三河雑兵心得: 11 百人組頭仁義 | ギッコンガッタン 

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日々、気の趣くままに綴る雑記帳

 

 茂兵衛は、徳川軍の軍制改革のおかげで、いよいよ、家康直属の鉄砲組の頭になりました。今までの三倍の人数をまとめることになりました。加増もされました。しかし、侍大将になることは、茂兵衛をやっかむ家臣に配慮してできませんでした。妻の寿美がせっかく作った馬印も無駄になってしまいました。

 

 扱いは、ほとんど侍大将クラスであり陣羽織をついに着ることとなりました。茂兵衛は、駿府の近郊で来る日も来る日も部隊の演習に勤しんでいました。茂兵衛の部下には、弟・丑松の息子の小六が加わりました。阿呆の弟に比べれば十分に頭は、使えるのですが、お調子者で軽い所が茂兵衛には、気になります。

 

 そんな中、小六が指揮する鉄砲足軽隊の中で喧嘩があり、足軽小頭が撃たれて死亡する事故が起こりました。小頭を撃ち殺した足軽は、故郷の三河の地まで逃げている所をつかまります。茂兵衛は、もちろん、私闘による殺人は、打ち首の刑となります。もちろん、その際の介錯を実行するのは、小六です。

 

 小六は、嫌がります。しかし、茂兵衛は、しっかりと手綱を占める気持ちで小六に迫ります。小六は、覚悟を決めて下手人の介錯をしっかりと出来たのです。これを機会に小六は、成長を見せていきます。そんな折ですが、真田との和平を家康は、進めることを考えていて真田親子と親しい茂兵衛を呼びます。

 

 結局、真田昌幸の息子・源三郎信之と本多平八郎忠勝の娘との縁談を進めることになります。平八郎は、家中で知らない人がいないくらいの真田嫌いです。しかも、怖さにおいては、家中一番です。家康は、直接言いにくい際の代わりとしてこの難題を茂兵衛に働きかけます。案の定、茂兵衛は、平八郎に激怒されます。

 

 ただ、殿の命だという事で結局承諾はします。平八郎の娘の婚礼の際の信州上田までの警護役として茂兵衛は、随行することになります。平八郎は、病と称して挨拶に出てきません。どこか後味の悪さを心に持ちながら茂兵衛達を含めた婚礼の列は、信州の上田城へと向かっていきます。

 

 その随行の途中で茂兵衛は、江尻城に立ち寄ります。穴山家は、嫡男が亡くなり、家康の息子を養子にしたばかりでした。茂兵衛は、二年前にも立ち寄り、その際に綾女の墓参りをしました。ただ、その際に一時は、同僚だった穴山衆が茂兵衛を無視した態度を取り綾女に似た女性を茂兵衛は、目撃しています。

 

 どこか釈然としない所もありながらも前回は、終わりました。今回は、前回にほとんど接触の無かった穴山衆で仲良くしていた有泉とも会います。そして、茂兵衛は、新しい穴山家の当主とも会います。綾女の墓参りもします。そして、江尻城も出ます。ここで綾女が生きていることが分かるのです。

 

 綾女が産後の日立ちが悪くて死んだと言うのは、八兵衛が女性ごとに不器用な茂兵衛が本妻と側室の間で困り果てるだろうと思い画策したのです。そして、綾女は、穴山家の実質の当主にして武田信玄の娘であり見性院の侍女であり、穴山家の世継ぎの乳母という役回りになっていて茂兵衛に存在を隠していたのです。

 

 さて、上田城への道を急ぐ茂兵衛ですが、その後ろを不気味な一団が追いかけます。何と花嫁の父である平八郎の一団でした。平八郎は、護衛の役目を譲れと言います。しかし、茂兵衛は、主君家康からの命です。違えることはできません。それでも引かない平八郎と合戦になりそうになります。

 

 そこを平八郎の娘は、親譲りの肝の据わった風情で一喝します。これに毒気を抜かれて平八郎は、茂兵衛の後をついていきます。上田城についてみたら、気に入らなかったら真田の婿を殺すと息巻いていましたが、存外に真田信之を平八郎は気に入ってしまい事なきを得ました。

 

  かくて、大事なお役目を成し遂げて駿府に戻ろうとする茂兵衛でしたが、小諸城主の大久保忠世に呼ばれて留まることになります。沼田をめぐる真田氏と北条氏の交渉に絡んだ件でした。秀吉の方の裁定で上野国沼田の2/3が北条領で1/3が真田領と言う事になりました。北条家も形上は、秀吉に臣従していました。

 

 この北条と真田の両者の沼田への取り引きの見届けのために茂兵衛は、交渉の場にいました。無事に儀式は、終わったのを見届け帰れると思った茂兵衛でした。しかし、真田領の名胡桃城を城主の義理の兄弟が騙し討ち的に乗っ取り、北条方に渡すと言う事件が起こります。もちろん、これは、秀吉への裏切りです。

 

 かくて、この事件の事を秀吉に奏上するため、現場にいた茂兵衛は、真田方とともに大阪へ向かいます。大阪に着いて来たもの徳川家は、北条家とは、同盟関係にあります。しかし、秀吉に臣従してもいます。この状況でこの事件を徳川家としてどうさばくのか武辺物の茂兵衛には、難しい判断でした。

 

 下手したら、自分の身が切腹どころかお家が滅ぶような一大事です。悩んでいた茂兵衛は、秀吉に臣従し徳川家の他の家臣からは、白い目で見られている石川数正に接近することを考えます。茂兵衛は、数正が徳川家の為に秀吉のスパイとして潜入していることを知っていました。数正から聞いた秀吉の腹は、とても恐ろしいものでした。果たしてっ結末や如何にです。

 

 今回は、いよいよ教科書的には、天下統一前の最後の戦い小田原合戦の手前の段階の話です。相変わらず、茂兵衛は、主命のままに駿河から信濃に上野に大阪へと飛びまわされます。そんな中で悩みながらもまた成長していく様が良く分かります。また、平八郎との対峙のシーンの緊張感も良かったです。

 

 次の巻は、いよいよ秀吉が北条氏を潰しにかかる小田原攻めです。これを読み終われば、初めて間違えて読んだ13巻と内容がやっとすべて繫がってしまいます。その上で、最新刊の14巻も手元に届きました。さて、これから茂兵衛の運命がどうなっていくのか大変楽しみになってきましたね。