お袋が最後に買った「しょうゆ」 | ぎっちょ31  

ぎっちょ31  

蒼き時代より共に生きる

去年の里帰りの時だっけな

ちょうどオレが実家に戻ってる時に、ヨーコー商事の営業の方がウチに来られた

以前から、島の商店&個人宅の御用聞きに来島した時には、ウチにも御用聞きに来てくれていた

 

まあ、昔は、ご近所の分も買って分けたりしていたのでそれなりの数を買ったりしていたし

魚の煮物などほぼ毎日だったので、使う醤油の量もそれなりにあったが

 

近所はどんどん死んで居なくなり

今では、ウチと2~3軒だけになりゴーストタウンのようになってしまいました

 

オマケにウチの両親も年取ったので昔ほど料理も作らなくなりました

 

すでに「ちょっとボケてきたな」と感じていた頃の里帰りの時

たまたまヨーコーさんが御用聞きに

お袋と表に出て行き外のクルマの所でお袋と話してる声が聞こえていた

「しょうゆ」「みりん」「酢」「業務用の昆布の佃煮」など老人二人の家とは思えないほど購入

ヨーコーさんも「たくさんありがとうございます」という声が聞こえていた

 

まあ、痴呆症の兆しに、同じ物ばかり買って家に溜まりだす・・・ということがあると聞いていたが

まさしく、そのようになって来始めていた

「しょうゆ」だって「みりん」だって「酢」だって「こんぶの佃煮」だって家にはまだたくさんあるのに

また山のように買うんですな

そんで「しょうゆ」なんてそうそう腐らないにしても、期限切れのボトルが何本も溜まってる

 

そんな光景を見たので

 

帰省から戻ったあとで

ヨーコーさんに電話を入れて

「お袋がボケ始めたので今回を最後にウチの御用聞きは結構です。これまで永い間ありがとうございました。」と連絡をしておいた

 

やっぱ、あのタイミングでお断りの連絡が正解だった

その後、お袋はどんどん動けなくなり

頭もどんどん壊れて行った

 

その帰省の時に

とても親父とお袋じゃ使い切れんと「しょうゆ」などを数本、こちらへ持ち帰っていた

 

ようやく、そのうちの1本が無くなる

嫁や子が居たり、一人でも煮物とかもうちょと作るならもっと早く無くなるんだろうけど一升の醤油はなかなか無くならない

 

お袋が人生で最後に買った「しょうゆ」です

もう二度とお袋が「しょうゆ」を買うことは無い