。

『…悪かった…久遠…。俺は別に…お前にイヤな思いをさせたかった訳じゃなかったんだ――…。』

「………………………。」

『手…出して…久遠――…。』

そう言うと…リックは綺麗な2つの碧い石を俺に見せた後…そのうちの1つを俺の手の平にそっと乗せた…。

『…おじいちゃんが買ってくれたんだ…。俺ら2人にって…。』

リックとお揃いの…”アイオライト”の石――…。

そして…その石を2つ…太陽にかざしながら…ある”誓い”をした…。

「うわぁ…太陽にかざすと…本当に綺麗な紫色に光るね…この石…!」

『うん…。2つ並ぶと更に綺麗で神秘的だな――…。』

『なぁ久遠…この石…俺達の”親友の証”にしようぜ…?他の…誰と遊んでいても…俺にとって”1番の親友”はお前だからな――…。』


* *


「………………………。そんな大切な”親友の証”を…貴方は…”少しでも悲しみが減るように”って…私にくれたんですね――…。」

久遠は優しく微笑みながら…キョーコの頭をそっと撫でた…。


* *


キョーコと日本で出会って…それから1ヶ月が経った頃――…。

『久遠…そういえば…最近お前…あの石持ち歩いてないよな…。前までは必ずポケットに入れていたのに…。』

『………………………。まさか…失くしたのか…?』

「………………………。リック…。怒らないで聞いてくれる――?」

俺は…京都で出会った女の子と別れる時に…悲しんで泣きやまない彼女にその石を渡した事を伝えた…。少し…申し訳なさそうに…。

『それで…?だから…あげたのか…?俺達の”親友の証”を…?』

「…ごめんリック……。あの時は…それしか思い付かなかったんだ…。でも…あの子に渡した事を…後悔はしていないから――…。」

『へぇ…?あれだけ大切に…”お守り”のようにしていた石を彼女にあげて…全く後悔していないんだ…?』

「…うん…。後悔はしていない…。あの時…キョーコちゃんに…持っていて欲しいと思ったから――…。」

すると…リックは俺の顔を覗き込んで…ニヤリと笑った。

『………お前…。もしかして……。惚れたんだろ…?その”キョーコちゃん”って子に…?』

「………………………?”惚れる”? それって…どういう事をそう言うんだろう…?可愛いなぁ…とは思うけど」

『ふふ…。まぁいいさ……。また…いつか彼女に出会えるといいな…?』

『…なぁ…妖精コーン君―――…?』

そう言いながら…リックは優しく微笑んで…俺が”親友の証”を手放してしまった事を許してくれた――…。


* *


「…今思えば…リックの言っていた事は間違っていなかった…。俺にとって…”キョーコちゃん”は初恋の女の子だから――…。」

「………………………//////」

キョーコは恥ずかしくなって…久遠の胸元に顔を埋めながらも…嬉しそうに微笑んでいた。


* *


そして…俺が13歳の頃――…。

『久遠…紹介するよ…。俺の大切な恋人の…ティナだ――…。』

その後は…3人で居る時間も増えたけど…俺とティナは喧嘩をする事もあり…その度にリックは頭を抱えていた。

『あーー全く!!お前ら仲良くしてくれよ…!また何かあったのか…?』

『…だって嫉妬しちゃうんだもの…!リックってば…いつも…いつも久遠の事ばかりで…!一体どっちが貴方の恋人なのよっ…?』

「………………………………////////」

『…って…!何 照れながら嬉しそうに笑ってるのよ久遠…!!』

「いやいや…笑ってないって…。ごめん…俺…気が利かなくて…。ティナは俺にヤキモチ焼いてたんだね…。これからは2人の時間…楽しめるように気を付けるからさ…。」

『本当に…?久遠…?そう…分かってくれたならいいの…。』

『ん~?俺そんなに久遠の事ばっかりだったかな…。俺の方こそごめんな…ティナ…。』

リックもティナの気持ちを理解して…それからは3人でいる時も仲良く楽しい時間を過ごせるようになった――…。

『…なぁ久遠…。お前も…そろそろ大切な恋人作れよ…。人生変わるぞ――…?』

「ん………。考えてみる―――…。」


* *


また…初めて”マウイオムライス”を作った時――…。

リックに”魔法”を掛けてもらい…俺は自分の皿に盛られた石炭のような”怪物”と戦っていたが…実は…その”怪物”はまだフライパンに後1人前くらい残っていた…。

『うわっ…!久遠……!!ここにもまだ石炭オムライスが残ってるじゃないか…!』

「…………………………………………。」
(↑既に死神のお迎えが見えかけ状態の久遠)

