読書感想になります。
「生態学と化学物質とリスク評価」
内容の中盤あたりは数式がガンガン出てきます。
リスクを計算してみようっていう本なので。
最初は簡単な数式ですが、後半に進むにつれて数学が苦手な頭には難しい内容になってきます。
では、なぜ、そんな計算が必要なのか?
その説明もあるので、計算が分からなくても、解説の部分を読むだけでも損にはならないと思います。
そもそも、この本は人間へのリスク評価ではありません。
しかし、リスク評価は人間から始まったとも言えるわけで。要は公害やら薬学の世界。
それに生態学者の視点が入った話になります。
実は人間以外の、特に生物種や個体群への化学物質のリスク評価は、まだまだ黎明期で。きちんとした手法が確立していないと言う話。
尚、後半が何故、複雑になってくるかというと、金属の影響や、化学物質の複合影響について計算してみよう!という話になってくるからで。
金属は、環境中の濃度がそのまま体内に入ってくるわけではないって話で。イオンやら化学の話も。
面倒な計算が多々出てきますが、これらを端折ってしまうと、誤解を生んでしまうわけで。
それこそ、そういう環境の物質動体を無視して、ただ危険だ!と声を上げるだけでは、自然派と同じ過激派になってしまいます。
コラムにも「食卓に上がる農薬(ほとんどすべてが自然由来)」なんてのもあり。
無農薬至上主義の人にも是非、読んで欲しい1冊になります。
トレードオフもバッチリ入ってきますよ。
どこで妥協すべきか?
妥協を許さないのが無農薬や自然派なのでしょうけど。
最終章では、頑張れば頑張るほど首を絞める研究という自虐ネタも。
要は、ワクチンなどの予防医学と似てる側面があるとのこと。
公衆衛生が行き渡ると病気になる人、死ぬ人が減って、恩恵を受けるのが当たり前になり、恩恵を受けていると感じにくい。
その結果、ワクチンの方が有害なんじゃいか?なんてトンデモに発展してしまうヤバい人たちが出てくるわけで。
それに近いものがあるかもといった話です。
それと、著者はこの本は学術本ではない!と書いてて。
あ〜まあ確かに学術雑誌でもないし、教科書でもない。
研究エッセイに近いので。
研究現場の人よりは、これから大学で何を専門にしようか迷い中の人や、ドロップアウトして学術雑誌を取り寄せる程でもない私みたいなの向けかも。