三河雑兵心得: 13 奥州仁義 | ギッコンガッタン 

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日々、気の趣くままに綴る雑記帳

 

 本屋で妙に押されていたので買ってしまいました。しかし、なんとシリーズ物の最新刊の13巻目だったのです。ただ、読みだすとこれまでの話が分からなくとも楽しめた作品でした。田舎の農民出の架空の人物である茂兵衛が武士として最下級の足軽から出世していく物語です。

 

 今回は、まず、教科書的には、これが最後の天下統一の戦いとされている小田原の北条氏討伐後の時期が舞台です。主人公の茂兵衛は、小田原から高野山に向かい囚われた敵将北条氏規を届けます。その後に関東移封により移る前の自宅へと帰り、江戸への移封の準備となります。

 

 それから、2週間ほどの旅路の末に江戸にたどり着きます。まだ、徳川家の都としての開発が始まったばかりの時期の江戸にいよいよ、茂兵衛は、入ります。まだまだ、不便で慣れない江戸の町で平和の世になったとばかりにいました。しかし、ここで、家康から奥羽の戦地に行けと言われます。

 

 この当時の奥羽つまり、今の東北地方は、北条氏征伐の後で豊臣秀吉が行った奥羽仕置き、つまり、奥羽の大名の領土決めのことで揉めていました。その中で九戸政実の乱という一番の激戦地へ茂兵衛は、行くことになります。しかも、主君の家康は、茂兵衛に手抜き戦をしろとの指示でした。

 

 ただでも、これが最後の戦と言うはやる気持ちで手柄を求めている兵士に手抜き戦の指示です。自身も武辺の無骨もの故、茂兵衛は、主君との板挟みにあい大いに悩みます。もちろん、当地の敵軍も必死な気迫で攻めていく戦であり、とても手抜きどころではありません。果たして結末や如何にです。

 

 全体的に凄く親しみやすい文体です。特に主人公も含めて徳川方の人達は、話し言葉に三河弁も混ぜた表現で凄く入りやすいです。そして、かつての隠れた妾と本妻との間で揺れる茂兵衛の心などの描写が良かったです。また、武骨ながら実直な茂兵衛の人柄も伝わってきます。

 

 見ていて凄く面白くて、今回がこれまでを読んでないのに初めての人でも所どころに分かるようにまた、その部分を知りたくなるように書かれていてここまでのシリーズも読みたくなりました。また、時代背景や地理的な説明も丁寧で良かったです。まずは、ここまでの12巻を読むとともに今後が楽しみですね。