カールの罪状 | ギッコンガッタン 

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 デンマークの首都コペンハーゲン市警の未解決事件捜査部門である特捜部Qシリーズの第9弾です。元々、作者が10作完結の予定で出したこのシリーズの完結前の作品です。本国では、昨年中に最終作まで出ているとも聞いていましたので、凄く期待しました。私的には、十分その期待に応えた内容と思えました。

 

 2020年12月初旬のある日、主人公のカールの元の上司である殺人課捜査課長のヤコブスンは、市内で自殺した60歳の女性が1988年に起きた工場爆発事故に巻き込まれ亡くなった幼い男の子の母親と気づきます。カールは、その事故の捜査ファイルを見て単なる事故と思えない違和感を覚えてしまいます。

 

 事故の現場に食塩が置いてあったのです。事故現場である工場で使用するにしても置いてあるにしても無理があるとカールには、思えたのです。これをきっかけに自殺や事故死に見せかけた怪しい事件を特捜部Qは、追いかけ2年毎に疑わしい事件が発生していると結論つけて捜査を進めていきます。

 

 そして、2020年の暮れが押し迫る時期にも犯人は、2年ぶりに同じような行為に及ぶと予想し、カール達は、現実の事件にも向き合います。ここまでは、今まで通りですが、今回は、カール自身にも事件が起きます。カールが殺人課から特捜部Qに飛ばされたきっかけになった事件捜査に進展があったのです。

 

 ただ、その内容は、麻薬捜査課も絡みカールは重要参考人とされ、事もあろうにカールの部屋から麻薬と大金が見つかります。カールを信じたいヤコブスンは、心穏やかでありません。しかも、事件を追っている最中に麻薬捜査課の猟犬と言われる刑事が

追いかけまわします。果たして結末や如何にです。

 

 この作品の原題は、デンマーク語を和訳すると「塩化ナトリ

ウム」です。つまり、作者は、淡々と今回追いかけている事件に力点を置いているのが分かります。ただ、日本版は、次回作への受け止めと言う位置づけで「カールの罪状」となっています。昔からの翻訳文化の片鱗を感じさせる題名つけと思えます。

 

 今回も今までのシリーズ同様に事件に関わる人と捜査する側の人の立場に沿ってクロスオーバー的に書かれる手法は、健在です。これがあるお陰か物凄くドラマチックになるのがこのシリーズの良いところです。もちろん、個性派な面々である特捜部Qの面々との絡みも大いに楽しめるところも変わりません。

 

 事件も北欧ミステリーらしい猟奇的な内容であるのも今まで通りです。ただ、今回の状況に味付けされているのが2020年の出来事なのでコロナ禍になり一年足らずの時期でまだまだ世間の対応がヒステリックである状況が事件の捜査を妨げる記述が良く出てくるのも見ものです。

 

 もちろん、いつもながら終盤の所の事件解決へ向かう部分のスリリングな展開も健在で見所です。本当に私が読んできた海外ミステリーの中でも最高に楽しめるシリーズです。本国で映画にもなっていていくらか見て楽しむことも出来ました。だから、出来たら日本版リメイクもして欲しいですね。

 

 主役のカール役を仲村トオル、ローセ役を長澤まさみ、ゴードン役を田中直樹(ココリコ)、ヤコブスン役を小日向文世とかありかなと考えます。アサド役ですが、中近東の人間なのでこれは、人選が難しいです。顔的には、ラモス瑠偉さんのような人がはまる気はするのですが、おっと脱線しすぎました。

 

 この次が最後という事もあり、いよいよ、カールが左遷され、同僚の一人が寝たきりの障害者となり、一人が殉職したステープル釘打ち事件の全容が次回に明らかになります。楽しみではあるのですが、ここまで長きにわたり楽しんできたこのシリーズが完結になる淋しさもあります。でも、次回作が楽しみですね。