昨年、すぐに売り切れてしまいチケットが取れなかった舞台の配信m(__)m

「イキウメ」、2年ぶりの新作公演。

 

 

 

 

(ネタバレあります。ご注意を。)

 

 

冒頭からのツカみ方が半端ない。

 

終始、変わらぬ舞台装置。

多少の暗転、照明、音響の中、7人のキャストが、やや荒唐無稽に見える出だしから、奇妙な種を植え、水を遣り、生々しいリアリティを待たせ、怪しく蠢く物語へと育てていく。

観ている者は、もういくばくかの魂を「押し買い」されていた。

 

 

独特の存在感で君臨し続ける篠井英介さん、『プリズム』(2022年 NHK)、『自転しながら公転する』(2023年 日テレ)でも注目の藤原陸さんを、イキウメの浜田信也さん、安井順平さん、盛隆二さん、森下創さん、大窪人衛さんが迎える。

 

 

劇場に満ちていく芝居の気配に、演者と観客が混然一体となっていくのがわかる。

役者たちが、まるで憑依したかのようにそれぞれの存在として立ち現われ、時空を超えて紡がれるそれぞれの物語が交錯し合い、異様な姿を為していく様に息を吞む。

 

 

もちろんいろんな趣向の舞台があっていい。

ただ、ここまでその純度を磨き上げ、芝居そのものの醍醐味に迫った舞台は多くない。

 

正直、劇場で観ていたら大変だったかもしれないとすら思った。

 

 

私たちの誰もが多かれ少なかれ「打ち捨てられた教会の壁に嵌め殺されたピースの欠けた古いステンドグラスの下で眠る浮浪者みたいな気分」を舐めたことがあるだろう。

そう、生きるとはある意味、魂を削ることに等しいのかもしれない。

それぞれが、吹き込む隙間風に慄きながら必死に前を向こうとしている。

 

 

そう、この魂に関するおはなしは決して「比喩」ではない。

誰もが、あの森に迷い込むことができる。

 

 

圧巻の舞台だった。

 

「そういうものに僕はなりたい。」という最後の台詞がいつまでも木魂する。