2006年、夏の終わりだったと思う。僕は当時、巨人番記者を務め、投手担当をしていた。ジャイアンツ球場での2軍練習を終えた桑田真澄に、その夏の甲子園を熱狂の渦に巻き込んだ早実のエース・斎藤佑樹の印象を、訊ねたことがある。笑顔の18番から放たれた言葉は、衝撃だった。「初代“ハンカチ王子”はね、実は僕なんだよ・・・」。
どういうことですか、桑田さん。またまた、冗談でしょう。訝しげな表情の僕に、桑田は温和な表情で説明してくれた。
「今は廃刊になってしまったけど、その昔『甲子園の恋人たち』という雑誌があってね。どの号か忘れちゃったけどグラビアページの中に、甲子園のマウンドでハンドタオルを使って顔をぬぐう、僕の写真が載ってるはずだよ。だから“ハンカチ王子”って報道を聞いたときに、『オレもかつて、そうだったのになあ』って、思ったんだ」。
桑田と斎藤。甲子園が生んだ二人の天才右腕が、初対面を遂げた。(身長も同じくらい。キレのあるストレートと多彩な変化球を武器に、クレバーな投球術で打者を手玉に取る投球スタイルも似ている。早大進学か、プロ入りか。選んだ道こそ分かれたが、悩み抜いて決断を下した点も重なる。
さらに二人を結ぶ、不思議な数字がある。何と、甲子園の通算打率が同じなのだ。桑田が通算26試合で、104打数37安打、28打点、6本塁打(甲子園通算本塁打は清原和博に次ぐ歴代2位!)。斎藤が通算11試合で45打数16安打、6打点、2本塁打。ともに3割5分6厘のハイアベレージを誇っている。打って、投げて、そして勝つ。総合力に秀でたエースの姿が、数字から浮き彫りになっている。
取材記者の立場からすると、桑田も斎藤も、ここ一番でしびれるコメントを発してくれるところが一緒だ。語るべき「言葉」を持った投手と言えるだろう。今年、斎藤はハタチ。年齢を重ねるたびに人間として魅力を増した桑田のように、斎藤佑樹という若者が今後、どのような成長を遂げていくのか、好奇心旺盛に見守りたいものだ。
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