がん治療方法の選択 (12) | 食道がんと闘います

食道がんと闘います

65歳食道がんサバイバー。
初発は2013年、ステージ3aリンパ節に転移。
手術で切除し抗がん剤治療。
しばらく無事でしたが2016年に肺転移、切除手術。
以来、異常なし。
定年退職後、大学で医療系を学び卒業、再度就職するも3か月で解雇、その後開業するも2年で廃業。

自分のがんの治療方法を自らの意思で選択し、しかしこれでよかったのだろうかと今になって迷っている人、選択を誤ったと後悔している人、そういう方は読まないで下さい。

今回は特にお願いします。

 

というわけで。

まあ、どういうわけかよくわかりませんが、ともかくがんを発症した際に、信用できる医師がこれこれという治療方法を勧めてきたら、それに従った方がいいような気がします。

なんとなれば、多くの医師はガイドラインとかなんとかそういうものに沿って治療を進めようとしてくるでしょうし、多くの症例、経験に裏打ちされた知見をもって治療に携わろうとしてくるであろうことが予想されるからです。

言うなれば最大公約数的に治療を進めていくことが、やはり無難であり間違いも少ないのではないかと思うわけです。

この医師は切りたがっているのではないかとか症例数を稼ぎたがっているのではないかとか、あまりそういうことは考えない方がいいような気がする。

問題はたまたま「当たった」医師が信用できないという場合。

その場合でも、例えばセカンドオピニオンとか、他の医療関係者の意見を求めてみるべきではないかと思います。

もちろん近藤誠さんのように始めから答えがわかっている医師ではなく、第三者的な立場で適切に評価してくれそうな相談先を選ぶことは当然に必要なことですが。

逆によろしくないと思うのは家族や親族、友人知人など素人が寄り集まっての話し合いで重要なことを根本から話し合うこと。

がんと診断され、治療方針を告げられ、ご家族とよく話し合って下さい、などと医師から言われたとします。

この場合の「ご家族とよく話し合って下さい」というのは医学の素人である家族が鳩首会議を開いて大切なことを決めて下さいという意味ではなく、おそらくは「ご家族とよく話し合って提示した治療方針について納得して下さい」ということなのだろうと思います。

ところが、以前にも書いたように、家族や親族、友人知人などの中に妙な成功体験を持っている人がいたりして、医師の提示した方針に真っ向から異論を唱えてきたりするとおかしなことになります。

ワシはこの方法でがんを克服したとか、どこの誰それがあの治療によりがんに打ち勝ったとか。

人の生きるか死ぬかという話に対して、医学のド素人が自分の体験談や伝聞を基に、饒舌に語りだす。

考えてみればおかしな話です。

スマホの設定がどうのこうの、wifiがつながらなくなったけどなぜだ、などというという話になるととたんに下を向いて貝のように押し黙るしかないおじさんが、なぜかがんの治療方法の話になり、突然饒舌になって持論を展開し始めるわけです。

繰り返しになりますが、医学のド素人が、です。

これってどうなんでしょうか、無責任極まりないような気がするのですが。

担当医にとってはとても迷惑な話で、患者のことを第一にせっかく丹念におぜん立てしてきたことをド素人にひっくり返されてしまうわけですね。

患者本人も「家族や親族でよく話し合った結果だ、安直に医師の勧めに従うことなく自分の意思で決めることができた」みたいな謎の自信を持ってしまう。

まさに近藤誠のセカンドオピニオンを聞いた後の川島なお美さん状態ですね。

「自分で考えて決めた」といってもその根拠はなんなんでしょう、目の前のお医者様よりもド素人の成功体験の方が信じられるというのでしょうか。

ことの次第を告げられた担当医はそれはそれはびっくりすることでしょう。

このやり方が一番、ベストな治療法だと思って勧め、その通りにことが進むと思っていた矢先に突然、なんだかよくわからない理由で別の治療方法を選択すると言い出すわけです。

怒りすら感じるかもしれません。

医師も自信を持って勧めてきた方針ですから、何とか思いとどまらせようとしてあれやこれやと説得にかかることでしょう。

既述の川島なお美さんのケースではこの段階で「やはり」と思い直して再度、方針を大転換されたのではないかと思うわけです。

担当医の勧めに反して「私はこのやり方に決めた」と言って頑なに譲らなければ担当医としてもどうすることもできません。

言い方は悪いですが「勝手にせい」と思われてもいたしかたないような気がします。

 

私の書いていることもやや極端に傾きそうな気もし始めましたので、「がん治療方法の選択」については今回で筆を置きたいと思います。

要するに結論はなんだということであれば、インフォームドコンセントとかなんとか言いますが、しょせんは患者には難しくてわからないことがほとんどです。

目の前の医師の言を真摯に聞いて正しく理解することが重要であり、疑問があれば質問する、どうしても納得できなければセカンドオピニオンを求める。

おそらくは患者にとってベストな治療方法を勧めてくれているはずだという前提に立ち、とりあえずはそれを是として考えてみる。

周りの意見を聞いてみるということもありかもしれませんが、素人の極論に押し流されない気持ちを持つことが必要だと思います。

いわゆる「パターナリズム」を悪とするような風潮があるのかもしれませんが、それとて程度問題だというのが私の考えです。