読書感想になります。

 

「生態学は環境問題を解決できるか?」

 

著者はシミュレーション研究が専門ですが数理モデル屋とは違いますね。生き物残り戦略な研究ではありません。

スパコンを使って、物質循環など動態を調べる研究といったところかな? 最近は人工知能を使った環境の未来予測など、スケールが違いますね。

 

一方で、研究内容の詳細を紹介する本ではありません。

どちらかというとエッセイ要素が強い内容でした。

 

びっくりしたのが著者の経歴。

家の事情で工業高校卒。しばらく働いて、海外の大学へ。そしてさらに海外の別の大学院へ進学。

研究者として就職したのが35歳・・・私は、その年齢だと持病で既に退職してるわ(汗)。

 

スタートが遅いですが、追い上げが凄い。てか大器晩成というよりは、もともと早熟で東大へ行ける頭があったけど、家庭の事情で諦めざるを得なかったといったところかと。

海外の大学ではトップクラスの成績な一方で、大学院は優秀な人たちばかりで井の中の蛙だったと痛感したとか。

 

大学院でのエピソードで面白かったのが、数学の宿題の話。

1問解くのに10時間悩んだとか。

とはいえ、コンピューターシミュレーションの分野へ進んだくらいだから、数学の才能もあったのだろうなあとは思います。それでも数学者とは違うので、そっち方面の人に比べたらレベルが低いとも。

うんまあ、ピンキリだよね。上を見てもキリがない。生態学者から数学者を見たら、とても勝てないと感じるのかな?

 

それと海外の大学と日本の大学の違いも。

向こうは、学部や研究室を決めるのが遅いのね。日本の、特に私大の場合は専門分野を早めに決めてしまうのが現状ですが、それこそ東大が海外の大学に近いのかな。理1・2・3とか。そんな感じ?

実際、著者も社会学系のスパコンを利用した研究にも興味があるようです。

 

あ、そうそう。

直感に関する話題もあったんですけど・・・

 

 

「educated guess」

要は研究者の直感と、素人の直感は全然違いますよ!ってことなんだよな。

 

〜〜に違いない!と素人が直感するのは、実はかなり危険だと思うのよ。

これ、直感というより、目の前のことが信じられなくなって、実は〜〜に違いない!と自分が信じたいことを自分自身に思い込ませてるだけじゃないか?とか。

 

一方で、「educated guess」の場合は、信じたいから言い訳的に思い込むんじゃなくて、自然に思い浮かぶって感じなのかな。

 

それと・・・誤った知識ばかり詰め込んだら、それに基づいた直感になってしまうので。

それはそれでおかしい方向に突き進んじゃうんと思うんだよな。

 

 

 

 

 

 

トレードオフの話題はここでは必須って感じでしたね〜。

何処で妥協するか?

 

そういう意味ではワクチンだって同じだと思うよ?

人口削減とか、そういうのはアホくさすぎて、直感にも引っかかりません。

国民総ノーワクチンに近い状態でデルタに直面したインド。あれは酷かった。葬儀崩壊ですよ。

それなら、多少のワクチン犠牲者は止むを得ない。それがトレードオフでは?と思うんですけど。オミクロンでは・・・デルタに比べると接種か未接種かの天秤が変わってきてるとは思いますよ。トレードオフも状況によって変わっていくものでしょう。

 

さらには「赤の女王」の話題も。

それは生態学に限ったことではなく商売の世界や社会の世界も然り。

10年前にNatureに載ったからといって、それだけが自慢では置いていかれる(著者の自虐ネタ)。

 

そういう意味では、私はもう研究の世界からは退いちゃったから、今はこういう本を読んで観察するだけの立場。

昔取った杵柄は、役にたつかどうかはまた別の話で、自慢なんぞに使ったら痛いだけですね。