空蝉 | ギッコンガッタン 

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日々、気の趣くままに綴る雑記帳

 

 

 内の納屋にあって、何となくタイトルにひかれて買ってしまいました。若い頃に先の大戦の終戦を迎えた世代の悲哀を描いた表題作の空蝉、処女作で不倫の恋の炎に焦がれ苦しむ若い男の姿を描いた晩夏の頃など、何作かの短編集です。著者名とタイトルから、コテコテの純文学作品を思い浮かべました。しかし、かなり、バラエティーに富んだ作品ばかりでした。

 

 ひょんなことで若い男にはまっていく中年の人妻や仕事の合間に看護婦との逢引きとギャンブルに精を出す薬のセールスマン、電車の落とし物を勝手に札束と勘違いする編集者、醜男と結婚した美人を見る周囲の話、バスの中のおばさんの会話とそれを冷ややかな目で見ている男子学生の会話で占める話とか、読み易くユーモアに富んでいて楽しかったです。また、ページ内の文章も少なくて読み易かったのも良かったですね。