『君の膵臓を食べたい』(双葉社)で、涙腺のど真ん中を射抜かれてから、ほぼすべての作品を読んできた。
毎作品、センスもあり面白いのだが、物足りなさもが感じている。
(ネタバレあります。ご注意を!)
のっけから題名そのままの展開に、なりゆきを見守っていた。
すると結局、主人公の「ばけもの」の謎はそのままに、今の学校の闇に潜む「バケモノ」を射抜くカタチは悪くない。
ただ、私からみれば、コトバを変に区切るしゃべり方をする矢野さんが、いちばんマトモに見えてしまう(笑)し、共感できる。
でも、実はいちばんその心の中をほどいて、心配しなければならないのは笠井くんや元田くん、工藤さん、中川さんである。
そして、その周りにいるようにみえる緑川さんや井口さんのこれからの生き方であるように思える。
もちろん「イジメ」は犯罪だし、被害者も加害者もいなくなることが望ましい。
元「イジメ」られた者として切に願う。
しかし、私は思う。
「イジメ」られた者のこころに間違いなく傷は残るが、実は彼らのほとんどは問題ない。むしろ、キチンと向き合えたり、ちゃんと寄り添ってくれる人さえいれば、豊か
で素敵な感性を持った人になっていくほうが多いように思う。
問題なのは、「イジメ」た側のこころの貧しさである。
「イジメ」を見過し、それに慣れてしまう周囲の多くの普通の生徒の醜さである。
彼らのほとんどは無自覚で罪の意識もなく濁った感性を放ったらかしのまま大人になっていく。
そんな、「青くて痛くて脆い」魂が知りたかった。