スウエーデンの大人気ミステリー作家ヘニング・マンケルの作品ですが、この作品は、ミステリー作品ではありません。小さな島の小さな家で66歳の元外科医のフレデリックは、手術ミスをきっかけに12年にわたりほとんど引きこもる生活をしていました。冬のある日、彼に40年くらい前に捨てた恋人が訪ねてきます。
末期癌で余命いくばくもない元恋人のハリエットは、恋人だった時にフレデリックが話してくれた森の中の小さな湖に約束通りつれて行って欲しいと頼みます。かなり、久しぶりにかつての恋人と旅行に出るフレデリックですが、この旅をきっかけに彼は、過去の自分と向きあい変わっていくのですが。
初老の寂しい生活を送っている男が色々な出来事の中で変わっていく様子がきれいに描かれています。一年くらいの月日の中で色々な人物と出会ううちに段々と過去に向き合って行く姿が印象的です。また、彼に出会う人間のキャラクターや一緒に生きていたペットの存在の描き方も秀逸です。推理小説では、無くてもすごく惹きつける作品をかける良い作家と思えましたね。