バッタを倒すぜ アフリカで | ギッコンガッタン 

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日々、気の趣くままに綴る雑記帳

 

  

 

 以前に下に示すように25万部程の売り上げを誇った著作「バッタを倒しにアフリカへ」の書評記事を書きました。この時点では、まだ、彼は、研究課題に対して模索している所でした。前作から7年が経ち、大きな研究論文が一つまとまって現状についてを記した続編です。

 

 

 

 ややふざけを入れながらも分かり易く、かつ面白く楽しめて親しめる文体は、そのままです。バッタの生態を研究し、仮説を立てて検証して立派な論文として一流の科学雑誌に論文を載せるようになるまでの過程が悲喜こもごもに書かれています。そこまでの過程が本当に平坦じゃありませんので。

 

 研究内容は、バッタの繁殖に関しての事でした。つまり、オスとメスがどのように出会い、子孫を残すのかという事です。広大な砂漠のほんの一角でしかも夜間に交尾し産卵するため、フィールドワークは、想像以上に大変です。サハラ砂漠は、日中は、40℃を超える猛暑の中ですから。

 

 しかも、バッタは、いつも大繁殖するわけではなく、派手に暴れる年とそうでない年があるのですから。暴れない年には、学者としては、研究が行き詰まるのです。そんな背景の中、次から次へと襲ってくる苦難を乗り越えていく様は、涙ぐましいですが、凹みながらもすぐ立ち直り前を向ける姿勢が見事です。

 

 もちろん、ちゃんと学術的な説明を一般人にも分かり易いレベルでしっかりしています。ビックリしたのが、バッタの集団発生による害の話の為に旧約聖書の話も書かれている件でした。この旧約聖書の逸話の話し方からして分かり易く面白いのですから。本当に文章力があると思えました。

 

 ただ、本人の事もですが、今回この作品で感心したのが、彼の研究に関わったあらゆる人への感謝の念が大きく感じられることでした。特に一番の拠点であるモーリタニアの研究所で著者の運転手を含めて貢献の大きいスタッフであるテジャニについては、一章をまるまま彼の事だけ書いているくらいです。

 

 このテジャニの章は、全ての章の中でも一番に抱腹絶倒に楽しめた部分でした。運転テクニックや車の整備や料理の腕の良さや実験の補佐としても有能さを発揮する彼です。しかし、お人好しな所があり、色々とトラブルにも巻き込まれて著者がしりぬぐいする場面もありますが、著者の彼への愛を大いに感じます。

 

 最後の章は、世界的な科学雑誌に論文が載ったことへのその後の反響について書いています。自慢になるようでと言ってへりくだってはいます。だけども、私的には、想像を絶する苦労や挫折を乗り越えてきたことを考えれば、このように自慢してもいいとはお思えます。読んで前の本よりも読後感が余計に心地よく感じましたね。