マン・イン・ザ・ミラー 「僕」はマイケル・ジャクソンに殺された | ギッコンガッタン 

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 このダンスしているマイケル・ジャクソン(以下、MJと略)の絵が目について思わず買ってしまいました。タイトルからMJに関わる殺人事件なのかと期待していましたが、実際は、MJのモノマネで名をはせた実在の人物をモデルにしたドキュメンタリータッチの小説でした。

 

 小説は、MJのモノマネで名をはせた主人公の男にここまでの半生記をレポーターが聞きながら、まとめている体裁を取っています。主人公の尾藤一斗は、特にとりえもない大人しい目立たない人でした。中学生時代にテレビで見たMJの姿に彼は、衝撃を受けます。

 

 一斗は、それ以来、MJのパフォーマンスをビデオをみて研究しながら彼の動きを模写しようと努めます。彼のパフォーマンスの見事さは、すぐに知れ渡り、MJを愛好する仲間が集まり、マイケルのパフォーマンスを再現するグループが結成されます。

 

 評判は、上々で、ついには、MJ本人にそのパフォーマンスは、エクセレントと最上の誉め言葉を頂けました。しかし、2009年にMJが亡くなって、一斗の仕事は、また多忙になります。しかし、そんな中、彼は、インパネーターとしての自分の存在に苦しみ答えを出すのですが。

 

 主人公がMJのパフォーマンスを徹底して再現していくことにこだわるも、周囲が自分を評価しているようにみえても、彼を通して、MJを見ていることに彼は、大いに悩むのです。この不器用なまでに愚直に芸を極めようとして周囲と衝突していく様は、凄く印象的です。

 

 ただ、そんな中でも仲間との触れ合いの中から少しずつ、主人公が自分の生きる道を見出していく様がドキュメンタリータッチで見事に描かれています。全編を通してシカゴで青年時代のにMJの全盛期を過ごした筆者のMJ愛が大いに伝わってきます。

 

 また、インパネーターという英語があるアメリカよりもモノマネが色物として軽く見られがちな日本の現状がよく分かり、もの前芸人の悲哀という事をあらためて考えさせられました。本当に面白く、読みながらMJの曲を思い出して楽しめましたね。