久保田 利伸 Vol.5 『Neptune』 | My Wonderful Music Life

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久保田のレビューシリーズ、なんと一年ぶりの更新です。いつ終るのかというくらいのスローペースですが、宣言したからには全部書こうかと思っていますので、気長にお待ちください(笑)。

なんと22年前の7月リリースのこのアルバムについては、さすがに10年もブログやってるだけあって7年前にも一度書いてたりします。

それくらいに思いいれもあって、大好きなアルバムである事の証ですが、それだけにおいそれと軽々しく書けないな、とも思っていて、それが更新の遅れていた一つの理由でもあります。

アルバムのリリースで言えば、思いっきり久保田自身の色が色濃く出たいい意味で灰汁の強いアルバム『BONGA WANGA』、もうひとつの久保田ワールドを体現したパラレルワールドシリーズ第一弾の全編レゲエアルバム『KUBOJAH』の後にリリースされたアルバムで、先行シングルもなく、既発曲が一曲も収録されていない為、どのような作品になるのか当時もかなり楽しみしていたはず。

この後、ドラマ主題歌にもなった「夢 with you」をはさんで、アメリカのミュージックシーンへの挑戦がはじまるので、作品は日本のシーンを意識しながらも、当然ながらアメリカでも通用するよりR&Bやソウル、ヒップホップなどを強く意識したサウンドにシフトしていきました。そんなチャレンジの最中にも『LA LA LA LOVE THANG』というポップな作品もありますが、ポップとは言ってもどこか洗練された臭いがしていました。

『Neptune』はアメリカへのチャレンジ直前に作られたもので、野心が全く感じられないわけではありませんが、『BONGA WANGA』の発展系でもなければ、次作の『BUMPIN' VOYAGE』の前章的なところも感じられません。しいて言うなら、デビューからの2作品を年月を経て、発展させた作品のように思えるくらい、何かのジャンルに偏ったという印象はなく、とてもポップなアルバムに仕上がっています。

リリースが夏ということもあり、夏らしい熱いダンスチューン「真夜中の太陽」から幕を開けます。シングル曲が一曲も入ってないなんて、関係ない!と思えるくらいキャッチーでグルービーなスタートに胸躍ります。

かと思えば2曲目は少しゆったりめだけど哀愁を帯びたファンキーチューン「To The Limit」、Bossaのグルーブが心地よい「Adeus Meu Amor」で一旦クールダウンさせて・・・からのファンキーチューン「トランペットを吹きながら」への流れは秀逸!というかもう既に前半で鷲掴みされること必死。

近年のツアーで久々に披露された名曲「夏の子午線」、今の季節にぴったりなナンバーだし、その後にもミッシェル・ンデゲレチェオのベースが唸る「Let's Get A Groove」、スロージャムなラップナンバー「Our Masterpiece」へと続く後半戦ももちろん聴きどころ満載。個人的にはジェフ・ボバが手がけた珠玉のポップナンバー「Pump Up Your Gold」がこのアルバム後半のハイライト。このアルバムの中だからこそ光り輝けるポップスの佳曲だと思う。

そして、なんと言ってもラストの「誓い」。これほどに清清しく、けれんみの無いバラッドがあるだろうかというくらい、澄んだ青がしっくりくる楽曲。そして、この青くて澄み渡ったイメージのアルバムを締めくくるに相応しい曲だ。

ネクストステージへの前哨として、純度の高いポップな作品を作ることを意識したのか、ただその当時の彼の位相が偶々こういう路線だったのかはわからないけれど、そんな理屈はいらない名作だと思う。


Neptune/ソニー・ミュージックレコーズ

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