※このお話は33巻からの続き未来のお話だと思って下さい。本誌とはズレが出て来ます。
次の日の朝は…キョーコが包丁でトントン…と朝食の準備をしている音で目が覚めた。
そのリズミカルな音を耳にしながら…昨日の出来事は夢ではなかったんだな…と思うと安心して…口元が緩んでしまった。
―何だか…本当に新婚みたいで――…。
「…おはよう…キョーコ……」
『きゃぁっ…』
俺はキョーコが包丁や火を使っていない隙を見計らってから…そっと彼女を後ろから抱き締めた。
『つつ敦賀さん…?!料理中は危ないからやめて下さいって…セツカの時から何回も言ってるじゃないですか…!』
「うん…分かってるよ…だから今回は抱き締めても大丈夫そうな時まで…ちゃんと待ってたよ…」
俺はそう言うと…キョーコの髪に軽くそっとキスをした。同時に彼女の顔がほんのりと赤く染まって…。
『…もう………//////』
キョーコは照れながら…身体を俺の方に向け、胸元のシャツを掴み…ぷくっと頬を少し膨らませながら上目使いで俺の瞳を見つめた。
――”もう”はこっちもセリフだよ…本当に…。いつも無意識に俺を煽るんだから…。このまま……してしまいたくなるじゃないか――…。
「…どう…身体の調子は…?もう辛くない…?」
『あ…はい…それはもう…全然…大丈夫…です…/////』
「そう…なら良かった…。」
本当に…それはとても心配だったから良かった…。
けれど…大丈夫そうなら…と俺の中でまた欲が湧いて来そうで…それはそれで少し理性を保つのが大変かもしれないなぁ…とも思う。
「何作ってくれてるの?」
『サンドウィッチと…スープですけど…材料的に簡単な物しか作れなくて…』
「いや…それで十分だよ…キョーコ…ありがとう――…。」
その後…朝食を食べた2人はリビングのソファーで寛ぎながら…ゆったりとした時間を過ごしていた。
『…そう言えば私…昨日 コーンにしっかりと羽が生えていて、青空を飛び回っている夢を見たんです…!!』
「へぇ…やっぱりそうだったんだね…?」
『…へ…?』
蓮はソファーに座ったままキョーコを自分の膝の上に乗せ、お互い向き合いながら会話をしていた。
「昨日の夜中…君は寝言を言っていたから…。”コーンお空飛んでる”って――…。」
『…そうでしたか――…。』
キョーコは少し照れながら嬉しそうに微笑んだ。
『それであの…ちょっと久遠さんにお願い事があるんですが…聞いてもらえますか…?』
キョーコが少し甘えたようにそう言うと、蓮は心から嬉しさが込み上げて来た。思わず自然と口元が緩む。
「…え…?俺にキョーコからお願い事…?」
君の方からそんな風に甘えてくれるなんて――…。
「何…?何でも言って…?キョーコの言う”お願い事”なら…どんな事でも叶えてあげたい…。」
蓮はそう言うと…自分の膝の上に乗せていたキョーコを ぎゅっと力強く抱き締めた後に、軽くキスをした。
そして蓮のその行動に…キョーコの顔は真っ赤に染まった。
『あああありがとうございます…/////…それで…あの――…。』
「うん…何…?お願い事って…?」
『…コーンに代わってもらえますか――…?』
「え…?コーンに…??」
『はい…。夢の中では逢えましたけど…もう一度ちゃんとコーンとお話がしたいんです…。』
『…久遠さんが”神の寵児”で大変な事は分かっていますが――…。』
「………………………え…?」
”神のチョウジ”? そう言えば…昨日もオーロラの時にそんな様な事を言っていたな…。
「え…っと…。”チョウジ”って何…?キョーコ…?」
『あ…っ!いえいえ何でもないんです…!それは妖精界のトップシークレットでしたから…!今の言葉は忘れて頂けますか…?』
…………??
まぁ…よく分からないけど…またメルヘン的な事なのかな…?
