いつもの教室、先生が来るまでの朝の時間。
同級生達はテレビの話題、カレシの話題、今週末の3連休の話題で持ち切りだった。
わたしはただただ一人、チャイムが鳴るのを座って待っていた。
「みやびぃー、どうしたの、その顔」
顔を挙げると、そこには今井香織とその取り巻き達が立っていた。
香織はクラスの女子の中では、中心的な存在。
今風で、派手で、奇麗で、スタイルが良くて、そしていじわるで。
誰も逆らえやしない。
わたしの最大の悩みの種が香織だ。
「ビリ」
息つく間もなく、顔に貼っている絆創膏を香織に剥がされてしまった。
「なに、これー?キモワルッ!さわちゃったじゃんか!バカ!」
そういうと香織は絆創膏を、わたしの顔に投げ付けた。
そして去り際にイボを触った右指を私の制服で拭った。
周りからは笑い声が聞こえた。
うつむくことしか出来ない私。
「こんなイボさえできなけりゃ」
その日は髪の毛で必死にイボを隠し、帰路についた。

「みやび、お帰り早かったわね」
「うん、今週は掃除当番じゃないし早いの。」
「ワッフル買ってきたから食べる?」
母は私の一番の味方。親子と言うよりも友達のような感じ
3連休だって、一緒にショッピング行く予定だし。
だからこそ学校でいじめられているなんて言えやしない。
「大丈夫、友達とマック寄って来たから」
ウソ。またウソをついた。いつものウソ。友達なんていやしないのに。
母との会話は早々に私は2階の自分の部屋に上がった。

鏡台の前に座る。
いつもの淀んだ顔が鏡に映る。
そして右頬にはイボが。
一瞬、香織の顔が頭をよぎる。
イボを見た時のあのいじわるな顔。
絆創膏を投げつけたときに見せたあの鋭い顔。
香織が憎い。香織さえいなければ…。
気づけば涙が頬をつたっていた。
その涙がイボをも、つたった。
鏡に映る醜いイボ
「このイボさえなければ」
私はイボを思いっきり引っ張った。
「イタい…」
「え?」
微かに聞こえた「イタい」って声。しかも男性…。
もう一度イボを引っ張ってみる。
「イタい…」
また聞こえた。その声に思わず手を離す。
「だ、だれなの?」
息を殺した。部屋の中は静寂に包まれたが、なんの返答もなかった。
もう一度鏡に目をやり、イボを触ろうとした瞬間
「みやびちゃん」