『おぉ…大丈夫か…久遠……?』

「…………………………………………。」

『…大丈夫じゃ…なさそうだな……(汗) …仕方ないなぁ…俺も一緒にその”Charcoal Monster”(石炭怪物)と戦ってやるよ…!』

その日…俺はリックの力も借りて…自分の中の”チキン(弱虫)”を最期まで何とか喰らい尽くした――…。

『ははっ…!やったな久遠…!何とか喰らい尽くしたな…俺達…!強烈な敵だった…』

「…………………………うん…。…………うっ…!」

『ははは…まだ怪物がお前の腹の中で暴れてるじゃないか…!負けて吐くなよ~!ちゃんと自力で消化しろ』

いつも…どんな時でも…リックは常に俺の味方であり…最高の”親友”だった――…。


* *

「ふふふっ…!石炭って……!元祖マウイオムライスは…昔ダークムーンの時に作った物よりも遥かに強烈だったのね…!」

「…実は…かなりアレでも”元祖”よりかはマシな出来具合だったんだよ――…。」

”それでも十分に怪物でしたけど…”とキョーコは心の中では思いながらも…あえて口には出さずに、久遠の話の続きを聞く事にした。


* *


15歳の頃になると…俺は…自分の夢を邪魔しようとする奴らと喧嘩が絶えなくなっていった…。

『何だぁ…クオン!お前また奴らと揉めたのか…?傷だらけじゃないか…!!来いよ手当てしてやるから…。』

『…なぁクオン…お前もう…あんな奴ら相手にするな。結局奴らは…容姿が良くて演技の実力もしっかりとある上に、両親がスターのお前に…嫉妬しているだけなんだから…』

『相手にするだけムダだ…。お前は…本当の”お前自身”を見て…接してくれる人間だけと付き合っていけばいいんだよ。』

『…なぁ…そうだろ…? …クオン・ヒズリ――…。』


* *



そして…あの…事故が起きた時――…。ティナの叫び声が…頭のどこか遠くで…鳴り響いていた…。

『アンタになんか関わらなきゃ…リックは死なずに済んだのよ!!』

『人殺し…っ リックの代わりにアンタが死になさいよ!!』


『―Murderer!!!! 』 (――人殺し!!ムゥドゥルゥァ~)

俺は…ただ呆然と立ち尽くしている事しか出来なくて…。その間にも…リックの血は…無惨にも…ずっと流れ出ていて――…。

救急車が到着した頃には…もう既に手遅れで…手の施しようが…無かった――…。

その後 搬送先の病院で…変わり果てた姿で全く動かない…リックの身体と…その横で泣き崩れるティナの姿を目の当たりにして――…。


* *


「…俺は……俺は――……!」

「………久遠さん…!何も無理してそこまで…話そうとしなくても――…!」

キョーコは震え始めて冷たくなっていく久遠の身体をぎゅっと強く抱き締め…泣きながら口を開いた。

「…いや…キョーコには…全てを知っていて欲しかったんだ…。辛い話だけれど…この先…未来に向かって…生きていく為にも――…。」

久遠は…リックの形見の腕時計を右手で包み込むように…強く握り締めた…。


* *


…あの後…俺は…ふらふらと…病院を後にして…当てもなく…彷徨い歩いた――…。

まるで俺のその時の心情を表すかのように突然降り出して来た…激しい雨に打たれながら…。

ティナの言葉を思い出して…いっそこのまま朽ち果てて消えてしまえばよいのに――…と心の中でそう願った…。

その後は記憶が無く…気が付けば…数日間経っていて…俺は自宅のベッドで点滴を打たれて寝かされていた…。

父さんが…降り頻る雨の中、友人に協力してもらって俺を捜索してくれていたらしい…という事は後から知った…。

「…………………………。父さん……俺――……。」

「……………久遠…大丈夫…大丈夫だ…。だから今は…取り合えず今は…まだゆっくり眠りなさい…。身体が弱っているから――…。」

父さんと母さんは…泣きながら俺の手をぎゅっと握り締めて…心配してくれていた…。

「………………………………………………。」

そして…医者が俺に何か注射を打ち…また暫く眠りに入って…普通に起き上がれるようになったのはそれから更に数日後だった――…。

ふと…目が覚めた俺は…近くのテーブルの上に…”リックの腕時計”が置いてあるのを見つけた…。

父さんが…リックの家族から形見に…と譲ってもらったらしい――…。



* *



…キョーコ……。

今まで俺は…”2時13分”で止まったままの

リックの腕時計を眺めては…その運命の”時”を…

ただ自分に対する戒めとして

忘れないように思い返すだけだった――…。



だけど…君が…

その止まったままの”時”を

また再び未来へと動かしてくれた――…。



しっかりと…もう一度 時を刻み始めた

この腕時計の 針の音を聴いていると…

何だか不思議と前へ進む”勇気”が湧いて来るんだ――…。









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(※仲.村.佳.樹先生作 ス.キ.ッ.プ ビ.ー.ト28巻P62~63引用)