三河雑兵心得: 3 足軽小頭仁義 | ギッコンガッタン 

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 三河百姓上がりの雑兵の出世物語である通称“足軽仁義”シリーズの第三弾です。本多平八郎忠勝の配下の茂兵衛は、槍足軽隊10人を率いる長である足軽小頭に出世します。しかし、そんな嬉しい知らせと裏腹に綾女に振られしかも綾女は、遠江の自分よりも格上の武将の嫁となってしまいます。
 
 どうにもならない失意の中でひょんなキッカケで綾女の旦那である武将に茂兵衛は、対面します。怒りと悲しみの気持ちを抑えつつ相手にあった彼は、思い上がったところのない好人物であるその武将の有様に毒気を抜かれ彼は、失恋の怒りと悲しみから立ち直ります。
 
 この時、武田の徳川領遠江への侵攻が強まっていきます。その中でも激戦地である二俣城に茂兵衛は、送られます。堅固さを誇った二俣城でしたが、水の供給源を武田側から切られて渇水の窮地に陥ります。そんな中で、茂兵衛は、部下の諍いにも神経を回す苦難の日々が続きます。
 
 結局、二俣城は、陥落して、茂兵衛は、新しく岡崎から徳川家康の本城へとなった浜松城に戻ります。二俣城を落とした武田信玄は、浜松城の近辺へ迫ります。籠城戦で武田軍を迎え撃つべきか、城外に打って出るかの判断に迫られます。同盟軍の織田信長からの援軍も少なく3倍はある武田軍と対峙したのです。
 
 家康にとっては、遠江は、まだ領地にして3~4年しかたっていない土地です。ここで地侍に弱音を見せられないとの判断で外に打って出るのです。世に言う三方ヶ原の合戦となります。この戦で武田軍の圧倒的な強さに徳川織田連合軍は、大変な苦戦を強いられます。茂兵衛もその渦中にいました。
 
 茂兵衛は、手負いの部下を引き連れながら武田軍と落ち武者狩りの百姓の存在にも心を砕きながらの浜松城に向けての逃避行となります。途中の道で家康の一団に遭遇します。茂兵衛の初めての主君との出会いでした。そこへかつて直属の城主だった夏目次郎左衛門の一団に出会います。
 
 家康は、夏目次郎左衛門を身代わりにして落ち延びます。かつての城主をほっておけなくて茂兵衛も夏目の一団に加わろうとしますが、断られます。そして、夏目の事も心にありつつも茂兵衛は、浜松城へと落ち延びていきます。かくて、苦労しながらも茂兵衛は、浜松城に逃げおおせます。
 
 家康は、このままの惨敗の中でも一矢を報いようと考えます。進軍を続ける武田軍の後方を襲い多少の被害を与えて逃げると言う策s年です。その大任は、徳川直参の家臣で随一の猛将である本多平八郎が務めます。配下の茂兵衛もその一団に加わります。作戦は、成功します。
 
 帰りの道すがらに茂兵衛は、武田兵に殺されそうになっている味方の武将に出会います。相手は、綾女の夫である武将でした。綾女への嫉妬の気持ちで素通りも考えましたが、茂兵衛は、綾女の夫を助けます。かなりの重傷のその武将を家に連れて帰ります。綾女と茂兵衛は、再会します。果たして結末や如何にです。
 
 相変わらず、見事な構成です。茂兵衛の実直な人柄を感じるところもですが、立場が十人の頭になった彼の気持ちの変化も見ものです。また、戦闘シーンの描写も見事です。ともかく、末端の兵の視点からの戦国時代の捉え方が見事です。考証についてもいう事ありません。今後のシリーズが楽しみですね。