”神のチョウジ”か…。日本に帰ったら意味を調べてみよう…。
そう思いながら…俺はキョーコを自分の膝から降ろした後、暫く目を閉じ…”妖精コーン”を憑けてゆっくりと目を開いた。
「……………………キョーコちゃん」
『…コーン!!』
ふふ…キラキラとした瞳で…本当に君は純粋だね…。何だか…11年前の…あの夏を思い出すよ――…。
『あのね…! 昨日…夢の中で…コーンがお空を飛んでいたの…!!』
「…うん…。キョーコちゃんのおかげだよ…。」
『……私の――…??』
「うん。…キョーコちゃんが…”コーンが空を飛べますように”って…心からそう願ってくれていたから――…。」
本当に…心から”コーン”の事を心配して…泣いてくれた事もあったよね…キョーコ…。どうもありがとう…。感謝してる――…。
「だから…これからはもっと自由に…何処まででも大空を飛んで行けるよ――…。」
『…本当に…?! コーン…??』
「…うん。ありがとう…キョーコちゃん――…。」
『……………良かったぁ――…。』
何て…嬉しそうな顔してくれるの…キョーコ…。
そんな顔で…ずっと君が俺の傍にいてくれたら…この先どんな試練が訪れたとしても 乗り越えて行ける気がする――…。
蓮は”妖精コーン”としてキョーコの頭を優しく撫でながら…話を続けた。
「だから…俺は妖精の国にいても…これからはいつでもキョーコちゃんに会いに行けるよ――…。」
『本当…?コーン…?それって…この”久遠”さんの身体を通じてだよね』
ん…?身体を通じて…?
『嬉しい…コーン…!!私…待ってるから――…。』
キョーコはそう言った後…瞳に涙を浮かべながらそっと”妖精コーン”に抱きついた。
『コーンなら絶対に大丈夫だって…私…信じてた――…。』
「…………………………………………。」
「…ありがとう…キョーコちゃん…俺を信じていてくれて…。」
蓮はキョーコの言葉にとても感激をして、彼女を ぎゅっと抱き締め返し…その後 2人は暫く京都で遊んだ頃の思い出を懐かしんだ――…。
「…あの小川には平べったい石がたくさんあって…”ハンバーグ王国”を作って遊んだよね」
『あー、うん!! 懐かしい…。王国を作っている途中でコーンがすっごく大きな平べったい石を見つけて…』
「そうそう…!」
「「ハンバーグ国王様!!」」
『ふふふ…ハモったね!コーン…今…!』
あの時…”ハンバーグ国王様”に礼儀正しく挨拶をした君は…とても可愛かったな…。
そして…本当にハンバーグが好きなんだなぁ…と思わず笑ってしまった――…。
『あ…!そういえば…”国王”といえば…コーンのお父様と…美しいお母様は元気にしてる…?』
「それなんだけど…俺は旅に出ていたから…暫く会ってないんだよね」
『へええ…?そうだったのコーン…?』
「うん…。実は…まだ旅の途中なんだ…。でもやっと大空を飛べるようになったから…もうそろそろ…旅も終わりに近付いて来ているかな…。」
「…旅が終わったら…キョーコちゃんにも会わせてあげるね…?俺の両親――…。」
まぁ俺がキョーコと恋人になれた事を知ったら…飛んで来そうな気もするけど…俺がアメリカに戻る前に。
『えええぇぇぇぇーーーー!!妖精の国王様と…王妃様を紹介してくれるのーーー?コーンーー!!』
ん…?何だかもの凄い喜び方だね…キョーコ…??
メルヘンが大好きな君は…まだ少し”コーンは演技”ではなくて…”本物の妖精”だと信じていたいのかな…?
相変わらず…そんな所も可愛いな――…。
…ねぇ…キョーコ……。
俺が10歳だったあの時――…。
もし京都で君に出会っていなかったら
俺は役者をやめてしまっていたかもしれない…。
それくらい…俺にとって
あの時 ”妖精コーン”を演じた事は
俺の人生の中で大きな分岐点だった――…。
君が心から純粋に…
”妖精コーン”の演技を喜んでくれたから
役者”敦賀蓮” そして”クオン・ヒズリ”も…
これから自由に大空を羽ばたいていけるんだ――…。
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