原作『むこう岸』(講談社 2018)は、第59回 日本児童文学者協会賞、第12回貧困ジャーナリズム大賞特別賞を受賞した児童文学作品。

 

 

 

 

 

 

法律やそれに基づく制度は、さまざまな立場の人々の生きやすさを助けるためのものだが、その制度の外から見ると、その景色を変える。
それはそのシステム自体の問題というよりは、それを利用する人々にかかっているように思える。

 

そう、利用も悪用も、使う側次第。

しかし、ちゃんと使えば、法律や制度は役に立つ。

 

 

人の心の傷はそれぞれ。

親の過剰な干渉や期待の重圧で自分を殺すことと、貧困に喘ぎヤングケアラーとして自分を抑圧することを比べることはできない。

 

いや、そもそも今の自分にがんじがらめだと俯瞰できない。

相手が目に入らない。

 

それはいじめなど、様々な軋轢と源は同じ。

 

いじめる側は自分が持て余した負の感情でいっぱいいっぱいになり、いじめられる側のことなど眼に入らないから、その深刻さに気づかない。

 

そのとき俯瞰の役割をするのが、法律や制度などによる客観的視点とその活用だ。

 

 

ドラマを見てそんなことを考えた。

心に響くドラマだった。

樹希(石田莉子さん)の凛とした瞳が印象的だった。

 

 

湯川先生(山下リオさん)が樹希(石田莉子さん)に語るシーンが沁みる。

 

「…情けなかろうが何だろうが助けが必要な時は必要なの。嘆いても責めても人は変われない。もし変われるとしたら誰かとかかわりを持ったときだけ。それができなくて泥沼にハマる人をいっぱい見てきた。…あなたはどうなりたい?」

 

 

その問いかけは、おそらく私たちみんなに投げかけられている。

 

 

河川敷に並んぶ、和真(西山蓮都さん)、樹希、アベル(サニー マックレンドンさん)たちが見つめるむこう岸に、大人たちは豊かな景色を用意できるだろうか。