大好きなお二人がタッグを組んだ映画である。
これは流石にDVDを借りて拝見した。
うーん。
正直困った。
良かったのだが、畏れ多いが少し不満も残った。
つい2回観てしまった。
(ネタバレあります。ご注意!)
それぞれの視点で描かれた三枚の絵を重ねて透かして見て、ようやく一枚の画が浮かび上がるような作りは見事。
多くの意味を包含する豊かな物語に、細部まで丁寧に切り取られたシーンを積み重ねて辿り着くラストに魅了される。
ふたりの少年(黒川想矢さん、柊木陽太さん)がとてもいい表情。
子どもを守ろうと必死な母親(安藤サクラさん)が迫真。
教師(永山瑛太さん)も懸命。
いろいろと吞み込んだ佇まいの校長先生(田中裕子さん)が味わい深い。
ただ、だからこそ、1枚目の絵のミス・リード的な切り口が少し引っかかってしまう。
普通に淡々と重ねても素敵な画ができそうなのに。
今の学校や子どもや親や大人や社会はこんなに類型的に描かなけれリアリティを持たないのかとため息が洩れる。
誰もがある意味、錠のかかった「フェンス」の中で暮らしている。
それは、それぞれが思いのままに進もうとする道を阻む障害であると同時に、弱く脆い我々を守る防護壁でもある。
私たちは毎日を必死に生きるなかで、錠どころか、その「フェンス」があることすらを忘れている。
それぞれの立ち位置に懸命になり、互いに傷つけ傷つけられていることにも鈍くなり、何も感じなくなってしまう。
さえぎるもののない道を駆け抜けることは見果てぬ夢だが、その先になにが待っているのかは誰も知らない。
なのに私たちは焦がれることを止められない。
自由こそがヒトを搦めとる。
「怪物」だーれだ?
ま、とは言っても、やはり私には、是枝裕和さん、坂元裕二さん、そして音楽の坂本龍一さんのお三方こそが間違いなく「怪物」( ̄▽ ̄;)