2020年に亀梨和也さんを主演に迎え、『迷子の時間-語る室-2020』(作・演出/前川知大)として再演され、配信もあったらしいが、そのころは舞台熱が再燃しだしたころで、まだ「イキウメ」も知らなかったし、配信というシステムがあることも知らなかった( ̄▽ ̄;)

 

 

 

 

例の買い込んだDVDの2本目。

 

相変わらずの前川節に酔いしれた。

 

 

(今回はほぼネタバレです。ご注意を!)

 

 

時は2000年9月22日。

突然山道で消えた幼稚園送迎バスの運転手古橋清武とひとりの園児。

 

2005年。

そのとき消えた園児大輔の母美和子(中島朋子さん)と、現場で佇む若者ガルシア(大窪人衛さん)を連行しながら逃亡されてしまった警察官の兄譲(安井順平さん)と、バスの運転手の弟宗雄(盛隆二さん)が、確執を経て一緒に公園でバーベキューをしている。

 

そこにかつて母が頼った霊媒師佐久間(板垣雄亮さん)が現れる。

彼は新宿で路上占い師をしているとき、ガルシアに出会い、実は彼がそのときのバスの運転手清武の生まれたばかりの子どもで2022年からタイムスリップしてその失踪事件に巻き込まれ、そこから戸籍もなくホームレスをしているという話を聞く。

その話を信じ、折角この街に連れてきたのに途中のコンビニで車を盗まれ、若者にも拒まれ、一人公園に辿り着く。

 

しかもその車を盗んだのはそのときの園児の母親で偶々乗せたヒッチハイクの青年(浜田信也さん)が、あの日1972年にタイムスリップして失踪した我が子大輔が成長した姿。さらにそのときの運転手清武が戸籍のないまま彼を育て、先日亡くなったのだという。

 

家に帰った大輔と義理の妹真知子(木下あかりさん)は父の遺品の運転免許証を見つけ、その写真と交付年を不審に思い、戸籍のなかった父の正体を知ろうと街へ向かう。

 

しかし、そこで真知子は道を教えてもらったガルシアに父の免許証をいれた財布を掏られてしまう。

 

そして、その財布から父の免許証を見つけ驚くガルシア。

 

 

ほぼ同じ舞台で、頻繁に時間を行き来しながらも、込み入った話なのにストンと腑に落ちてしまうモノガタリは流石としか言いようがない。

 

私はタイムスリップ(トラベル、リープ、etc)関係にはかなり五月蠅いほうで、突っ込もうと思えば、引っかかる箇所がないわけじゃないが、今回はそんなことすら吹っ飛ばされた。

 

 

舞台終盤、佐久間が突如観客席に向かって語りかけるのだ。

「いいのよ、別に。だって私たちが知ってんだから、そのことを。充分だと思わない。そうでしょ。」

 

そう、「作り手と受け手とのコミュニケーションで作品は完成する」。

はっきりと「余白」を示す舞台に鳥肌が立った。

 

 

 

ラスト、「イチから始めるには悪くない日」に乾杯し、照明の落ちていく食事風景に「浄化」された気がしたのは私だけだろうか。