第149回芥川賞受賞作の表題作を含む3編の短編集。
藤野可織さんの作品は初読。
独特の情緒と雰囲気を纏った文体が妖しく光る。
普通のオトコである私には、到底うかがいしることのできない眼の奥を覗き込んだような居心地の悪さが、最後まで抜けなかった。
3歳の「わたし」の透き通った語りに肝が冷える。
どこまで行ってもオトコである父だけが取り残されたピエロのようで、その塗り込められた瞳が私を眺めている。
正直に言えばここまでどっぷり「文学」だと、私にはよくわからない。
凄いことは感じるのだが、それをうまく理解できないし、論じることも不能。笑。
この才能が、これからどんな物語を紡ぎ出すのか楽しみである。